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2021年03月06日04:56

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いまさら37年前の映画に驚いてしまいました。マイク・ニューウェル監督「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」(1985)。

マイク・ニューウェルという監督さんは、今だと「ハリ・ポタ」を監督した人として知られているかもしれませんが、僕にはジョニー・デップが潜入捜査官を演じた「フェイク」があり、その後に「狂っちゃいないぜ」と「ハイ・フィデリティ」という映画がありますから、20世紀末のイギリス映画界の一翼を担った監督というイメージがあります。

そういえばBBCの映画100年記念番組(スティーブン・フリアース監督作品)に、マイケル・アプテッドと共に出演していたと思う。テレビ作品を含むと76作も監督しているんですね。4年前にこの監督さんの「サイレント・ボイス」という作品を初めて見て、1987年にこんな意欲作を作っていたのかと驚いたしだいです。

ということで、いまごろ「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」を初めて見ました。“隠れた良作”というふれ込みですが、主人公のルース・エリスはイギリスで最後に死刑執行された人だそうです。その30周年という意味で映画化したようです。それ自体も痛烈ですね。事実を元にした話で、脚本が「蜜の味」のシーラ・デラニーでした。

オールシネマ・オンラインではシェラ・デラニーと表記されていますが、「蜜の味」の原作本ではシーラ・デラニーでした。本名はSheilaですが、アイルランドの親戚のことを思って(アイルランド問題への意識でしょう)Shelagh Delaneyと表記させたらしい。だからシーラでいいと思います。

物語は1954年、第二次世界大戦から復興したと感じられた時代が背景。ダンスホールで歌ったりダンスのお相手をする女性ルース・エリス(ミランダ・リチャードソン)が主人公です。ルースは、貴族出身ですが自動車レースに夢中で勘当同然の扱いを受けている青年デビッド(ルパート・エヴェレット)がお気に入り。裕福な中年紳士のデズモンド(イアン・ホルム)のおかげでシングルマザーとして暮らしていますが、デズモンドにはカラダを許さない。そしてデビッドと逢い引きを重ねますが、デビッドの女癖の悪さに我慢しきれなくなる。

ミランダ・リチャードソンが若いですね。僕は「クライング・ゲーム」あたりからしか知りませんので、時折リーズ・ウィザースプーンそっくりに見えたりして驚きました。リーズちゃんは子供の頃から知っているということもあるし。とにかく死刑にされても致し方ないと納得させるほど過激な人物です。

イギリスでは死刑制度を廃止していますが、かつては窃盗罪でも死刑という考え方の国だったそうで、また王位継承や革命などが相次いでいた国ですから、死刑というものが一般的だったらしい。僕は基本的には死刑反対ですが(殺すと原状回復が不可能だから)、ときには“この犯人なら死刑でいい”と感じることもあります。しかし、システムとしての死刑はないほうが間違いが少ない。

しかしまぁなんですね。イアン・ホルム扮するデズモンドがここまで親身に世話してくれてるのに、その努力を簡単に反故にするような熱烈な愛情関係って、僕には想像できません。でも、この映画を見ている限りでは説得力抜群でした。そういう意味では、優れた映画だと思います。見ていて気持ちのいい映画ではありませんが。

つまりルースの生活がドツボにハマってしまいそうなのですが、デズモンドが救いの手を差し伸べホッとします。さらにルースの幼い息子が、デズモンドにもデビッドにも親しく接するあたりも安心感がにじみ出る。つまり悪女ではあるけれど普通の恋をする普通の人間なのだと、肌で分からせてくれるわけです。そういう意味で優れた作品だと思う。

とはいうものの、映画でこの悲劇は辛い。もっと心休まる作品が見たくなりました。ルパート・エベレットが若くて、今ならティモテ・チャラオ君みたいだから、かつてのファンの方、ぜひ御覧ください。って、かつてのファンならとっくにご存じですよね。失礼いたしました。
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