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2021年02月27日04:00

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やはり“北欧映画”独特の味わいは、爽やかな感慨をもたらしてくれる。ユホ・クオスマネン監督「オリ・マキの人生で最も幸せな日」(2016)

カウリスマキ兄弟ではない、そしてクラウス・ハロ監督でもないフィンランド人監督による映画です。ユホ・クオスマネン監督は、この作品の前に5作品監督作があるようですが(by Imdb)、最長の作品でも58分(日本では“中編”)ですから、今回の「オリ・マキの人生で最も幸せな日」が長編第一作と言えるようです。←米国アカデミー賞の規定なら話は別です。

物語は、1962年の世界フェザー級タイトルを狙った有名なフィンランドのボクサー、オリ・マキの実話です。←Imdbのプロットをグーグル翻訳で日本語にしました。最近のグーグル翻訳は、十分使えますね。原題の「Hymyilevä mies」も「笑顔の男」となります。実際はあんまり笑顔を見せないわけで、そのあたりカウリスマキ兄弟同様の“フィンランド的な”発想なのかも。

ということで、モノクロ映画です。その画面のタッチが、とりわけ冒頭の自転車相乗りの移動撮影シーンが、僕にはフランソワ・トリュフォー監督の「あこがれ」を思い出させてくれたのでした。タッチもしくはフィーリングが似ている。そのあたりに乗ってしまうと、あとは一直線でラストまで、でした。ボクシングに明るくない僕だから、どういう結末になるのか、手に汗握る展開です。

フィンランド史上初の、ボクシングの世界タイトルマッチ戦だそうで、フェザー級という日本人には親しみやすい体重(126ポンド=57.15キロ以下)なのもポイントでした。試合が近づいているのに60キロを越しているあたり、いらいらやきもきしてしまいます。

そのあたりで原題の「笑顔の男」や邦題の「オリ・マキの人生で最も幸せな日」が皮肉に迫ってくるわけで、そんな北欧映画独特の味わいを楽しめる人にはおすすめの作品だと思います。少なくとも冒頭のモノクロ画面に、舞台背景の1962年ごろのフランス映画のタッチを思い返せる人には“秀作”だと思う。←こういう発言を、方法だけを論じていると感じる方には、この映画はお勧めしません。

あるいは1970年前後の僕なら、小市民主義的幸福に埋没するナンセンスな映画と考えたかも。しかし現実に年金生活者となり、それ以上の経済活動は望めない現在の僕には、リアルそのものなのでした。えーやないの、幸せなら。ボクシングならずとも、世界王者なんか大した意味ないで。そして、そう言い切ったところで、やはり寂しさに彩られた自らの人生を、無批判的に肯定するわけにはいかないし、そんな生き方をしようともあもいません。

そんな人生観に、少しは共感するという方々には、なかなか得難い秀作だということです。ここで“方々”っていう言い方は、「0655」や「2355」で“平井さんの黒い丸”を追いかける方々への敬意と同じ意味です。皮肉ではありません、念のため。
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