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2021年02月16日04:21

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あらためて“ドキュメンタリーのあり方”というものを考えさせてくれる“秀作”でした。村上浩康監督「蟹の惑星」(2019)。

「東京干潟」と対になって作られたドキュメンタリーだそうです。2015年から足掛け4年かけて作ったとか。“オリンピックの前に”という命題があったようですが、そのオリンピックなんか延期になってもどうでもいい、この2本のドキュメンタリーは見事な“記録映画”です。

着想では、この干潟に関する1本の映画の予定だったそうですが、1本にまとめるのは無理があるので2本の作品にしたとか。たしかに「東京干潟」はシジミ獲りの老人の人生に迫る映画だし、この「蟹の惑星」は蟹を研究する老人と共に蟹の生態を見せてくれる映画ですから、2本に分けて正解だったと思う。

何よりも、この「蟹の惑星」が僕に、記録映画とか文化映画という言葉を思い出させてくれたことです。僕が学生だった時代には、ドキュメンタリーと呼ぶよりも、記録映画や文化映画と呼ぶことのほうが一般的でした。そして「蟹の惑星」はまさに記録映画だと思ったわけです。作り手のテーマが先行して、その着想とほぼイコールの結末へと進むだけのドキュメンタリーなんて、プロパガンダ映画と同質に思えます。

大阪のシネクラブ研究会で、アマチュアの自主制作映画を集めて見たとき、飼っていた亀が水槽から抜け出し、路地を歩いて下水伝いに大和川へと進む作品があり、単に撮っているだけなのにそれが最も印象的でした。あるいは小学生時代に校内上映があり、メインの作品の前についていた岩波映画の、氷点下の世界(これがタイトルだった気がしますが、不明)を描いた映像に魅せられた記憶があります。

つまり、映像の持つアクチュアルな感動というものが、映画の大きな要素だと僕は考えています。だからマイケル・ムーアがチャールトン・ヘストンを騙してインタビューした映像など、それなりのインパクトはあるけれど作品としては認めたくない。そんな作為よりも、長い時間バスに乗って2つの仕事を掛け持ちして働く女性の姿のほうが重みがある。

今回の「蟹の惑星」は、題名が意味ありげでちょっと戸惑いました(ピエール・ブールね)が、「東京干潟」を先に見ていたので連続して見ました。蟹の接写映像がとてもおもしろい。子供のころ田んぼ横の水路でザリガニと遊んでいた僕には、そのころの好奇心を彷彿とさせてくれます。蟹が脱皮するシーンは、「シャイニング」や「フルメタル・ジャケット」のステディ・カム映像と並べて評したいと思う。

監督の村上氏が映画オタクだというのはすてきですね。見ている映画の95%は劇映画だそうですが、「ジョーズ」あたりから映画にのめり込んだという経歴がいい。映画検定一級を首席で取った? そんなことで持ち上げるべき人じゃないよ。蟹を撮るために4Kカメラを借りてきたという、その根性を褒めましょう。←接写に限界があるからトリミングするためだそうですけどね。いずれ8Kで密着撮影し、トリミングでしか得られないスーパー映像を見せてください。

村上氏はまた、学生時代に大島渚の「少年」に感動したそうで、あの映画を映像から論じる人なら信じられます。それこそ、方法のみを論じることなく実践してよりよい映像を求めているわけで、大島渚の精神を見事に継承していると言えるかも。

写真3が市井のカニ研究者で主人公の田中さんです。15年も観察を続けているとのこと。こういう方々の研究が、もっと大きく取り上げられる世の中になってほしい。少なくとも“その研究でいくら儲かりますか?”という発想は、世の中から絶滅させたいと僕は考えています。もっと“威厳を持って”生きたい訳です。
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