目黒シネマで上映してくれたので駆けつけました(歩いてですが)。アニエス・ヴァルダの監督第1作で、初見です。ヴァルダはアラン・レネらと共に“ヌーベルバーグ一派の兄貴分”みたいに呼ばれ、ヴァルダやレネ、そしてクリス・マルケル、アンリ・コルピらを“セーヌ左岸派”と「映画評論」誌では称していたと思います。
この「ラ・ポワント・クールト」を、今回の劇場アナウンスでは1954年作品と呼んでいましたが、imdbによると公開日時は1955年のようです。ということはレネの短編ドキュメンタリー「世界のすべての記憶」よりも先ですね。そのドキュメンタリーに、ヴァルダは出演しているらしい。
それはともかく、カメラの移動する感覚が「世界のすべての記憶」と似通っていて興味深いのでした。後にヴァルダは、右から左への移動撮影に凝ることになりますが、このデビュー作ではまだ固執していません。編集のクレジットをきちんと見なかったのですが、アラン・レネとアンリ・コルピとクレジットされていたのかな?
とりあえず低予算だったようで、すべての製作費は機材とフィルム代に費やし、スタッフとキャストは全員無給だったらしい。フィリップ・ノワレしか知っている名前がないけど、「ニュー・シネマ・パラダイス」の映写技師とは雲泥の差(見かけの話ね)でした。
今回は現存するプリントからのデジタル化だそうで、いわゆる一コマずつデジタル修復したものではなく、若干ですがフィルムの揺れがあり、汚れが画面に現れるシーンもありました。日本での上映素材は2Kのように見受けられます。というか、日本の映画館では2K上映が一般的なのでしょう。
ということで4Kテレビで4K素材を見ることができれば、たいていの映画館よりも画質は良いと理論上は言えます。ホームシアターが劇場を凌ぐ時代になったわけで、ますます映画館は窮地に立ちますね。もっとも、映画館の暗闇にまさる上映環境は、自宅で再現するのはまず無理でしょうけど。
映画としての評価よりも、映画史における位置づけとして映画を感じ取る人なら必見です。このタッチが、後にシネマ・ベリテと呼ばれていくのですから。しかし1950年代なかばにこの手の作品を見たら、やはり津村秀夫さんみたいに反応するんでしょうね。僕はレネの「二十四時間の情事」を学生時代に見たので、こういう手法は懐かしいわけです。
“カメラ万年筆”論は、ドローン撮影のおかげで“カメラ人工衛星”論として考えるべき時代になったようです。←米軍兵器のプレデターに搭載したら、複数使用で24時間監視も可能ですからねぇ。
写真3は、舟で行われる槍術試合。「エル・シド」でチャールトン・ヘストンがやっていた試合を舟で行います。そんなドキュメンタルな映像と、写真家ならではのシャープな画面構成が楽しい作品でした。
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