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2020年09月20日01:26

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半世紀前の“ニューシネマ”は、今なお確実な感動を持ち続けていました。ピーター・フォンダ監督「さすらいのカウボーイ」(1971)。

少し前にもNHKのBSプレミアムで放送していましたが、そのときは見ず、今回の再放送を録画してあったので見直しました。ピーター・フォンダが製作し、デニス・ホッパーが監督した「イージー・ライダー」(1969)がアメリカン・ニューシネマという方向性を開拓したことから、ユニバーサルは若手監督に100万ドルの予算で映画を作るようにけしかけたそうです。その1本が、これ。

「イージー・ライダー」が当初40万ドルの予算でスタートし、結局70万ドルで出来上がったことから(興収は6000万ドルとのこと)、このユニバーサルの商法は“良心的”と言えるかも。日本の某社なら、“40万ドルで作って来い”と言いそうな気がします。実際、最近の自主制作監督を使用したオリジナル・ビデオ(ビデオテープでは東映の登録商標だったけど、DVDの時代に使うのはOKだよね)は、200万円だった相場が150万円になっているらしいし。

しみったれた会社商法の話なんかしたいわけではありません。この「さすらいのカウボーイ」が、圧倒的な映像力で今なお我々に迫って来るということを言いたいのです。物語は、二十歳で10歳年上の女性と結婚したハリー(ピーター・フォンダ)が、農場生活ではなく何か別の生き方を求めて旅に出ます。そして6年して故郷の近くに戻ってきて、旅を終えようとする、という展開です。

6年の旅を共にして支えてくれたアーチ(ウォーレン・オーツ)は、金鉱で湧くサンフランシスコに行くつもりだったのですが、同行するはずの若者ダン(ロバート・プラット)が町の連中に騙されて殺されたことから、その仇を討って盗られていた馬を取り戻します。そしてアーチも一緒に、ハリーの妻の農場に住みこみます。

妻のハンナ(ヴァーナ・ブルーム)は、幼い娘と二人暮らし。そしてやっとの思いでハリーのことを忘れたのに、戻ってこられて戸惑います。そこでハンナは、手伝いの雑用係(Hired Handが原題)として、二人を納屋に住まわせます。このあたりの、ひりひりする空気感がすごい。セリフは少なく、フォトジェニックな映像が積み重ねられ、ブルース・ラングホーンの音楽が雰囲気を高めます。

ブルース・ラングホーンはボブ・ディランの“ミスター・タンブリングマン”のモデルになったとか言う話ですから、そのあたりは詳しい人からいろいろ教えていただけると幸いです。僕はこの映画の音楽で、ドブロ・ギターの音色がとても気に入ってます。

撮影のヴィルモス・ジグモンドはラズロ・コバックスと、ソ連軍の侵攻時にハンガリーから亡命してきた人で、1950年代半ばには映画技術が世界の先端にあったハンガリーですから、実力でハリウッドの重鎮となっていきました。この映画では、移動やズームが頻繁に繰り返すのですが、それらが独特のリズムを生んでいます。

日本では公開当時、僕たちのような若い人間しか評価しなかったように思いますが、今見ればその価値は明らかでしょう。アメリカン・ニューシネマを代表する1本と言っても過言ではありません。写真3は、何回も多用されるストップモーションとオーバーラップが組み合わされた1場面。画像を検索すると何種類も出てくるので、やはりこの手法は注目されているのだと思いました。

どんな作品なのか味わえるように、オリジナル予告編のリンクを貼り付けておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=ojC03gHd_sA
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