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2020年07月31日03:39

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大したことない音楽映画を“最高の音響設備”で見せられても退屈なだけ。キリル・セレブレニコフ監督「LETO -レト-」(2018)。

ヒューマントラストシネマ渋谷では、“オデッサ”という新しい音響システムを導入したそうで、「ワイルド・ローズ」のときにもそのシステムでと思ったのですが、適当な時間帯にはなかったので通常音響で見ました。ということで今回の「LETO -レト-」が初体験となります。

オープニングにキノフィルムのマークが出る部分、別の映画でも何度か気づいていましたが、歪っぽい音で不愉快です。10秒程度だけど帯域の狭いキンキンした音でボリュームだけでかい。でも本編はどの映画でもそこまでひどくなかったので、我慢して見続けました。

日常会話の場面はとやかくいう音ではありません。ライブ場面だけそのシステムが稼働するらしい。最近の“音がいい”という反応は“音が大きい”と同義のように使われていて、僕なんかにするとアホちゃうかという印象なのです。さすがにこのシステムはそうではなかった。つまり音量が大きいだけではなく、“音が豊かに”身体全体に届く感じでした。

その感じはいいのですが、対象となったこの「LETO -レト-」という映画が面白くない。なによりも、1980年代前半のロックとして、ストーンズやツェッペリンから、ブロンディなどの固有名詞が飛び交うのに、それらのオリジナル曲が流れない。そしてサイモンとガーファンクルもどきのフォーク・デュオの舞台に“若者が熱狂する”って、あまりにも説得力がありませんぜ。

僕が知っているモット・ザ・フープルの“すべての若き野郎ども”は、もちいと面白かったと思うし、僕はアイランド時代の彼らのヘヴィなサウンドがもっと好きでした。せいぜい、フォーク・デュオの曲にエレキ・ギターが割って入る部分が少し良かっただけ。わざわざエイゼンシュテインの“オデッサの階段”を持ちだすほどのシロモノではないと思います。←僕は「戦艦ポチョムキン」を面白いと思っていないしね。

きっとあの当時、西欧のロック音楽のLPは、ソ連国内では入手が不可能に近かったと思うのです。それらの“お宝LP”をずらりと並べて所蔵している“スター”さんが、どのように存在したのかには何も触れない。テメエたちの勝手なカバー曲をMTVの最盛期にあこがれた美大生のごときプロモビデオ感覚で展開されても、好きにやってろとしか思いません。音楽はまず、音楽として有無を言わせぬ力を見せつけなければダメなのです。

こんな作品を“音楽映画”として特別な音響システムで見せるのなら、タランティーノの旧作、とくに「OUTIH」でも再上映してくれた方が設備が生きると思うな。「パルプフィクション」でもええけど。

なおこの映画の監督さんがロシア政府に逮捕されたとか、そんな“反体制”姿勢でこの映画を持ちあげることをしないように。箸にも棒にもかからない作品なのに、逮捕された途端に“悲劇の主人公”と祭り上げるのは、安っぽい政治意識でしかありません。ゆめゆめ惑わされないようにね。

なお“LETO”って、ロシア語で“夏”のことだそうです。僕はF1ドライバーにJJレートという人がいたので、フィンランドのロック青年の話かと思ってました。でも、当時のソ連でこんな音楽を、ここまで“自由に”やれていたっていうのは、僕には眉唾なんですけど。ま、すべては説得力のない映画の責任です。
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