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2020年07月29日05:41

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こういう映画を“良心作”だとか“ハリウッドのリベラル”だなどと思わないでほしい。エミリオ・エステベス監督・主演「パブリック 図書館の奇跡」(2018)。

コロナ禍のアメリカでは、各地で警察官の暴行に対して暴動が起きています。そんな中で、ホームレスたちが図書館に立てこもった話だからと、変な期待はしないでください。エミリオ・エステベス監督には「星の旅人たち」という、見かけ倒しのホームドラマがありましたが、あれと同程度の作品でした。

物語は真冬のオハイオ州シンシナティの図書館が舞台です。毎日午前の開館と同時に多くのホームレスたちが入り、洗面所で髭を剃ったりして身だしなみを整えると閉館までを過ごす。ところが氷点下の寒さが続き、シェルターが満員になったため図書館を追いだされると凍死するしかないということで、ある日ホームレスたちが居座ってしまうという展開です。

以前からホームレスに同情的だった図書館員のグッドソン(エミリオ・エステベス)が、市長選挙に出馬しようとしている検察官(クリスチャン・スレイター)や、警察の交渉人(アレック・ボールドウィン)を相手に立ちまわるのですが、マスコミなどが駆けつけ大騒ぎになる。その解決策が、“裸になって歌を歌う”というトンデモ策ですから、マジに考えてはいけません。

昔から、こういう事件を“心温まる物語”にしようとした映画はいろいろあります。しかし大抵が“ほどこし”を“善意の証し”だとする程度の内容でした。今回は、最初の方で現金を渡そうとしたグッドソンがホームレスにからかわれるので、当然それとは違う解決へと進むと思ったのですが、裸=無抵抗、歌を歌う=連帯という、100年ほど前にすでに死滅してしまった発想でしか締めくくれません。

ご丁寧にスタインベックの「怒りの葡萄」を引用して、その名セリフを知らないテレビの現場リポーター(ガブリエル・ユニオン)をコケにして見せますが、単なる引用だけしてもジョン・フォードの映画にすら及ばないことは言うまでもありません。そもそもテレビのリポーターをあの程度の浅はかさで描くなんて、ドランプ大統領の“フェイクニュース”説を擁護することにしかなりません。

しかし永遠の13歳である僕は知っています。すでに70年ほど前にビリー・ワイルダーが「地獄の英雄」でマスコミの本質に切り込んでいたことを。なのに今なおハリウッドでは、クリント・イーストウッドでさえオリビア・ワイルド扮する記者に涙させることでマスコミに免罪符を与えてしまうわけです。あるいは交渉人の刑事(アレック・ボールドウィン)は、事態解決より自分の息子の心配が先だし、検察官(クリスチャン・スレイター)に至っては市長選挙しかアタマにない。

おまけに市長選挙の対立候補だって、館内のホームレスたちに毛布などを届けようという“大衆運動”を展開する。現在の政治をここまで戯画化しては、問題の本質を隠ぺいするものだと非難するほかありません。それらを笑いでぶっ飛ばすこともなく、大まじめで描くとは何たることか。ハリウッドのリベラルって、もうちいとマシですよ。

せっかく久々に会えたジェナ・マローンも生かされていないし、グッドソンのアパートで管理人を引き受けているアンジェラ(テイラー・シリング)も、やすやすと現場リポーターを信用して墓穴を掘るわけで、僕には箸にも棒にもかからない愚作でした。博識なシーザー(パトリック・ヒューム)が図書館内にいなかったから“悲劇”となったのか?と勘繰ってしまいたくなるほど。

個人的な失態ですが、クリスチャン・スレイターの名前を最後のタイトルに出るまで思い出せず、ずっとイライラしてしまいました。予告編でマリサ・トメイがイザベル・ユペールと出てきたときにはすぐ分かったのに、やはり僕は男優に興味がないのかな。
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