mixiユーザー(id:6327611)

2020年07月26日03:48

535 view

融紅鸞(とおる・こうらん)のラジオ番組を思い出しながら見てました。エリック・ロメール監督「飛行士の妻」(1980)。

いやはや、今から40年前の映画なんですね。僕は学生時代に、“40年前の映画なんか、見たないわ!”と思っていました。実際、1920年代にはトーキー映画が現れていなかったから、僕はその後も一部例外を除いて無声映画を見ていません。しかし73歳になると、40年前でもすでに30代と、息子を持つ父親でした(苦笑)。

物語は、ってロメール作品に物語と言うのは変なのですが、僕の日記の定型だからそう書きます。物語は、郵便局で深夜アルバイトをしている二十歳の大学生フランソワ(フィリップ・マルロー)が主人公。年上の彼女アンヌ(マリー・リビエール)ができて、アンヌのアパートの排水管工事の手立てをアルバイト仲間に依頼しています。その工事が明日しか無理となって、アンヌに知らせようとアパートへ行く、という展開です。

なにしろ夜勤明けの朝7時前ですから、まだアンヌは眠っているだろうと、メモを入れておくだけにしようとするのですが、手持ちのペンがインク切れで書けず、近所へ買いに出てしまう。そこへ別の男クリスチャン(マチュー・カリエール)が訪ねてきて、何やらメモを書いて扉の下から滑り込ませる。するとその物音にアンヌが起きて、クリスチャンを呼びとめます。

こういう展開がロメール作品ではいい感じですね。当然、ペンを手に入れて戻って来たフランソワが、クリスチャンと職場へ向かうアンヌを見てしまう。クリスチャンとは別れたと言ってたのに嘘だったのか、とフランソワは思う。でも、このフランソワ君、いいヤツなんですね。友人が手配してくれた排水管工事のことを知らせなくちゃとアンヌの職場に電話する。アンヌは職場にまで電話して来て!と電話に出ない。

ここで僕は融紅鸞(覚えてますかぁ)の人生相談ラジオ番組を思い出したわけです。彼女は事情を聴いた後、たいていの場合“あんさん、別れなはれ”と言う。これが大受けでした。当事者は恋愛中だから、なんとか彼(もしくは彼女)に自分の方を向いてほしいのですが、融紅鸞さんは、あっさりと“別れなはれ”と言い放つのでした。

僕もフランソワ君にはそう言ってあげたい。親身になって排水管工事の手はずまで整えてくれてるのに、“仕事場に電話するな”はないやろ。そんな女やから、パイロットであるクリスチャンの都合良い浮気相手でしかなかったわけでっせ。年下の純情な学生をつかまえて、便利屋としてこき使うってどうよ。

アンヌから、クリスチャンは奥さんに赤ちゃんができるから別れたと告げられたのに、フランソワ君は、たまたま入ったカフェで女と逢っているクリスチャンを見かけてしまう。そこで授業もほっぽり出して尾行するのですが、たまたま同じバス停で降りた15歳の学生に、尾行してナンパしていると誤解されるという、これまたロメールならではの“玉突き展開”で、110分近い内容ですがすいすい見てしまいました。

先日見たフランソワ・オゾンの「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」は、2時間17分全編“無駄”というものがない優れたドラマでしたが、このロメールの作品は全編“無駄”ばかりという映画。その日常的で無駄な時間が、映画の真実としてフィルムに定着されると面白いわけです。←でも今回は、僕にとってアンヌがしょーもない女すぎて、フランソワ君に“あんさん、別れなはれ”という言葉を何度もつぶやいてしまったので、個人的には好みではない。←でも、目の前に現れたら握手くらいしたいな。

個人的には15歳の女学生リュシー(アンヌ・マリー・ムーリー)がいい感じでした。一緒になってクリスチャンと女を尾行するところがいい。そして“真相がわかったら手紙を頂戴”と住所を教え、“切手代が浮くから持ってきて郵便受けに入れてね”というあたり、いい感じでした。でもって、親切なフランソワ君は書いたハガキを持参するのですが、またまたあることを目撃してしまう、というオチです。

例によって(?)ファブリス・ルキーニさんが出てきます。アンヌの知り合いという役どころ。バスの中で延々としゃべられて迷惑したとアンヌが語ります。そりゃルキーニさんにつきまとわれて、あの調子でパスの中で話されたら、他人の顔を決め込むこともバスから降りることもできず大変だったでしょう。でも僕はアンヌに対して、“ざま見ろ、いい気味だ”と罵ってやる。

とまあ、しょーもない恋愛模様をいらいらしながら眺めさせられる110分でした。やはり20分近く長すぎる気がするな。ルキーニさんの場面と、リュシーが公園でポラロイドカメラを手にしたアジア系カップルと絡むシーン、抜いてもええんとちゃう? そんなこと言いだしたら、全編抜いてもええとなりますけどね。映画の真実=シネマ・ベリテは、無用の用と心得たり。

なお邦題は「飛行士の妻」ですが、内容から考えると「パイロットの女性関係」と思えます。そう替えても客は呼べないだろうな。
3 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年07月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031