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2020年07月12日04:34

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“Quality drives profitability(品質が収益性を高める)”。「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2017)で英語のお勉強。

引用したセリフは、ワシントン・ポスト紙の社主に扮したメリル・ストリープや記者たちが劇中で繰り返します。新聞は社会の公器だと学んだ僕には、政府が国民を裏切るという事実を知ったマスコミは、当然それを報道する義務があると考えています。しかし現在の日本では、内閣に対して忖度した報道しか存在しない。アメリカでも韓国でも、そしてロシア、ブラジル、フィリピン、もちろん中国も含めて、世界のほとんどの国で報道機関は“品質”より“収益”を求めていると感じます。

本来この“品質が収益性を高める”という言葉は、製造業について語られてきたように思います。しかし企業全般についても正しい言葉だと思われる。とくに映画を作る会社に対しては、それを忘れるなと声を大にして言いたい。アメリカ映画界では1950年代に、ウィリアム・ワイラーやビリー・ワイルダーたちがそれを体現していました。

英語の勉強のために見直しているのですが、1時間56分のうち1時間7分までセリフをメモすることなく見てしまいました。それほど面白い映画だということです。で、最初にメモしたのは、ブラドレー(トム・ハンクス)の自宅にポスト紙の法律担当ロジャー・クラーク(ジェシー・プレモンス)がやって来る場面でした。思いのほか若い担当者を見て、ブラドレーは“大学卒業はいつだ?”と尋ねます。

突然の質問に戸惑っているロジャーに対し、“君の前任者は今、国務長官だぞ”とぶちかまします。そして“Rhetorical question”だから答えなくていいと言う。この単語が僕には分かりませんでした。そんなときDVDは便利です。字幕を英語に切り替えるとスペルが分かりました。そして“レトリックだ”と言ってるのだと理解できたしだい。

昨年末に見なおしたとき、この映画はトム・ハンクスが演じる編集主幹が主役ではなく、女社主のメリル・ストリープが主役で、このドラマにかかわる女姓陣すべてが主役だと感じたのでした。それを知って見直すと、今度は少し鼻につく(笑)。でも、社主ケイの立場を夫ブラドレーに説明する妻(サラ・ポールセン)の存在、あるいは最高裁の入り口で傍聴者たちに戸惑うケイを、通用口に導く“敵”側の女性など、細かい人物描写が楽しいのでした。

ブラドレーの幼い娘(オースティン・ジョンソン)が“レモネード売り”をしている部分は、アップル2で何度も遊んだゲーム“レモネード売り”を思い出させてくれました。1杯25セントと言う娘に対しブラドレーが“50セントだ”と値上げさせる。そして“Inflation(インフレだ)”と付け加えます。ラストで山と積まれた1ドル紙幣が楽しい。

毎回感じるのが、この映画のテンポの良さです。見ていて心地よい。スピルバーグは僕と同世代ですから、ワイラー、ワイルダー、そしてヒッチコックという監督たちの上質な娯楽映画に夢中になった世代です。特典映像でメリル・ストリープ(インタビューされるときの堂々たる貫録!)が、“脚本の読み合わせはほとんどなく、すぐに撮影に入って何テイクも撮るの”と語っていました。その俳優たちのノリが、このテンポを生んだのかなと思います。

そして僕は、こういう良質の娯楽が、映画と言うものの収益性を支えるのだと確信しています。書き忘れてましたが、この脚本を書いたリズ・ハンナは「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」の脚本も担当していますね。めざせ、追い越せ、アーロン・ソーキン!
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