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2020年07月07日10:37

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この監督さんは“はずし方”に見どころがある。ブレイク・エドワーズ監督「地上最大の脱出作戦」(1966)。

そもそもこの「地上最大の脱出作戦」を見た人がどのくらいいるのだろう?という問題だと思います。僕は1967年10月2日に大阪の梅田地下劇場で見ています。←メモを調べました。ジョバンナ・ラリのことをJ・ラリと書いてあるけど、日付に間違いはないはず。←イタリア語では“J”はないと知る(正しくはG)のは、この四半世紀後でした。

公開当時から、邦題の“誇大広告”を笑っていました。マジに受け取った人間は僕の周囲にはいなかったと思う。なにせ原題が「What Did You Do in the War, Daddy?(パパ、戦争で何してたの?)」ですから、なんちゃって戦争映画に決まっています。

ブレイク・エドワーズ監督は、アカデミー賞授賞式(名誉賞です)で壇上に電動車いすで現れ、舞台下手袖から猛然と走り出すと、上手にしつらえてあった壁をぶちぬいてしまったのでした。そして舞う粉塵の中からよたよたと姿を現します。もちろんこれはスタントマンが壁をぶち抜き、壁の向こうで待機していたエドワーズが出てきただけですけど。

というような、ベタな笑いを堂々とやってのける監督さんです。かと思うと「酒とバラの日々」というアルコール依存症夫婦の悲劇を痛切に描いたり(小川徹氏はこの依存症を共産主義思想のことだと指摘しました)、「夕陽の挽歌」という切々たる西部への挽歌を歌い上げています。

昨日、某所でこの「地上最大の脱出作戦」を公開以来初めて(テレビの吹き替え版を除く)見た僕は、まったく内容を覚えていなかったことに気づき、あまりのベタな笑いや、なんともくどい展開に頭に来て、“ブレイク・エドワーズはハリウッドの山田洋次かもしれない”と口走りましたが、それはそれなりに正当性があるとしても、「ビクター・ビクトリア」なんてコメディーは山田洋次には絶対作れないと思うので、そのあたりを弁解したいと思います。

とにかく鑑賞後の談話で言いましたが、「地上最大の脱出作戦」の見るべき部分は、ジーナ(ジョバンナ・ラリ)がベッドに下着姿で寝転んで脚を持ち上げる場面があるのですが、その豊満な太ももがベストショットだと思うのです。撮影監督は僕の大好きなフィリップ・ラズロップで、今回見たDVDがスコープサイズをビスタにトリミングした変形版だったことは問題だけど、撮影者の狙いが僕の望みと一致したのはうれしい(笑)。

そもそも“パパ、戦争で何してたの?”という言葉は、エドワーズの息子ジョフリーが発した言葉だそうで、まさかこの映画の内容を息子に“やっていた”と語ったとは思えませんが(エドワーズは沿岸警備隊の一員として参戦)、そういう発想でこういう映画を作る監督さんだということです。なおジョフリー君はジュリー・アンドリースとの子供ではなく、前妻パトリシアとの間の息子です。

考えてみたら、「ピンクの豹」って泥臭い喜劇だし、「パーティ」というコメディーあたりは、ベタな笑いをわざと“はずして”観客を不安に追い込んでいるわけで、「グレート・レース」であっても「素晴らしきヒコーキ野郎」のような“すっきりした笑い”はありません。でも「追跡」のようなタイトなスリラーも作れるわけで、その手腕を隠してまで、大衆受けをねらうというのはいかがなものかと僕は思うのでした。
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