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2020年05月30日05:20

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そうそう、こういう“豪華絢爛”な群像劇がハリウッドの“売り”でした。アンソニー・アスキス監督「予期せぬ出来事」(1963)。

濃霧のため空港が閉鎖され、その“有名人待合室”を舞台に展開する群像劇です。シネマスコープでカラー、テレビ画面にトリミングしてもOKなように(?)横長を強調した画面作りが豪華さを強調します。VIP(Very Important Person=最重要人物)という言葉を覚えたのもこの映画からでした。今では“セレブ”かな。

公開当時高校生だった僕は、飛行機のファーストクラスに乗るなんて夢のまた夢でしたから、雲の上の話(地上だけですけど)として見ていました。でも、エコノミーの客が交じっていたことに気づいてびっくり。マーガレット・ルザフォード(当時の表記です。今はラザフォード)扮する公爵夫人が、屋敷の維持費に事欠くありさまなのでエコノミーだったことに気づきませんでした。当時の僕には、飛行機に乗るという行為が、すべて金持ちの道楽に見えていたわけです。

しかし今の僕は知っています。航空会社の手配ミスで丸一日機内に閉じ込められた挙句、荷物を持って近所のホテルに泊められたことを。あのときも、ファーストクラスの客はさっさとホテルへ行ってたのでしょう。僕たちは数時間も列に並んで、ホテルに入ったのは深夜でした。

それはともかくこの映画は、航空会社が考える重要人物たちだけが集められる待合室が舞台です。初見のときはロンドンからアメリカへの1台の飛行機という認識でしたが、いくつかの便すべてが出発できないのでした。

てなわけで、女たらしで有名なプレイボーイ(ルイ・ジュールダン)との駆け落ちを決めた実業家夫人(エリザベス・テーラー)が、足止めされたため書置きを読んだ夫(リチャード・バートン)に追いかけられます。トラクター会社の若社長(ロッド・テイラー。細かい表記は気にしないで)は、会社乗っ取りの危機に遭い、秘書(マギー・スミス)と状況打開を図ります。映画監督(オーソン・ウェルズ)は、税金逃れのための国外脱出が無理となって、女優(エルサ・マルチネリ)と経理担当を伴っておおあわて、というありさま。

これに前記公爵夫人(マーガレット・ラザフォード)が加わって8人。僕の勝手な決めごとですが、10人知っている俳優が出ていたらオールスター・キャストなので、当時は惜しいところでした。でも今の僕は知っています。ロッド・テイラーが呼びだす“恋人”がリンダ・クリスチャン(当時も名前だけ知ってました)で、空港責任者がマイケル・ホーダーンでした。だからオールスター・キャストです。

ほかにちらりと絡むVIP役や接待係などに、リチャード・ワティス、ロナルド・フレーザー、ロバート・クート、マーティン・ミラー、ランス・パーシバルという連中が揃っていました。さながらイギリス俳優名鑑という雰囲気です。そして8人の主要人物それぞれの物語が絡み合って、それなりにめでたしめでたし(かわいそうなのはルイ・ジュールダンでござい)なのでした。

なんでもバートンとテーラーの逸話は、ヴィヴィアン・リーとオリビエの実話がヒントになったそうな。でも当時の映画ですから“この映画は実話を基にしている”などとヤボな宣伝はしません。じゃルイ・ジュールダンの役は誰やねん?とご心配の方は、ぜひimdbのトリビアをご覧ください。テレビのニュース番組の生放送中に自殺する役でオスカーをもらった方です。

公爵夫人役のマーガレット・ルザフォードがオスカーを受賞していますが、この映画は他のどの部門もノミネートされていないようです。音楽のミクロス・ローザ、撮影のジャック・ヒルドヤード、あるいは豪華な衣装デザインさえノミネートなし。僕はミクロス・ローザに一票。というのも、この音楽がテレビの吹き替えでよく耳にしていたのです。あのころはレコードの二次使用を臆面もなくやっていました。

とてもゴージャスなハリウッド映画(イギリスだけど)なのですが、今回の素材がずいぶん昔のテレシネ素材だったのが残念。ハイビジョンというには無理のあるアップコンバートで、コマ揺れも多く、きちんとしたデジテル・リマスターが望まれます。だからといって、デジタル・リマスターしたブルーレイを買うかって? 買いません(きっぱり)。

というような、典型的なハリウッド映画(イギリス映画だってば)なのでした。こういうコテコテのデコレーション・ケーキも、たまにはいいもんですよ。←バタークリームがたっぷりですねん。
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