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2020年03月29日05:28

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黒人女性の黒人女性による黒人女性たちの伝記物語。ミニ・シリーズ「セルフメイドウーマン 〜マダム・C.J.ウォーカーの場合〜」(2020)。

ミニ・シリーズと書いたのは、50分程度の4話に分かれているからですが、実はNetflixでの全世界配信です。4回に分かれた3時間11分の映画というのが正しいかも。でも1回ごとにクレジットが出るから、やはりミニ・シリーズですね。原題は「Self Made: Inspired by the Life of Madam C.J. Walker」で、原作者のアレリア・バンドルスは、マダム・C・J・ウォーカーの曾孫らしい。

なにしろ3月20日に配信されたばかりの、ほやほやの新作です。主演がオクタビア・スペンサーですから、一筋縄ではいかない作品だろうと飛びつきました。監督はディメイン・デイビスとケイシー・レモンズの2人。ケイシー・レモンズって「羊たちの沈黙」とか、一時期いろいろ出ていた女優さんですね。未見ですが「プレイヤー 死の祈り」という監督作がありました。

物語は20世紀初頭から始まります。黒人独特のくせ毛と、おそらく栄養不足による脱毛に悩んでいるサラ(オクタヴィア・スペンサー)が、訪問販売に来たアディー(カーメン・イジョゴ、写真2)からヘアクリームを塗ってもらい自信を取り戻します。そして自らそれの販売員となる。さらにクリームの品質を改良をしようとするのですが、アディーの関心は目先の利益だけで、聞く耳を持たない。そこでサラは、新興都市インディアナポリスへ行ってヘアクリームを販売し始める、という展開です。

奴隷解放後のアメリカでは黒人が多数北部などに移住しましたが、白人たちが社会を動かす事実は変わらず、黒人たちはジム・クロウ法などに縛られて貧困生活を強いられます。それでも黒人たち自身の生活に根差した消費市場もあったわけで、サラはそこそこの経済活動を続けます。僕は、あの時代の黒人たちの経済活動をここまで細かく描いた作品を初めて見たように思います。

つまり、サラは“自分の会社”を作り、“儲けたお金は社会に還元する”というロックフェラーの考え方を真似て黒人たちを雇い入れるわけです。しかし、黒人政治家たちは男性社会に女性は不要と考えている。黒人差別から“解放”されても、男女差別は健在なのでした。社会的地位もある裕福な黒人女性たちでさえ、サラの考えには賛成しない。

これは黒人奴隷解放を進めた白人社会でも同じで、女性たちの政界進出はずいぶん後の話になります。黒人で女性というサラのような人物は、ますます社会進出には遠い。そういう意味で、当初サラを立てている彼女の夫C・J・ウォーカー(ブレア・アンダーウッド)は、そこまでサラを愛していたということになります。

僕が最も興味深かったのは、サラは肌の色が真っ黒な黒人で、アディーのように白人とのハイブリッドの色白の黒人は、まだ白人社会から受け入れられやすかったという事実でした。それと前述の女性の社会的地位問題や、さらには裕福になったサラたちと従業員たちの格差問題が登場し、本気でこの物語をじっくり描いたら、それこそトランプ大統領からは“アカの映画”と非難されたでしょう。

そこまで描かないのが僕には致命的だけど、あたりさわりがない分、一般受けはすると思います。imdbでケイシー・レモンズのページを見たら、同じ原作をもとにした「On Her Own Ground」を撮影中とありました。でもキャストなど何も分かりません。さらに深く掘り下げたドラマなら、見たいと思います。

つまり、人種差別とか女性問題だけでなく、サラの娘(ティファニー・ハディッシュ、写真3)が男性よりも女性に魅かれるという部分があり、マイノリティーの一世紀がそのまま放り込まれた坩堝(るつぼ)としての巨大な歴史スペクタクルになりそうだから。←ということは、通り一遍だったこのドラマを、僕はたいして評価していないわけです。

だけど僕にとって、黒人女性の黒人女性による黒人女性の歴史を描いた作品は初めてなので、そう簡単には捨ておけないミニ・シリーズでした。
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