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2020年02月25日04:58

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カーク・ダグラス追悼の研究会、第一弾はイスラエル建国時の英雄譚でした。メルビル・シェイブルソン監督「巨大なる戦場」(1966)。

原題が「巨大な影を落とす(Cast a Giant Shadow)」なのですが、その“影”が具体的に何を意味するのか、それが僕には分かりませんでした。映画の中で、“イスラエル独立をアメリカが承認してくれたら大いに助かる”という話が出てくるから、巨大な影はアメリカだということなのかと思いましたが、そのアメリカが“なぜ各国に先駆けてイスラエルを国家として承認したか?”という命題には触れていません。

物語は、イスラエル国防軍の元となった軍事組織ハガナー(ヘブライ語で“防衛”という意味だそうです)を強化するためイスラエルに招かれたアメリカ陸軍大佐デビッド・マーカス(カーク・ダグラス)が主人公です。第二次大戦のノルマンディー上陸作戦では、空挺部隊に身を投じてドイツ軍を背後から苦しめたという人物。

第二次大戦の終結により、妻エマ(アンジー・ディキンスン)のもとに帰って来たマーカス大佐ですが、イスラエルの少佐(ジェームズ・ドナルド)に口説かれて、素人同然の兵力でしかないハガナーを国防軍にまで教育するという物語でした。いわゆる第一次中東戦争を描いています。

イスラエルが独立したのが1948年5月14日だそうですから、当時僕は1歳でした。そして僕たちの習った世界史は第二次大戦までいきませんでしたから、このあたりのいきさつは学校で習った記憶がありません。コロンブスのアメリカ発見は習ったけど、同時期にあった大きな動きであるレコンキスタについてはピンときませんでした。

日本公開が1966年の7月です。僕が大学に入った年ですが、4月末にはもう学生運動のオルグ(僕に対してはオルグとまではいかないか)などの影響で、アメリカ帝国主義の代弁者みたいな映画は見なくなっていました。そもそも高校生のころから、ジョン・ウェインの映画は敬遠し始めてましたし(「ハタリ!」は除く)。

ということで、子供のころ大好きだったカーク・ダグラスが主演でも、ジョン・ウェインの名前が大きく出た戦争映画(製作者としてマイケル・ウェインの名前が大きく出ます)ですから、昨日が初見です。何回も有料BSやCSで放送されていたけど、2時間22分もあるから録画すらしていません。←2層のDVD−Rに収録するわけですから、単にディスク代をケチったという意味。

とはいえ、ハリウッドのユダヤ資本がこぞって協力した、みたいな雰囲気でした(配給がユナイテッド・アーティスツだし)。カーク・ダグラスはベラルーシからの移民の息子だから主役のマーカス大佐には適任かも。戦場から戻って一息すら入れずに中東へ向かう訳で、アンジー・ディキンソンという妖艶な妻がいながら戦地へと戻る。そのあたりがカーク・ダグラスらしい役だと思います。

戦地には、フランスからのシオニストの妻であるマグダ(センタ・バーガー、当時25歳)が世話役として登場し、ほかにもイスラエル美人たちが華を添えますが、残念ながら「ベン・ハー」のハイヤ・ハラリートほどのインパクトはもちえない。都合よくマグダの夫が戦死しますが、事実に基づいた話とクレジットが出ますから、ご都合主義ではないらしい(笑)。

で、ジョン・ウェインは米軍のランドルフ将軍として出演し、ハガナーの幹部としてユル・ブリンナー、アメリカから物資を運ぶ一匹狼のパイロットがフランク・シナトラというゲスト出演陣が豪華です。ハガナーの若き司令官を、「アメリカ アメリカ」のスタティス・ヒアレリスが演じていますが、オールシネマ・オンラインには記載なし。Stathis Giallelisを読めなかったのかなぁ(いつも調べさせてもらってるけど、ここではバカにしてます)。

僕は昔から、1本の映画に10人名前を知っている俳優が出ていたら、その映画は“オールスター・キャスト”だと決めています。これで8名そろいました。さらに、イスラエル入植者を射殺せんばかりの勢いのイギリス軍将校がジェレミー・ケンプだし、イスラエル駐在のイギリス大使がマイケル・ホーダーンらが顔を見せていました。

初めの方でマーカスと知りつつ入国を許可する係官がアラン・カスバートソンです(写真3、サインがカーク・ダグラスとジェームズ・ドナルドだけで、カスバートソンは無視されてますね)。そしてイスラエルの指導者ジオンがルーサー・アドラー。←関係ないけどガンダムのジオン軍を思い出す名前ですね。

また、突貫作業でエルサレムへの道路を作る工兵将校がゴードン・ジャクソンでした。「大脱走」の、“グッドラック”“サンキュー”の人ですね(笑)。「素晴らしきヒコーキ野郎」でも発明家のパイロットで、浴槽から発想した飛行機に乗ってパリへ行かず、スコットランドに飛んでいましたな。これで13人。

さらに今だから分かる、トポル(このあと「屋根の上のバイオリン弾き」で主役です)の映画デビュー作だそうで(スタティス・ヒアレリス登場シーン)、ブライナ・プロの関係者として参加していたマイケル・ダグラスも、セリフはありませんがジープの運転手として顔を見せていたらしい。センタ・バーガーが無線交信している横に座っていた金髪青年がそうでしょう。

映画としては、回想シーンのディゾルブがウザイし、あのころ嫌気がさしていたハリウッド調の展開が鼻につく作品でした。ほどなく「イージー・ライダー」など、アメリカン・ニューシネマに席巻されるのもやむなしというところ。しかし2時間22分もかけて、明確な政治情勢も描かず、個人崇拝へともっていくハリウッド映画には疲れます。

でも、ヒーローを演じても常にひねくれた部分を見せていたカーク・ダグラスですから、まさに適役という映画だったと思います。103歳まで生きていた“大スター”なので、大いに敬意を表したいと思いました。僕が映画を見始めてからずっと大スターだったわけです。遺作が「グロムバーグ家の人々」(2003)というのは、ちと寂しいけどね(僕はしっかり見ています)。
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