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2020年01月29日05:42

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この監督の前作を忘れていて、まともな映画を期待して失敗しました。レジス・ロワンサル監督「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」(2019)。

「タイピスト!」の監督で、1950年代の色使いを楽しんだ気がしていて、その新作ということで見ることにしました。題名から本格ミステリーだと思っていたら、ミステリー仕立てのドタバタ劇だったのでがっかり。途中寝てしまいました。←寝たからつまらないのではありません、つまらないから寝たのです。

物語はオールシネマ・オンラインからコピペします。“世界的ベストセラー3部作の完結編が世界同時出版されることになり、機密漏洩防止のため9ヵ国の翻訳家が1ヵ所に集められ、完全隔離で翻訳作業に当たる中、脅迫メールとともに原稿が流出する事件が発生し、社長自ら犯人探しに奔走する”というものです。

内容に触れるのはマナー違反ですからやめます。ただ、原稿が流出するのを防ぐために、9人の翻訳家を一か所に閉じ込めて翻訳させるという着想が、そもそも僕には“?”でした。そこで躓くんだったら見なきゃよかったということ。←株主招待券消化という大命題がありますねん。ひとつ置いた隣の席に間際に入って来たオバハンが、ポリ袋ガサガサいわせながら魔法瓶から飲み物をコップに開けて、ひっきりなしに呑みやがったのがすべての元凶や!

僕が何にひっかかったかというと、小説の原稿を10ページずつ翻訳させるという部分です。そんな翻訳でOKする出版社があるわけない、と思ってしまったから。そのときに「タイピスト!」のエセ50年代色彩に思いが至っていたら、マジに怒ることはなかったのに、あの映画を具体的に思いだすことなく、“なんとなくほんわかと楽しかった”としか思い出さなかったのがいかんのです。

僕は実際に翻訳はしませんが、映画の字幕をつけるときまず映画を全部見てから取り掛かります。全体像を大まかにつかんで、それからスポッティングする。そうじゃないと、セリフの取捨選択を間違えることがあるから。←あるプロの翻訳家にお願いしたとき、箱割りの指定がめちゃ細かく来て、当時はコンピューターじゃなかったから苦労して事細かに箱を割って返したら、大半のセリフをつないで戻ってきたことがあります。他人の努力をなんとも思わない翻訳家だなと、二度と仕事は依頼しませんでした(苦笑)。

余談はさておき、謎解きストーリーへと展開した場合、僕はそこに余計なもの(たとえばスリリングなアクションとか)を挟まれるとアタマに来ます。謎に向かって一直線に進む求心力が、こういう映画のキモなのだと思うから。でも「タイピスト!」が、そもそも1950年代の前半か後半かすら特定できない映画だったように、今回も“娯楽盛りだくさん”で映画は進みます。大半の観客はそれを楽しむかもしれませんが、僕はその間退屈なだけ。

なにしろ謎解き映画というものは、「名探偵登場」でトルーマン・カポーティが指摘したように、名探偵たちだけが自らの頭でつなぎ合わせる真相を鮮やかに感じさせるために、出来るだけ観客を欺くわけです。観客も欺かれようとして見に行くのですが、その手段が児戯に等しかったりあざといと、卓袱台をひっくり返します。今回の僕がそう。

なにしろ翻訳家が9人各国がら集められるのですが、その人柄が物語に生きてこない。背景もあまり見えない。なんのための9人やねん。せっかくのキュウリとレンコン、じゃなかったオルガ・キュリレンコやのに、色っぽさが足らんやないか。ほかのオバハン、何語かもわからんままやし(ポルトガルとスペイン、デンマークまで入っているのに、日本はないのんかい)。あるいはランベール・ウィルソン扮する出版社社長の品格のなさがいかん。

とりあえず冒頭ノルマンディーの本屋から始まるのが、「タイピスト!」と同じだということで、調べて見たら監督が、パリとノルマンディーの間あたりで生まれてました。そんなトリビア、犬も食わんがな。フランス映画が別損とかいう監督以来、安手の娯楽に走っているわけですが、ブルータスお前もか!という感じの作品でした。
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