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2020年01月25日03:12

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アメリカ映画はこんなドラマを“大まじめに”作ってしまうから恐ろしい。ジェイソン・ライトマン監督「タリーと私の秘密の時間」(2018)。

ジェイソン・ライトマン監督というと僕は、父親のアイバン・ライトマン監督が「ゴーストバスターズ」のヒットを飛ばしたころ、父親が自宅でアカデミー賞授賞式のテレビ中継を見ているのに対し、“パパは映画監督なのに、なぜあの会場にいないの?”と尋ねそうです。父親アイバンが“私の映画はアカデミー賞の対象になる映画じゃない”と言うと、ジェイソンは“それじゃ僕が大きくなったら監督になって、父さんを式に連れて行ってあげる”と言ったらしい。

ジェイソン・ライトマンは、「JUNO/ジュノ」(2007)と「マイレージ、マイライフ」(2009)で候補になりましたが、アイバンを同席させたかどうかは定かではありません。僕の考えでは「とらわれて夏」あたりで受賞してもよかったと思うけど。てなわけで、ジェイソン・ライトマン監督は、ときおり商売から離れたような作品を作るので要注意です。

今回は「JUNO/ジュノ」の脚本ディアブロ・コディと組んでいて、これ以前に「ヤング≒アダルト」もそうでした。そして「ヤング≒アダルト」で組んだシャーリーズ・セロンとも再び組んだことになります。セロンは「モンスター」でオスカーを取っていますが、今回はあのときと似た体形で登場。そんないろいろな“二番煎じ”が、この映画をアカデミー賞候補にすることを妨げたのではないかな。

物語は、幼い娘と息子を持つマーロ(シャーリーズ・セロン)が、さらに臨月を迎えているのですが、息子のジョナが神経過敏なため振り回されているところから始まります。裕福な兄クレイグ(マーク・デュプラス)の推薦でいい学校に入ったけれど、夫のドリュー(ロン・リビングストン)はそれに見合う稼ぎのために家庭をおろそかにするしかないのでした。

兄は“夜間専門のベビーシッターを雇えばいい”と言いますが、兄はベンツのGクラスを乗り回す暮らしだから言えるけど、マーロはヒュンダイだから無理なのです。かくしてマーロは、「モンスター」のときのセロンのような体型になり、家の中は汚れ放題となります。しかし夜間専門のベビーシッターとしてタリー(マッケンジー・デイヴィス)が来てからは事態は好転する、という展開。

このタリーという切れ者が登場してからの展開がなかなかのものでした。全体で95分と簡潔ですから、30分ずつ3パートに分かれている感じ。たいていの観客は2パート目の途中で次の展開に気づくでしょうが、だからといって退屈ではない。むしろスリリングな展開に乗せられます。

シャーリーズ・セロンが18キロも太って、だらしない格好を見せるあたりは好みではありませんが、そのあたりはマッケンジー・デイヴィスの若さに注目しました。とはいうものの、巧みなドラマ構成とか題材とか、なんか才気が前面に出て“露骨”に感じます。これもすべてイーストウッドの「リチャード・ジュエル」を見た後だからそう感じるのではないかな。

そういう意味では、作り手たちには分が悪い時期に見てしまいました。とはいえディアブロ・コディとジェイソン・ライトマンという作り手たちには注目し続けます。
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