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2020年01月24日05:39

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19世紀の気球による冒険劇だが、アクション映画にするには無理がある。トム・ハーパー監督「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり」(2019)。

19世紀の半ばというと、日本では明治維新があり、アメリカでは南北戦争があり、ロシアでは農奴改革があったというね世界の歴史の節目だと学校で習いました。その時代に、ろくな装備もなく気球で高度1万メートルに挑むという物語です。操縦するのは女性でアメリア(フェリシティー・ジョーンズ)で、同行するのが気象学者のジェームズ・グレイシャー(エディ・レッドメイン)でした。

気球が飛ぶ、という映像なら期待が膨らみます。なにしろ僕はアルベール・ラモリス監督の「素晴らしい風船旅行」(1960)という映画に夢中になったし、直後の「ウエスト・サイド物語」の冒頭シーンに打ちのめされました(ヘリコプター撮影だろうけど)。今でも、テレビを見ていてドローン撮影によりカメラが空中に舞い上がっていく映像には心がときめきます。「ポツンと一軒家」というテレビ番組は、そのせいで僕を虜にしたと言っても過言ではない。

古くは「80日間世界一周」や、大量の気球が画面を席巻した「ボビー・ディアフィールド」も印象深い。おまけに主役がフェリシティー・ジョーンズです。「ローグ・ワン」でさえ(?)彼女の唇に魅了されました。ホーキング博士を演じた男との再コラボというのは、僕には無意味だけどね。しかしいつもの早合点をしてしまい、監督をトム・フーパーだと思いこんだのが大失敗でした。ハーパーやんか。ルウ・ハーパーならともかく、パチモンのハーパーは要りません。

何が面白くないかと言うと、冒頭に何も説明なくアメリアが気球から落ちるわけです。そんな場面が現実の映画はあり得ないから、ドタバタと危機感をおあっても“夢オチ”は明確です。そういう安手の手法で始まる映画に、ろくなものがなかったことを僕は経験上知っています。

さらにアメリアが、途中で馬車を止めて道端に座り込んで悩む。一方では出発寸前のグレイシャーたちが彼女の近くにやきもきしている。このしょーもない構成で、もう絶望的でした。なによりも、アメリアの19世紀的衣装で、せっかくの色気が封印されているのも無念だし。

挙句の果てにラスト、グレイシャーが学会で成功報告する場面で、“この偉業は軽々しく娯楽として語ってはいけない”とぬかす。“軽々しく娯楽にした”のはお前たち作り手じゃないの(落ちそうになったアメリアを引っ張り上げる場面とか)。観客(僕のことです)は、もっともっと気高いドラマを求めていたのだ。なのに幾多の困難をぺらぺらと通俗的なセリフで説明するだけだし、高空における飛翔感もほとんど楽しませてくれない。

てなわけで僕は、こんな映画を見るよりも、バラエティー番組でステディカムだと思ったカメラが窓をくぐりぬけて舞い上がっていく、ありがちな飛翔映像の方を買います。「ブラタモリ」のドローン撮影の高級感を見習え! わざわざ映画館に足を運んで、この程度の気球映像(当然ですが大半がセット撮影です)じゃお話しにならないわけです。

ということで、トム・コートネイが出演していたところで何の意味もありません。「ティーン・スピリット」のレベッカ・ホール以下ですわ。くれぐれも監督や俳優の似通った名前には気をつけてください。余談ですが、この気球の主アメリアの名前が、アメリア・エアハートにつながっているなら、少しは救いがあります(僕だけだけど)。
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