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2019年12月11日04:53

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殺人事件より色恋が優先する、不思議な味の恋愛コメディーでした。ミシェル・ドヴィル監督「女は夜の匂い」(1962)。

たしか大阪労映で上映したはずですが、僕が見逃していた作品です。なぜかプレスシートだけはたくさん持っています。←もう3部程度になってしまったけどね。ずっとVHSを持っていましたが未見のままでした。今回、マリー・ラフォレ追悼のためDVDをアマゾンで購入したしだい。

追悼という気持ちが高まり、定価であろうと気に掛けなかったのですが、大阪時代の映画友達が、競馬で当てて同様にポチっていたとか。借りればよかった。同時に「金色の眼の女」も買ってしまったあたり、一緒や一緒や。しかし彼は「国境は燃えている」(今月発売)の予約販売には手を出さなかったそうで、その分僕の“勝ち”でした。←はたして勝ちと言えるだろうか?

でもって見始めたのですが、主役は女たらしのレミー(ジャック・シャリエ)です。ある館で行われている舞踏会を、ベランダから覗く男女がいます。それがレミーと、その館に住む娘アガト(マリー・ラフォレ)。アガトは頭痛がすると会に出ていない。レミーは客を見つめていますが、やがてアガトを置いて立ち去ります。

でレミーは別の女リセット(ミレーヌ・ドモンジョ)と会い、一緒に車で出かけるのですが、舞踏会で男が死に、レミーが容疑者だとされます。証人のクロエ(ジュリエット・メニエル)が明らかに嘘を供述しているのに、警察はレミーを追うという展開。

警察に捕まったレミーを、アガトとリセットが協力して逃がすとか、逃走中のレミーが名前も知らない女性のアパートに押しかけ、一夜かくまってもらうとか、実に無理やりな展開が続きます。それをすべてハンサムな男が女をたらしこむという理屈で通してしまう映画です。

レミーは、アガトにはリセットのことを“まだ子供だ”と言うし、リセットにはアガトのことを“友人”と言う。そして押しかけたアパートではナタリーと言う名前すら知らない女(オディール・ヴェルソワ)とベッドインします。そんなことしてる暇ないやろ、という野暮な突っ込みはやめましょう。ドモンジョにしても、実に子供っぽくて、とてもアラサーには見えません(撮影時は二十歳半ばか?)。

でマリー・ラフォレのアガトが、不思議な立ち位置なんです。裕福な娘だからレミーに対して幾らでも金を貸すようです。それでいて“愛人”という雰囲気を押し出さない。ドモンジョのリセットは、明確に恋人という態度ですが、こちらもレミーがあちこち手を出してもどこ吹く風でした。この雰囲気が楽しめるかどうかですね、この映画に対する評価は。

そもそもクロエも、求婚者の男性が殺されているのに気持ちはレミーに傾いているわけで、だから犯人に仕立てて優位に立とうという魂胆です。でもレミーは、舞踏会にいた謎の金髪ドイツ男性ヨハン(ヘルムート・グリーム)が気がかりで追う。その理由は彼が連れている幼さが残るセシリア(ジル・ハワース)が目当て。かと思うとヨハンとの同性愛をほのめかしたりします。

ミステリーを期待した方なら、30分で投げ出して当然の作品ですが、なにしろコミカルなドモンジョが楽しい。そういえば「アイドルを探せ」でもこんな役だったかな。「ファントマ」シリーズもあったな。でも僕の知っているドモンジョは、この映画で新聞に掲載された“映りの悪い(リセット談)”バンプ風のイメージです。

とにかくモテモテ男のジャック・シャリエが頭にくる。手元に金属バットがあったら30回以上殴りつけていたことでしょう。こんなやつ、ヘルムート・グリームとどっかへ行ってしまえ! そしたらジル・ハワースは取り残されるから、こっちへいらっしゃいね。

マリー・ラフォレのアガトは、「金色の眼の女」を見たせいか、同性愛の雰囲気も感じます。あのころのフランス映画では、ゲイに関しても寛容だったみたい。←僕が幼くて気づかなかっただけですな。とりあえず物語の整合性などは無視して、女と男の色恋コメディーを楽しめばいい。そういう意味では、出色の娯楽映画でした。

残念なのは、4:3のビデオ素材からのDVD化で、巻マークがバカでかいから16ミリからのマスターのようです。ドモンジョを刑事が尾行する場面など、ロケ効果が楽しいから“最高画質”で見直したいなぁ。その前に、こんどはドモンジョの最盛期作品をぜんぶ見たくなりました。いや、60年代前半のフランス映画って、ええもんですわぁ。

写真2右がジュリエット・メニエル。ほかには「顔のない眼」しか知らんなぁ。今回の原題は「À cause, à cause d'une femme」で、“だって女だもん”みたいな感じに思えます。こういう軽妙さ、忘れてました。今でも“有効”ですよ。
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