原題は「Boy Erased」で、実話に基づいた話のようです。少年たちの依存症や同性愛などを“矯正する”ための施設が舞台。神父マーシャル・イーモンズ(ラッセル・クロウ)の息子ジャレッド(ルーカス・ヘッジス)がゲイであることを告白したところ、父親と聖職者たちが相談してジャレッドを施設に入れる、という展開です。母親を演じるのがニコール・キッドマン。
昨年アメリカで予告編を見て、同じ劇場で「ベン・イズ・バック」の予告編もあったので、なんかルーカス・ヘッジスばっかりやなと思いました。それにしてもジュリア・ロバーツとニコール・キッドマンの息子って、母親の“存在感”のせいで依存症になったんとちゃうか?と思ってしまいます。でもそんな冗談を、簡単に粉砕してしまうキツイ内容でした。
とはいえ21世紀になってもまだ、LGBTを矯正できると考えている人たちがいるというあたり、とても信じられません。しかし大統領が、“地球温暖化は嘘だ。なぜなら冬になったらやはり寒いじゃないか”という発言をしても、まともに反論する人がなく放置されている国だから当然かも。
ということで映画を見ている間中、我慢ならずにイライラし通しでした。ですから、あんまりお勧めできません。少なくとも、娯楽映画を作るという基本姿勢のない作品です。そもそもニコール・キッドマンが夫唱婦随の母親だなんて、信じられますか? いくら夫がグラディエーターだったからって、ニコール・キッドマンの頭脳と話術があれば簡単に粉砕されると思う(笑)。
でも、そういう理屈が通らないのが今のアメリカなのかも。いやアメリカだけではありませんね。日本だって、イランだって、トルコだって、イギリスもフランスもイタリアもドイツも、50歩100歩の状況です。すでに70年以上生きてきた僕はマシだけど、これから半世紀以上生きながらえる人たちは深刻でしょう。
そういう意味を考えるには好材料の映画ですが、とにかく見ていてキツイわけです。ということで、スルーしても誰も文句は言わないと思いますよ。だから、なかったことにしておきましょうか? でもこういう映画が、アメリカ本土のネイティブではない人たちによってしか作られないのだとしたら、そっちのほうが問題だと思います。オーストラリア、ニュージーランド、そしてカナダ出身の俳優スタッフたちだから映画化できた、なんていう裏話は聞きたくない。
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