mixiユーザー(id:6327611)

2019年11月21日03:02

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2つ3つ“ほう”と思えるインタビューがあり、それで満足しました。NHK「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」の「天才激突! 黒澤明VS勝新太郎」。

とりあえずマイミクさんたちのつぶやきから、“いつもの「アナザーストーリーズ」なんだな”と思いつつ見ました。そもそもの作りが、女優さんをMCにしたてバラエティーです。今まで見たいくつかの挿話に“食い足りなさ”を感じ、若い(僕より、ね)スタッフたちの勉強の程度が知れる内容です。

たとえば黒澤明の代表作を並べるとき、「羅生門」と「七人の侍」はいいとして、三本しか出さないのに「隠し砦の三悪人」を入れるという、黒澤明作品に対する考え方で、その程度の底の浅さだと分かりました。そりゃ「隠し砦の三悪人」は、黒澤プロの第一回作品だからひとつの転機だとは言える部分はある。

しかし黒澤明の代表作三本のうちに含めるというのは、いかにも「スター・ウォーズ」以降に黒澤作品を見た人たちの発想だと思う訳です。少なくとも黒澤明を語る番組を作るなら、主要スタッフ数名くらいは全作品を見てから会議してほしいものだと思いました。この底の浅さから、今回の企画はNHKのアーカイブに黒澤と勝の16ミリ映像が残っていたという、お宝発見による企画だったのでしょう。

それでも野上照代さんがこの件に関して語った部分は、僕が初めて知るところでした。92歳になられた彼女の発言は、これからも語り継がれるでしょう。勝新太郎について“黒澤さんの勉強不足よ”と言い放った部分に、この番組の価値を見ました。一方の勝新太郎については、コッポラが鋼板を気遣ってアメリカに来いと招いたとき、お土産として鎧兜一式を持って行ったという逸話も楽しかった。

その鎧兜が、映画の小道具そのものだったかどうかは定かではありませんが、コッポラが忘れさせようとした思い出を土産にして持ち込むという、勝新太郎の“おちゃめさ”(勝側の証人の言葉)が、僕には素晴らしいと思えたのです。さすが高級バーに自分専用のボトルとして水をキープし、酔ったように思わせて同席者からいろいろ聴きだしていた勝新太郎だな、と実に痛快なエピソードでした。

結局、何が原因で降板したのかはたいして明らかになりませんが、黒澤と勝という2人の大将がぶつかって、どちらも引かなかったということでしょう。その時点で“もし”を探してみても意味はありません。確かに残念な事件ですが、2人のどちらかが“折れる”ことがなかった事実が“歴史”なのであり、今さらifと語りあっても意味ありません。

それよりは両雄に近かった人々から、直接見聞きした両雄の“本質”を受け継ぐしかないし、それが正しい歴史の学び方だと思います。とりあえずさらに何か知りたい人は、黒澤明と勝新太郎が遺した全作品をご覧になるといい。僕はそこまでかかわるつもりはありませんから、上記2つの“新事実”を得ただけで満足します。だって、“たかがテレビ番組じゃないか”(by Alfred Hitcock)。人生が変わるほどの番組ではないのです。
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