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2019年11月15日04:00

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なんか物足りない印象だったのは、日本公開バージョンが20分短いからか? サーシャ・ガヴァシ監督「クリミナル・タウン」(2017)。

原題は「November Criminals」で、imdbには107分とあります。しかし僕が見たスターチャンネル版は86分ちょい。クロエ・グレース・モレッツがヒロインなので、日本では劇場公開もされましたが、アメリカでは配信が主で限定公開のみ。ヨーロッパでもDVDスルーのところが多いようです。

監督はサーシャ・ガヴァシ。この人には「ヒッチコック」という“下品な恋愛映画”があり、それによればパスが妥当ですが、カナダのヘビーメタル・バンド、アンヴィルを追ったドキュメンタリー「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」(2009)があるもので手を出しました。

物語は、ワシントンDCが舞台。高校生のアディソン(アンセル・エルゴート)が同級生で恋人のフィービー(クロエ・グレース・モレッツ)と、同級生の友人ケヴィンがバイトしているコーヒー店に入り、ケヴィンのおごりでコーヒーを手に外に出ます。入れ替わりにオートバイの男が店に入り、銃撃して去る、という展開です。

「キック・アス」で小学生だったクロエちゃんも、初体験をうんぬんする年齢になったかと感慨でした。しかし、こんな甘ちゃんな野郎にバージンを捧げるなよな。フィクションだから誰が相手でもいいだろうというあたり、ヒッチコックの恋心を下世話なゴシップに貶めたサーシャ・ガヴァシ監督らしい手口です。

でも一方で、アディソンの父親がデビッド・ストラザーンで、フィービーの母親がキャスリーン・キーナー。この二人が、少し至らない親をそれなりにいい雰囲気で見せるわけです。二人が通う学校の校長先生や、被害者の両親の描き方なんかも雰囲気がいい。問題はアディソンが、警察の“被害者がギャングと関係している”という捜査方針を、先入観だと決めつけ、自ら事件の真相を突き止めようとする部分でした。

つまり、平穏が当然の日本に住む僕なんか、ギャングとのつきあいなんかあるはずがないと思われる友人が射殺されたとしても、事情を調べる相手の雰囲気で“危険”を察知しろよ、と思ってしまうのです。だからフィービーの制止を振り切ってまで深入りするアディソンの心境が理解できない。←モー娘。の中沢姐さんなら、“あんた、いっぺん死に”で終わりでっせ。

そこで、日本版が20分短いという問題が浮上します。もう少し、アディソンの必死な思いが描かれていたのではないか? あるいは彼が真相究明に入れ込んださらなる理由が描かれていたのではないか?と。とはいえ、この86分版を見た後に、107分版を見る気は起きません。それはこの監督が「ヒッチコック」を作ったせいです。映画界における稀代の巨人ヒッチコックを、三流週刊誌のゴシップ程度に貶めた罪は重い。

でも「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」を未見の方がいらっしゃれば、そちらはぜひご覧ください。あのドキュメンタリーは実に面白い。いっそアディソンの悩みとは関係なく、イエール大学に進学するフィービーの青春をきめ細かに追ってくれれば、もっといい映画ができたのではないでしょうか。とても残念です。
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