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2019年10月19日05:57

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HBOのTVムービーには見るべきものが多いけど、10本に1本は駄作がある。ピッパ・ビアンコ監督「シェア〜私に何が起こったか〜」(2019)。

imdbの点数が5.5なのに、なぜ手を出したかと言うと、題名が“シェア”だから。つまり、SNSなどで“シェアする”という行為が流行しているから、その行為に対するひとつの問題提起かと思ったわけです。“サンダンス映画祭で評価された”という宣伝文句にもつられました。サンダンス映画祭にもいろんな賞があって、何かを受賞したから“見るべき”とは限らないようですわ。

物語は、ハイスクールのバスケット選手らしき女学生マンディ(リアンヌ・バレット)が、パーティーに参加して酔っぱらってしまい、気がつくと庭で寝込んでいた、というもの。体が汚れているのでシャワーを浴びたりしていると、友達から“これ、あんた?”というメールが来る。電話主がシェアした映像には、トイレで気を失っているマンディに男たちがのしかかっている姿が。という展開です。

何がダメかと言うと、まず主観映像しか見せずに話が進むから、見ていて何が起こったのかよく分からなくてイライラするわけです。マンディはなによりも真相が知りたいのですが、具体的には当事者たちが口をつぐむし、シェアされた映像の出元も分からない。何より警察に対し、マンディが覚えていないとしか言わない。この作劇方法がダメなんです。

もちろん、体感映画というものは存在します。「ベン・ハー」の戦車競走のシーンや、「アラビアのロレンス」を持ち出すまでもなく、リュミエール兄弟の“駅に入って来る列車”を見て観客は逃げ惑ったわけです。しかし、あやふやなケータイ映像をチラ見せするだけで、“体感”できるはずない。こういう、観客をミスリードする映画作りは、本当にやめてもらいたい。

たとえば「LAW&ORDER:性犯罪特捜班」あたりなら3分で済む内容が、この作品ではダラダラと1時間続くわけです。両親が警察に告発しようとしても、マンディは“何が起こったか分からない”という表情で“ボーつとしているだけ”。←いっぺん、チコちゃんに怒られて来い!

問題は、俳優さんたちを長回しでとらえたら“その状況”が映し出されると考えている、シロウト同然の作り手にあります。ヒッチコックが“観客は神の位置にいるべきだ”と見抜いた映画の本質を、いったい何だと考えているのか。

たとえば似た発想で成功した作品に、「コンプライアンス 服従の心理」(2012)があります。ファストフード・チェーン店に警察らしき電話がかかってきて、女性店員が窃盗を疑われるというものでした。あちらはしっかりとその場の空気を構築していたから見続けられた。さらに終盤の事件の解明が実に鮮やかでした。今回は、だらだらとつまらないだけで終わる。

いやぁ、HBO作品にはいろいろ喚起されるものが多かったのですが、やはり10本に1本はダメなものがありますね(5本かも)。箸にも棒にもかからないとは、この映画のことです。これに比べたら、TOKYO月イチ映画祭の“アマチュア”作品のほうが、どんだけ素晴らしいか。←と言ったからと、なめてかかったらあかんでぇ(とこれはアマチュア映画作家全般に言ってます)。

さすがにこの作品だけは、誰も“どんなにつまらんか、いっぺん見たろ”とは思わないでしょう。それほど、ダメダメのダメという作品でした。写真3の右が主役のリアンヌ・バレット、左が監督のピッパ・ビアンコです。顔がマシやから許されると思うなよ。
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