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2019年09月16日05:03

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アメリカン・ドリームの向こうにある偏見や差別の事実に驚きました。NHKドキュメンタリー「BS1スペシャル 戦争花嫁たちのアメリカ」(2019)。

8月17日に放送しました。110分枠ですが途中に10分間のBSニュースがあり、放送の正味時間は98分でした。第二次大戦後、日本に駐留したアメリカ人兵士と結婚し、アメリカに帰化した女性たちの物語です。ここに登場する女性たちは、PXで働いたことなどからアメリカ兵たちと知り合い、求婚されて渡米しています。その数は4万人にのぼるらしい。

それまで“鬼畜米英”と教え込まれ、進駐軍がやってくると聞いて山中に隠れた女性も少なからずいたわけですが、もちろん実際に米兵と接したらお互い人間同士であることに違いがありません。そんなことから恋が芽生え、兵士の帰国と共に渡米したわけです。そんな恋のなれ初めや、いったん渡米して何年かのちに再来日し結婚を申し込んだなど、戦後の混乱期に咲いた花々の物語が綴られます。

このドキュメンタリーは、ある戦争花嫁の娘が母親の人生を調べたことからスタートしたようです。渡米した彼女たちの子や孫たちの証言が、戦争花嫁たちの苦難の道を照らしだします。日本人にとって鬼畜米英なら、アメリカ人からはジャップなわけですから、当然と言えば当然だけれど、やはり戦後アメリカン・ドリームを刷り込まれた僕には強烈でした。

道を歩いていたら、品のよさそうなお婆さんから“ジャップ!”とののしられたとか、買い物に連れて出た幼い娘を、駐車場に止めた車から出ないように言い聞かせていた、などなど。アメリカに戦争前からいた日系人からでさえも、“パンパン”と同一視された話もあります。←“パンパン”という言葉については今さら説明しません。ぐぐってください。

僕は今、アメリカの歴史を南北戦争前後を中心として詳細に記した新書を読んでいます。そこには奴隷解放以後も人種偏見が根強く残った事実と並んで、東洋人に対する排斥運動の話もある。ようやく“人種や肌の色に関係なく平等”という法律ができた一方で、KKK団などが存在したわけです。アフリカ系アメリカ人については人権を認めても、アジア人は別だとする人々も多かった。

つまり“鬼畜米英”と同様に、人々に対するプロパガンダが浸透している訳です。“地球温暖化と言うけれど、冬はやはり寒いじゃないか”と大統領が公言してはばからない国がアメリカだということ。←もちろん日本や西欧各国も五十歩百歩です。

今では多くの戦争花嫁が高齢になっています。だから取材のカメラに対して、ほとんど気にかけないような雰囲気の方もいます。“今さら取材に来られても”かもしれないし、半世紀以上前の自分の姿をゆっくりと思いかえしているのかもしれない。そんな母親たちの心境を、子や孫がきちんと受け止めているあたりが感動的でした。

ただ、ここに紹介されることを承諾した“まっとうな戦争花嫁”ではない人々の実態には届いていません。一人の戦争花嫁が買い物途中で車に乗せてあげた日本人女性には(お互い身の上話をして泣きあったそうです)、どのような辛い事実があったのかまでは分からない。ここに紹介されるのは、幸せな家庭を築いた“成功者”の姿だけです。成功者ですら、この艱難辛苦ですから推して知るべし、なのでしょうが。

先日の“ブラジル移民”もそうですが、やはり半世紀を超える人生にはさまざまな“教訓”があります。部外者の我々は、それを噛みしめることで何かを学べばいいのでしょう。
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