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2019年07月19日04:57

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フィクションの面白さを満喫させてくれる愉快なホームドラマ。ショーン・アンダース監督「インスタント・ファミリー 〜本当の家族見つけました〜」(2018)。

この映画は、監督ショーン・アンダースの実体験を基にしてあるそうです。とはいえ、もちろん実話ではない。でも作り物のドラマですが、細部にリアルな実体験が感じられて、とても面白く、痛快ですらありました。作り物の映画というものは、こう見せなくちゃ、という見本ですね。

物語は、子作りに後れを取った夫婦ピート(マーク・ウォルバーグ)とエリー(ローズ・バーン)が主人公。エリーが、親から見離された子供たちの存在を知り、養子にしようと思いつきます。そして養子縁組のティーチインに参加するのですが、担当官カレン(オクタビア・スペンサー)から失敗例などをを突きつけられる、という展開。オクタビア・スペンサーの存在感がすごい(写真2)。

この“甘い善意”をくじくという姿勢が、全編を貫いています。その徹底した姿勢に僕は好感を持ちました。♪なぁお前、世の中そんな甘いもんやおもへんで~、という神様の声が聞こえてくる感じ。←と言っても、フオーククルセダーズの歌を知る人が既に少ないと思うけどね。

一方で“永遠の13歳”である僕は知っています。出発点は何であれ、生みの親ではなくて親となった皆さんが、幾多の困難を乗り越えて素晴らしい家庭を築いていることを。「ねほりんぱほりん」に登場した子供たちは、幸せだし育ての親に対して感謝はしているが、世間の目に対して不満を感じていました。ぼーっと生きている“一般人(我々のことです)”は、実情も知らずにテキトーな善人を演じてしまう。

養父母候補の顔ぶれに、いろいろ見た顔がいました。それぞれの後日譚もきちんと描くところがいい。たとえば、薬中毒だった娘が“また薬に手を出した”という家庭もある。しかしそれは、ジャンキーという意味ではなかったという“救い”が用意されています。あるいは、逃げ出した娘が隣家に入り込み、そこの住人から“悪いけど出て行って”と言われるのですが、その距離感がとてもいい。←ジョーン・キューザック最高です。

なによりも、15歳になり保護施設から出て行く寸前のリジーを演じるイザベラ・モナーがいい。見た顔だと思ったら「ボーダーライン2:ソルジャーズ・デイ」の小娘じゃありませんか。将来が楽しみですわ。10年前後でオスカー女優でしょう。祖母になるマーゴ・マーティンデールとジュリー・ハガティもいい(写真3)。つまり、養子縁組にありがちなつまらない雑音を一切排してドラマ化しているわけで、そこまで理想的にモデル化して“事実はフィクション以上”という真理を見せてくれるわけです。

最近はドキュメンタリーでさえ、複雑な事実関係を端折ってしまうという描き方が多くが多く、“事実”を知っている僕には不満が噴出しています。←“よど号ハイジャック事件”で身代わり人質となった方の最期を知るだけに、単なる英雄視では“事実の深い重み”は語りきれないのです。ハイジャック犯の生き残りたちの表情に、無念感が読みとれただけに(僕だけ?)残念でした。

幼児虐待致死という事件が数多く報道される今ですが、だからこそこういう作品で“事実の深さ”を知っておく必要がある、と僕は感じました。マーク猿くんも、TV「ダメージ」のダメお姉さんも、みんな悩んで大きくなった、ということです。
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