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2014年12月09日06:45

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フィンランドの奇才アキ・カウリスマキを研究する。「真夜中の虹」(1988)を観賞。

まず、アキ・カウリスマキ(写真3)のDVDセットを、ずいぶん前に大金出して買ったのに、いまごろブルーレイで発売しゃがって、ずるいぞメーカー。アマゾンで高値をつけているときに売り飛ばしておくんだったと残念に思っています。しかし、こうしてブルーレイで見なおすことができてうれしい。圧倒的な画質の差でした。

物語は、炭鉱の閉山で仕事をなくしたタイスト・カスリネン(トゥロ・パヤラ)が主人公。稼いだ金を全額銀行から引き出したら暴漢に襲われて奪われ、日雇いの仕事で生活するうちに、住宅ローンと息子との生活に追われている女イルメリ(スサンナ・ハーヴィスト)と出会いますが、自分の金を盗んだ男と出くわし、金を取り戻そうとしたら強盗傷害で逮捕され、刑務所に入れられます。そしてタイストは刑務所で同房となったミコネン(マッティ・ペロンパー)と脱獄を図り、メキシコ逃亡を目指すというという展開。

基本的にフィックスのカメラで、せいぜいパンしかしません。ほんの少しズームしたりすると逆に“なんでやねん”と思ってしまうほどのカメラワーク。そしてフェイド・インとフェイド・アウトを多用します。一緒に見た人から“似たようなスタイルの監督はいるか”と聞かれ、僕はいちおうジャン・ピエール・メルビルをあげておきましたが、さっき思い返すとロベール・ブレッソンという監督にも似ています。ブレッソンの場合、カメラが冷徹に登場人物を見つめるけど、アキ・カウリスマキは親身になって登場人物の側に立っている感じがします。だから僕は、マイミクさんが解説で“アキの映画に出てくる男はたいていダメ男”と言われて、そういえばそうだと初めて納得したぐらい、ダメ男たちに仲間意識を持っていたと気づいたわけです。

imdbによると、アキはマルセル・カルネにも傾倒しているらしい。僕にとってはひと世代か二世代前の映画ファンのアイコンであるマルセル・カルネについては、あんまり詳しくありません。しかし第二次大戦末期に「天井桟敷の人々」という大作を創り上げた意味は、漠然とですが敬意を持って受け止めています。レジスタンスの人々をエキストラに使って生活資金の足しにしたトリビアも含めて。

実は僕「真夜中の虹」をほとんど忘れていて、マッティ・ペロンパーが主役だとばかり思っていました。彼がケーキをかき回して鉄ノコを見つけたんだと思っていたしだい(写真2)。ラストにフィンランド語の“虹の彼方に”が流れるのがよかったな。途中までいろんな曲が流れ、クレイジー剣バンドのイメージにつながる部分を確認できたのですが、最後に「オズの魔法使」になるとは、という感じです。だから日本題名がこうなったのですね。

それとオルゴールから流れる曲が“インターナショナル”でした。学生時代によく歌いました。映画に使われた例としては、ロシア革命前後を描いたウォーレン・ベイテイの「レッズ」はまともに使っていますが、ゴダールが「ウィークエンド」で見せた“労働者の野合”というシニカルな使い方もよかった。それらを受けて、この映画があります。主人公がイルメリの息子から銃を突きつけられる場面で、「シャレード」を思い出したというあたりはどうでもいい。考えてみたら、このルガーを息子は“壊れている”と言い、主人公は安全装置がかかっていたと確認しているわけで、やはりキャデラックの屋根はもともと動いていた、ということなんでしょう。僕はディーラーが故障を直したんだと思ったけど。

というように、実に細部まできちんと作られた映画です。来週はジャン・ピエール・レオ主演のアキ・カウリスマキ作品「コントラクト・キラー」です。全世界の労働者よ、この映画を見て団結しよう!←意味は、見れば分かる。なお「真夜中の虹」の原題「ARIEL」は、アンデルセンの人魚姫の名前で、国外脱出する舟がその名前をつけているという意味でした。
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