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2019年12月13日01:29

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光秀の手紙が素っ気ない理由

○新発見の「光秀の原本手紙」を「国語的に読解」する限り、どうにも「素っ気ない感じ」の印象を受けてしまいます。光秀が、どんな事情および状況で「信長を討った」にしろ、宛名の人物「土橋平尉」が、せっかく「味方になります」と報せてきたのに、それを歓迎するような熱意が感じられないんです。たとえば、本文の末尾に「使者可申候」とありますが、これなども、本当だったら「詳しくは使者が口頭で述べるでしょうから、手紙に細かくは書きません」と書きそうなものを、あっさりと「使者が伝えるでしょう」ってだけ。「本気で味方してほしいと思ってるんだろうか」と疑問を感じてしまうくらいに、素っ気ない表現。それもそのはずで、どうやら土橋は「本気で光秀に味方する気がなかった」ようですね。本文中に「至泉河表御出勢」とあったのも、「光秀に協力するために、和歌山から出陣してきた」意味ではないようで、雑賀衆の内部抗争にすぎなかったみたい。「和泉国に自分の用事があって動いていた」だけでしかなかった模様。

○追伸にあった「急度御入洛義御馳走肝要候」の記述。これが「上様の御入京に土橋が協力する」の意味なのか、それとも「土橋が入京して上様に協力する」の意味なのか、どっちの意味にも読めなくはないとしても、どのみち土橋は「上様の御入京」を迎えるために出陣したのではなさそうだし、まして「自分が入京する」気もなさそうです。とはいえ、土橋たちの「敵」が鈴木孫一であって、『宇野主水日記』が記すように「孫一が岸和田城に逃げこんだ」のであれば、天正十年当時の岸和田城は「織田側の城」ですから、そこを「攻撃する」のなら、間接的に「光秀の味方をしている」とも言えるわけですよ。土橋は、決して「嘘を伝えてきた」わけではないんですよね。しかしながら光秀は、前文で「御入洛事、即御請申上候。被得其意、御馳走肝要候」と書いているんです。ここに出てくる定型句「その意を得られ」の意味が、ようやく明らかになってきたようですよ?

○「国語的読解」を繰り返しますが、「御入洛」の意味がどうであれ、その件を光秀は「即御請」で「ただちに承諾」と返事。「被得其意」の定型句で「ただちに承諾した私の意図を理解してください」と言ったうえで、「御馳走肝要」ですから「上様に協力するのが大事です」と言っているんです。つまり土橋は「泉河表に出勢した」ことが、実際には「自己都合で、自分たちの敵を攻めている」にしても、「織田側の者を攻めている以上、織田軍と敵対しているのであり、それすなわち上様に御馳走していることだ」と主張してきた模様。それを光秀は「上様が御入京なさることに協力する」もしくは「あなたがすぐにも入京する」ことこそが「肝要なのです。そこの意味を考えてください」と言っているのではないでしょうか。しかも追伸では「急度御入洛義御馳走肝要」です。ここには「必ずや」とか「絶対に」の強調する言葉「急度」が付いています。「必ず、やってください」の意味ですから、反対に言えば「土橋に、やる気がなさそう」ってことで。

○この「理解」によって、また一つ「論理的な読解」が進みますね?「国語的な読解」を最初にしたときは、こういった「歴史の知識に基づく状況」を無視しましたので、和歌山県から大阪府方面へ出陣した「土橋たちの行動」を、「京都へ向かおうとしている」と読めなくもなかったんです。けれど実際には、すぐに京都へ行くつもりが「ない」んです。光秀に手紙を送ってきたのも、「京都を制圧している光秀に、京都へ入る許可を求めてきた」意味ではないのですから、光秀が「ただちに承諾」と答えたのも「土橋の入京の件」の意味になりません。しかも「上意で土橋に入京を命じた」のなら、土橋は「上意に背いて、和泉国にとどまっている」ことになるじゃないですか。それを光秀が「上意に従って、今すぐに入京するのが重要です」と言ったのならば、和泉国の敵は無視しろってこと?

○岸和田城の城主は、織田信張とも蜂屋頼隆とも言われます。この二人が「共に城番を務めていた」という説もあります。ちなみに蜂屋は、このとき「織田信孝らと大坂城にいた」そうですから、岸和田城は織田信張が留守番だったのかもしれません。少なくとも「織田側の城」である以上、そこを攻める出陣ならば、光秀も認めるほうが当然で、だから「至泉河表御出勢、尤候」と書いて「もっともですね」という返事。そのうえ、土橋の受けた「上意」が「上様の御入京に協力すること」だったのなら、そして「上意」を与えた人物が「備後にいる義昭」であるならば、「今すぐに入京してくる」はずもないわけですからね。たとえ土橋の行動が「本能寺の変に便乗したもの」で、単に「雑賀衆の内部抗争をしているだけ」にしても、「今のところ」は織田軍と敵対するのが味方の表明でもあるわけです。ただし「上様の御入京に協力することは忘れないでね」と釘を差す光秀。

○どうやら「つじつまが合う」文意になってきたようですね。やっぱり「黒幕がいる」という先入観で読むよりも、素直に「国語的読解」をしたほうが、本来の文意に近かったようです。光秀の書いた「上意」の言葉が義昭を指すとは、いまだ確定はできないものの、「京都にいる朝廷側の人物ではない」のは確かなようですね。また、光秀の手紙が「どうにも素っ気ない」と思われたのも、土橋の行動が「便乗でしかない」ことを「責められない」代わりに、味方としても「期待はしてないよ」という意味だったようです。とりあえず「上様へ御馳走することも大事ですから、それを忘れないように」と、念押しをしておく程度の返事。
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