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2020年05月09日13:56

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白色矮星のハビタブル惑星を考える(2) 潮汐力を考える

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975623885&owner_id=62927979
の続きである。

 前回は代表的な白色矮星の質量と半径を与え、そこからハビタブル惑星の軌道を求めたところで終わった。
 そこで次なる論点である。この惑星は白色矮星の非常に近くを回るので、潮汐力の問題が当然出てくる。
 Soraeの記事にもその話題があり、白色矮星のすぐ近くでは潮汐力で惑星が破壊されるかもしれないという。要するにロシュ限界の白色矮星版だ。これも調べてみることにした。

 ロシュ半径の導出は意外と簡単である。まず、一般的な潮汐力の近似式
フォト

から出発する。
フォト

 惑星上の質量uを考える。惑星からuに働く引力と、恒星によってuに働く潮汐力が等しいとおくと、
フォト

となる。これを整理すると、
フォト

したがって、
フォト

となる。惑星がこの距離dより恒星に近づくと、uが恒星から受ける潮汐力は惑星の引力よりも強くなるので、惑星から引き剥がされる。するとその分だけ惑星の質量が小さくなるから潮汐力は引力よりさらに強くなり、惑星はポジティブフィードバック的に破壊されていく。したがってこの距離がロシュ半径になるわけである。(★9)

 では地球が白色矮星の近くにあるものとして(9)式を計算してみよう。
 前回は計算の叩き台としてシリウスBを使った。その質量は太陽とほぼ同じで半径は太陽の1/100。この数値をそのまま使えれば楽なのだが、斉尾英行『星の進化』P113に白色矮星の典型的質量は0.6太陽質量程度だとあるので、その値を採用することにした。シリウスBは平均的な白色矮星より重いことになるので、計算からできるだけ一般的な結果を引き出すには、典型的な白色矮星を使う方がふさわしいからだ。
 半径の方はかなり悩んだが、結局0.01太陽半径のままで考えると決めた。(これが正しいという保証はないが、今のところそれ以外に方法がない)

 ……と思ったのだが、今気がついた。『シリーズ現代の天文学7 恒星』P190に、白色矮星の半径は質量の-1/3乗に比例するという式が書いてある。
フォト

 実に単純な式である。これを使って、半径が詳しく求められているシリウスBと典型的白色矮星を比較してみよう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/シリウス
によると、シリウスBは0.978太陽質量、0.0084太陽半径となっている。
 この値を使って0.6太陽質量の典型的白色矮星の半径を求めてみると、
典型的白色矮星の質量はシリウスBの0.613倍、0.613^(-1/3)=1.177なので、半径は0.0084×1.177=0.00989≒0.01太陽半径、と出る……なるほど。
 これなら、典型的白色矮星の半径を太陽の0.01倍としてもそんなに問題はなさそうだ。少し安心した。

 安心したところでロシュ半径に戻る。そこで太陽質量を地球の約333000倍とすると、典型的白色矮星はその0.6倍だから地球の199800倍。だいたい20万倍という切りの良い数値になる。
するとM:m≒200000:1となるので、
d=1.26×(2×10^5)^(1/3)×6378≒4.7×10^5[km]
となる。約47万劼任△襦

 したがって前回求めたように、典型的白色矮星のハビタブル半径が150万劼任△譴弌▲蹈轡緘招造茲螻阿砲△襦C狼紊白色矮星の近くにあっても破壊される心配はないわけだ。だがもっと大きな惑星ならどうか?

 式(9)から、ロシュ半径は惑星の半径に比例する。つまり惑星が地球の3倍のサイズになればロシュ半径も3倍の141万劼砲覆襦これでは惑星がロシュ半径ぎりぎりに位置することになる。もう少し惑星を大きくすればハビタブルゾーンがロシュ半径の中に入ってしまう。
 なるほど「大きな惑星ほど潮汐力によって破壊されやすくなる」という記事の通りになる。納得いった。

 これが典型的白色矮星の場合だから、「白色矮星のハビタブル惑星は一般に、地球半径の3倍程度を超えない」だろうと考えられる。(★10)
 シリウスBのような典型から外れた白色矮星で計算したのでは、ここまで一般的な結論は導けなかっただろう。数値を直して正解だった。


「周白色矮星ハビタブル惑星」の環境を、もう少し考えてみよう。
 まず、白色矮星の周囲に地球を置いた場合、白色矮星はどう見えるだろうか。白色矮星の半径は太陽の1/100、そして地球と同じ環境になる公転軌道半径も、やはり1/100天文単位。ということは、この白色矮星は太陽と全く同じ大きさに見えることになる。
 ここまで表面温度が太陽と同じという条件で考えてきたのだから、この白色矮星は太陽と同じ色、同じ明るさ、同じ視直径、に見えるわけである。
 つまり「太陽と見分けがつかない」ことになる。おそらく白色矮星が引き起こす宇宙天気は主系列星の太陽とは大きく異なるかもしれないが、短い期間ではそんな違いも分からないのではないか。

 ではこの惑星上の環境は(太陽が動かない事を除けば)地球と大差がないのだろうか。
 もちろんそんなことはない。
 潮汐ロックされた地球型惑星の環境は、コズミックフロント等の一般向けメディアでも色々紹介されているので、ああいう番組に出てきた話題は除くことにする。では他に何かあるだろうか。
 既に計算したとおり、潮汐力が太陽より遙かに強い。(8)式から潮汐力は距離の3乗に逆比例するので、距離が1/100なら潮汐力は100万倍である。典型的な白色矮星が0.6太陽質量ならば、この惑星が受ける潮汐力は60万倍になるわけだ。おそらくこの惑星は潮汐力によって長球状に引き延ばされているかもしれない。
 しかしこの惑星は当然潮汐ロックされているはずであり、したがっていくら潮汐力が大きくても、惑星上に潮の満ち引きは生じない。つまり潮汐力は常に一定で、時間変化しないわけである。それなら、惑星上では潮汐力の存在自体に気づかないのではないかとも思われる。(★11)

 しかし本当にそういっていいのか気になる。実際の潮汐力はどのくらいの大きさになるのだろうか。月による潮汐力の大きさを使って見積もってみよう。
白色矮星の質量:Mwd
月の質量:mm
地球の質量:me
地球の半径:re
地球-月間距離:dm
惑星-白色矮星間距離:d
として(8)式を使うと、白色矮星の潮汐力/月の潮汐力は、
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となる。
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だから、
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となって、白色矮星による潮汐力は月による潮汐力の約27万倍。……やはり、かなり大きそうな感じがするが……。

 もう少し考えてみよう。惑星に働く潮汐力は確かに相当大きそうである。しかし人体の感じる潮汐力だったら、どうだろう。この両者は別々に考える必要がある。
 式(8)を見ると、潮汐力はrにも比例することがわかる。つまり潮汐力は、作用を受ける物体の大きさによって働く力が違ってくるわけだ。(★12)

 そこでまず、惑星に働く潮汐力から考えてみよう。潮汐力の絶対的な数値を求めるのはGを含んだ計算が必要なので面倒だ。重力に対する相対的な大きさを考える方が、計算に便利である。それだったら、ロシュ半径の計算の応用になる。
 そこで、惑星に働く潮汐力/惑星の重力 を求めると、
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となる。括弧の中に数値を入れると、
M/m=1.2×10^30[kg]/6×10^24[kg] =2.0×10^5
r/d=6.38×10^3[km]/1.5×10^6[km] =4.25×10^-3
なので、
2(2.0×10^5)(4.25×10^-3)^3=0.03倍
となった。
 白色矮星の潮汐力は、最大で惑星の重力の約1/30になる。最初の図のu地点に立つと、これだけの力で白色矮星に引っ張られることになる。ということは、この地点では重力が3%だけ小さくなるわけだ。
 これは結構ユニークな現象が起こる気がしてきた。惑星上で太陽の直下になる点――潮汐ロックされているのでこの点は動かない。そこで「昼極」と呼ぶことにしよう――では、他の地点より重力が弱くなる。とすれば昼極では強い上昇気流が生じ、周囲から大気が昼極に向かって流れ込んでいくはずだ。この場所にとどまって動かない台風ができるようなものだ。(実は「台風」にはならない。後述)
 もちろんホットジュピターでは、昼半球から夜半球に向かうグローバル循環が以前から考えられているので、これだけなら目新しい結果とはいえない。しかしこの惑星では、普通の気象現象のように熱対流だけでなく、重力の効果も加わったグローバル循環が生じる。普通に太陽熱だけを考えた場合とは結果が異なってくるはずだ。

 しかし実際のところ、3%重力が弱まったくらいで、通常の気象現象よりも目立って結果が変わるかどうかは、にわかには判断がつかない。地球の熱帯低気圧によって生じる上昇気流だって非常に強力である。わずかな重力の変化があるくらいでは大した違いはないかもしれないのだ。
 こういう定量的な検討をするには、とにかく知識が足りない。これも宿題になるのか……と少し気落ちしたのだが、しかし考えてみれば、地球上だって場所により重力はかなり違うわけである。潮汐力ではなく自転の遠心力によってだ。では、この現実に存在する力は、気象に影響しているのだろうか。そこを調べれば潮汐力の影響についても見当がつけられるかもしれない。

 遠心力の効果はよく知られているから、定量的な解説はネット上にいくらでも書かれている。そこで計算をさぼって検索して済ませると、極地と赤道では0.4%も重量に差が生じるそうだ。
https://www.aandd.co.jp/products/keiryo_kiki/tech_info_8.html
 つまり普通の人体で考えると、極と赤道で体重に200グラム程度の差があることになる。これは白色矮星の潮汐力による3%より一桁小さいが、かなりの大きさだ。ではこの重力の違いは地球の気象に影響しているのだろうか。
 そこで松田佳久『気象学入門』(東京大学出版会2014年)にあたってみたら、自転による遠心力と重力の大小の比較が書いてあった。

「地球の赤道での半径6378辧⊆転角速度7.292×10^-5/sを代入すると、F/m=0.03387m/s^2となる。地球の引力による重力加速度は約9.8m/s^2なので、遠心力の大きさはせいぜい引力の0.3%程度であり、無視できる。」(P133)

 遠心力が引力の0.3%程度というのはネットから引いてきた結果とほぼ同じだが(同じになるのが当然だが)、ここで注目すべきは、「無視できる」と書いてあることだ。つまり気象学の専門家は、気象現象に作用する力に比べて、引力の0.3%程度の力は無視できる程度の僅かな影響しかないと認識しているわけだ。
 それでは、一桁大きい3%の力ではどうだろうか。全く無視できるとまではいかなくても、やはり影響は小さいように思われる。しかも白色矮星の惑星では昼夜の温度差がはるかに大きく、グローバル循環は地球よりもずっと強力なわけである。そうすると、この惑星の気象への潮汐力の影響は、地球上で引力の3%の力が働いた場合よりは小さくなると考えるのが自然だろう。しかしもはやこれ以上判断する知識はない。今できるのは、0.3%と3%の中間をとって1%にするくらいだ(何も情報がないので二つの値の中間を取るということは、補間法のようなものか)。
 そんなわけで不本意ではあるが、とりあえず潮汐力の影響は重力の1%程度に相当するのではないかと見当をつけておくことにする。つまり、「無視できる程度」の3倍だ。(★14)

 惑星全体に働く潮汐力についてはそれまでとしよう。今度は人体に働く潮汐力、すなわち、この惑星上に人間がいた場合、体に感じるほどの潮汐力があるかを考えてみる。
 そこでまず、人体に働く月の潮汐力から考える。
 式(8)から潮汐力は、受ける物体の大きさに比例する。人体の代表的なサイズを約2mとすれば、これは地球の10^-7程度である。ということは月が人体に及ぼす潮汐力は、地球に及ぼす潮汐力の1000万分の1くらいしかないわけである。
 この潮汐力の大きさも地球重力との比例関係を使って求められるが、たまには直接計算してみよう。
月の質量:M=7.3×10^22[kg]
人体の質量:m〜100[]
月の距離:d=3.84×10^8[m]
人体の「半径」:r〜1[m]
として実際に計算してみると、
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で、ほぼ2×10^-11ニュートンになる。もう少し具体的に表現すると、0.2ミリグラムの物体に0. 1ミリメートル毎秒毎秒の加速度を生じさせる程度の力だ。
 さらにこの力をmで割って、地球の重力加速度と比較してみると、(★15)
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となり、50億分の1G程度。実験物理の現場でもなければ測定不能と言っていいだろう。こんな微弱な加速度を人体が感じることは、もちろん不可能に決まっている。(★16)

 これで月が人体に及ぼす潮汐力の具体的な強さが分かったので、これを基準に白色矮星の場合を見積もることができる。
 白色矮星が人体に及ぼす潮汐力加速度は約50億分の1Gの27万倍、すなわち約5×10^-5Gになる。人体を桁で考えて大体100圓箸垢譴弌2万分の1Gだから潮汐力によって5グラム程度の重量の違いが生じることになる。
 つまり人間が昼極に立った時、足の方向と頭の方向に向かって、それぞれ5グラム重の力で引っ張られる。下向きの力は、要するに足の甲に1円玉5枚を置いた重さと思えばよい。
 この惑星でも人体に直接作用する潮汐力はやはり微弱だが、月の場合と違って、これは十分測定可能な量といえる。
 人間より大きな生物、たとえば樹木を考えると、潮汐力が生命活動に影響してくる可能性もある。地球の樹木は最大で人体の100倍くらいの高さになるわけだから、この惑星では樹冠に向かって働く潮汐力は0.5キログラム重程度になる。この力が樹液の移動を助ける効果となり、そのため樹木が地球より高く生長するかもしれない。あるいは下部では下向きに力が働くから根が水分を吸い上げる効率が悪くなって、逆に植物は高く生長できないかもしれない。
 私より賢い人がいろいろ考えてみると面白いことが分かるのではないだろうか。

 これで惑星全体と、人間レベルの両方で潮汐力の見積もりができた。
 結論としては、潮汐力はグローバルな気象に大きく影響することはないように思われる。
 また人体程度のサイズでも影響は全くないと思われるが、その中間サイズの樹木くらいの生物にはある程度の影響があるかもしれない。
 地殻変動に対する影響はどうか。これは潮汐力が時間変化しないので、全く影響しないと考えていい。
 惑星の形にはおそらく影響がある。たぶんこの惑星は多かれ少なかれ長球状になるだろう。形状の定量的な見積もりは今のところできない。


 最後に、コリオリ力について少しだけ考えてみよう。
 この惑星は潮汐ロックされているが、だから自転しないと思ったら間違いだ。常に惑星の同じ面を恒星に向けているということは、惑星が一公転する間に一回自転するということである。つまり自転周期は公転周期と同じになる。したがってコリオリ力も発生する。
 だがここまで、惑星の公転周期は求めていなかった。いつものようにケプラーの第三法則の一般形
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から求める。公転軌道半径awd=0.01[AU]で白色矮星の質量Mwd=0.6Ms(太陽質量)だから、地球の公転周期pe=1年としたときの公転周期pwdは、
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となり、公転周期は約半日。
 したがって潮汐ロックされた惑星の自転周期も0.47日である。

 つまりこの惑星の自転速度は地球の2倍速い。コリオリ力は自転の角速度に比例するから、コリオリ効果も2倍強くなる。これは気象現象にも大きく影響するだろう。
 まず、さっき何の気なしに、昼極に「台風ができる」と書いてしまったが、コリオリ力の働き方を考えると、昼極の上昇気流は台風のように渦を巻くことはないと分かる。上昇気流が赤道上に生じるので、コリオリ効果が南北対称に働くからだ。つまり、どちらの半球でも気流は東向きに曲げられる。ということは、この惑星のグローバル循環は単純な昼夜間対流にはならず、西風が卓越することになる。その結果、惑星を東向きに回るスーパーローテーションになるだろう……と思う。

 定性的にはおそらくそうなるはずだが、定量的にも何か言えないか。再び松田佳久『気象学入門』を見る。

「コリオリ力は惑星の自転に伴って生ずる見かけの力なので、自転周期よりはるかに短い時間スケールの現象ではほとんど効果が生じない。」(P134)
「海陸風のように半日程度で変化する現象ではコリオリ力を無視できないこともないが、温帯低気圧の発達や台風のように1日以上持続する現象ではコリオリ力が重要になる。一般に、気象は時間的スケールが大きい現象ほど、時間スケールも長い。したがって、大規模な現象になるほどコリオリ力が重要になってくる。」(同)

 これを問題の惑星に当てはめてみると、自転周期が約半日なので、地球よりも時間的スケールが小さい現象でもコリオリ力が効いてくることになる。
 今のところ具体的な現象は何も思いつかないが、自転周期が地球より長い惑星と短い惑星にそれぞれ特有な気象を考えるのは魅力的な課題だろう。
(思い出したがニール・カミンズ『もしも月がなかったら』『もしも月が2つあったなら』はそういう本だったな。参考にするべきだった)


 こうしてみると、この惑星を舞台にしたSFは書く価値があると思えてきた。私にそんな能力はないが、誰か目端の利いた作家が手をつけてくれないものだろうか。
1 1

コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年05月09日 14:03
    ★9 この式は剛体近似である。惑星を流体として計算するのははるかに難しく、私の手には負えない。福江純・沢武史『超・宇宙を解く』(恒星社厚生閣2014年)P128にはやはり剛体近似だが、少し係数の違う式が載っていて、その計算方法も異なる。なおWikipediaの「ロッシュ限界」では、式の係数はここと同じ1.26だが、主星と衛星の質量でなく密度を使った形で書いてある。もちろん結果としては一緒である)
    ★10 ただし、一般的な白色矮星といってもそれは質量の話であって、ここでは太陽と同じ表面温度の場合を考えている事を忘れないように。しかし生命が存在する惑星は数十億年という長い期間に亘って一定の環境を保たなければならないので、その意味では太陽程度に低温の白色矮星を考えるのは合理的である。そう考えて研究者たちはこういう想定にしたのだろう。
    ★11 軌道が真円ならそうなるが、ある程度離心率が大きい楕円軌道であれば、イオがそうであるように、非常に強力な潮汐作用が働くことになるだろう。それによって惑星は溶岩の海になるかもしれない。しかし、これだけ主星に近い惑星なら、潮汐進化で軌道が真円に近づくはずである。よって最終的には潮汐力の変化がない状態になって安定するのではないか。(詳しくは井田茂『系外惑星』(東京大学出版会2007年)第8章「潮汐相互作用」)
    ★12 潮汐力が分かりにくいのは、それが働く対象の大きさによって力の大きさも変わるからである。月の潮汐力は毎日海水を数メートルも持ち上げることができる。だから大部分が水である人体も当然強く影響を受けるに違いない(実はSFマガジン掲載作にもそういう誤解をした作品がある。ひろき真冬の「LOVERS」だ)。そういう論理は一見するとももっともらしいが、論破するには海岸に水の入ったコップを置くだけでよい。
    満潮で海水が持ち上がると、コップの中の水も一緒に上がっていくだろうか。もしそうなら、満潮の度にコップの水は全部こぼれてしまうはずだが、そんなことは歴史上一度として起ったことはない。目の前の海が満ち潮で持ち上がっていく間にも、コップの中の水が微動だにしないのは、海とコップではサイズが7桁も違い、したがって働く潮汐力も7桁違うからである。(細かく議論するなら海岸の形状による共振作用なども影響するが、ここでは無視する)
    ★13 影響の強さを見積もるには地球の大気の循環と惑星の大気の循環の強さを比較してみればいいのではないかと思うが、そもそも潮汐ロック惑星の循環の強さをどう求めたらいいのか分からない。金星のスーパーローテーションを勉強するあたりから出発することになるかな……。
    ★14 質量mの物体に働く地球の重力はmgだから、重力加速度gとの比を求めるには、潮汐力の方もやはりmで割って、加速度の次元にしておかなければならない。
    ★15 俗説に月の魔力というのがあるが、統計的にはともかく力学的には無意味な主張である。実際に人体に作用する月の潮汐力を計算すると、測定できないほど小さい値になるのだから。ちなみにこの説を広めたアーノルド・リーバー『月の魔力』の論述は統計的にも間違っていると言われている。(不思議な事に翻訳は数学者の藤原正彦だった。一体何を考えて訳したのだろう)

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