mixiユーザー(id:62927979)

2020年01月29日01:52

144 view

3泊10日の火星旅行

 私には「3泊1年」というパワーワードが特に印象に残ったのであるが、私のお友達の間では「火星滞在が3泊で可能か」が話題になっていた。

三浦翔平&崎山つばさ&須賀健太が火星に移住する!?
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=96&from=diary&id=5948357

 周知のように最も経済的なホーマン軌道で火星に行くと片道約8か月である。ただし帰還には地球と火星の位置関係が(大体)同じになる必要があるので、かなり長期間火星に滞在しなければならない。正確な滞在期間は軌道の取り方によって変わってくるので一概にいえないが、標準的なホーマン軌道を採用した場合、地球から火星まで259日、火星での待機時間が454日、帰還にまた259日、となる(虎尾正久『宇宙航行の数学』P156)。したがって長くて1年以上火星に滞在する必要があるわけだ。
(軌道計画によっては滞在1か月・全行程18か月になる計画もあったそうだが)

 というわけで「滞在三日」はありえないという結論になりそうだったのであるが、いや待てしばし、一定加速度航行ならどうだろう、と思いついた。
 一晩考えたところ、1Gの一定加速で火星まで行くのであれば、「片道3日半、往復7日」で可能という結論が出た。しかも燃料消費が意外と少ない。十分実用的な行程になるのではないかと思われる。

 この計算は思ったよりずっと簡単だったが、あまり考えた事がなかったので正解を導くまでは結構迷走した。で、メモとして日記に残しておく。

 まず「片道3日半」を導く。この計算は高校物理の初歩にすぎない。
 地球-火星間距離はかなり変動するが、簡単のため平均距離で計算することにする。地球と火星を同心円軌道(ではないが簡単のためにそう仮定する)とすれば最大距離は地球と火星が太陽を挟んで一直線になったとき(合)であり1.52AU+1AU=2.52AU、最小距離は太陽の同じ側で直線上に並んだとき(衝)なので1.52AU-1AU=0.52AU。よって平均距離は火星の平均軌道半径と同じ1.52AU(2.28×10^11m)となる。今回は細かいことは考えなくていいと割り切って、この数値を採用する。

 一定加速航行ということは、行程の前半を加速、後半を同じ加速度で減速することになる。そこで加速時間を求めるには
フォト

において距離をx/2とすればいいのだから、
フォト

となる。1G加速ならg=9.8 m/s^2だが、やはり簡単にするためちょうど10 m/s^2とする。この程度加速度を大きくしても乗客から苦情が出る心配はないだろう。すると加速時間は
フォト

したがって加速時間は約1.75日。減速も同じ時間だから火星まで片道約3.5日である。

 というわけで、1G加速で火星に行くなら往復7日・滞在3日で全日程10日になる。
 これなら火星観光旅行にちょうどよいのではないだろうか。

 だが日程はいいとして、経済性はどうだろう。燃料を無闇に食う航行にならないだろうか。果たして経済的なツアー企画になるかどうか、これも検討してみた。

 そのためにまず加速終了時の速度を求める。一定加速だから、これは全く単純に
フォト

となる。つまり秒速約1500辧
 ところでさっきの加速時間の計算では初速0から出発して減速終了時の速度も0としてある。本来なら地球の公転軌道から出発して火星の公転軌道に移るわけだからこれも単純化だが、実は「安全な」単純化である。この1500/sという値は地球や火星の公転速度より二桁大きいから、惑星の公転速度くらいの違いは無視しても結果にはほとんど影響しないことが分かる。

 次にこの速度を出すのに必要な燃料がどのくらいになるかを求める。
 この問題は難しそうに思えるが、実は計算は非常に簡単だ。ツィオルコフスキーの公式
フォト

で答えが出る。
 vは加速終了時の速度、wはロケットの噴射速度、m0は加速開始時のロケット全体の質量、mtは加速を終了して燃料を使い切った時点の質量、すなわちロケットの本体質量である。
 以上のとおり簡単な式なのだが、もっと簡単にするため石原藤夫『銀河旅行』P216にしたがい、質量比δを
フォト

としておく。δが2なら燃料は本体質量と同じになる。また燃料消費が0ということはあり得ないので、δはつねに1より大きい。(m0はmtより必ず大きい)

 再び『銀河旅行』P90によれば、各種ロケットの(理想的な)噴射速度は
化学燃料が4240m/s、
核分裂が11200/s
核融合が26800/s
となっている。この数値を
フォト

に代入すればいい。
 現代のロケットでは火星までふつう数か月かかるのだから、化学燃料ロケットは一定加速度航行には役者不足なのは確かそうである。そこで、とりあえず核分裂と核融合だけ考えることにすると、
核分裂が
フォト

核融合が
フォト

となる。
 ただしこれは加速行程だけを考えた質量比であり、減速行程では加速終了時の質量をm0として考えるから、加速と減速を合わせた全行程の質量比は計算結果の2乗になって
核分裂:1.15^2=1.32
核融合:1.06^2=1.12
となる。1G加速で火星に到着するには核分裂で本体質量の1/3の燃料、核融合では1割強あればいいことになる。
 往復の燃料をすべて積んで出発するとすれば、地球帰還のための質量比はさらに2乗されて核分裂が1.74、核融合が1.26となる。

 つまり核融合推進の場合、1G航行・無補給で火星まで往復するには本体質量の1/4の燃料があれば十分である。
 核融合宇宙船を用いた火星3泊観光旅行は経済的にも十分成り立つという結論になった。


計算後の感想:
 現在のロケットは最低でも本体の6倍以上の燃料がないと衛星軌道まで上がることもできないのだから、核融合推進の効率は非常に優れていることがわかった。このことは全く意外ではないが、実は核分裂推進も意外に優秀なのは、今回初めて気づいた。同様な行程に核分裂を用いても質量比は2を超えない。すなわち燃料は本体質量より少ないわけだから。

(以下に余談があったが、一晩経ったら内容に自信がなくなったので削除)
-----------

以下本当の余談:
 気になったので一応化学燃料でも計算はしてみた。その結果はというと――
w=4240[m/s]だから、
フォト

となる。これはもう実現不可能というのも愚かしい、不可能すぎて笑ってしまうほどの数値だ。
 これがどのくらい大きい量か。宇宙船の本体を可能な限り小さくして、1トン=10^3圓箸垢襦B斥杣僧未2×10^30圓任△蝓桁で考えて宇宙船本体の10^27倍になる。そして銀河系の質量は2×10^12太陽質量とされる。これも桁で考えると太陽の10^12倍、よって銀河系の質量は宇宙船の10^39倍である。2016年の研究で、観測可能な宇宙には少なくとも2兆個の銀河が存在すると推定されている。したがって全宇宙の質量でも宇宙船の質量の10^52倍を超えない。質量比が10^167ということは、この宇宙船の燃料は全宇宙よりも10^100(1グーゴル)倍以上重いのである!
 以上により、化学燃料による1G惑星間飛行は全く議論の余地なく不可能という結論になった。いやはや。


余談その2:
 演劇版のサイトを見たら、須賀健太が普通にイケメンになってて驚いた。
 私の中では未だに茶川先生の養子のイメージだったのだがなあ。

1 1

コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月29日 23:32
    原子炉搭載核分裂ロケットの性能について書いた箇所を削除。一晩たったら自信がなくなった。
    燃料の使用方法によってロケットのエネルギー効率がどう変わるのかには依然として興味があるが、研究者ならぬ自分には軽々に判断がつけられない。結論めいた事を書くのはやめにした。。

mixiユーザー

ログインしてコメントを投稿する