王(仮)の帰還(10/9サウジアラビアRC)

「オオカミの時代が訪れ、盾は砕かれ、我々の時代は終わるかもしれない。
　だが今日ではない。今日、我々は戦うのだ。」

黒門の戦い前に、王の自覚に目覚めたアルゴルンが、兵士たちに向けて覇気溢れる檄を飛ばす。ロードオブリング、長い物語が佳境を迎えたシーンの名セリフですな。さあ、多分今年の王たる使命を背負った馬、POG人気ナンバー1はアルジャンナの全弟、国枝師の牡馬クラシックへの架け橋となりえるか．．ディープ馬コマンドライン。え？今、改めて調べて知ったけどこの名前ってコンピュータ用語の「入力行」のことなの？ほんと？そんなボソッとした現代用語そのまんまの意味なの？いや、コマンド（特殊部隊）のライン「最前線」とかそんなんだと勝手に．．．。てかそのゴツゴツした無骨でいながら気負ってる感じの方がむしろダサい？うーん．．．あ、すみません、脱線しました。
昨年の同立場だった（多分）アークライトは、今日現在、8戦して未だに勝ち上れず、引退間近の藤沢名伯楽の花道を飾る使命は完全に失敗。ただでさえ難癖付けられやすい下馬評ナンバー1について、ほれ見たことかとネガティブな説得力マシマシにした体たらく。だがその昨年の彼に増して初夏のちょっ早デビューで、のっけから眉につばベッチョリつけられたコマンドラインは、そんなベッチョリを「汚ねっ」とチャイして（チャイ？）あっさり新馬勝ち。さあ今年は一安心と、夏場はじっくり成長にあて、雄大な馬体をさらにマシマシにしておりましたが、秋の2歳馬重賞シーズンに入りいよいよ帰還。
コロナ禍の影響で、集まっての熱いウェーバー式でのドラフト会議ができず、去年同様今年も重複指名可能なうちの社内POGでも、もちろん指名数NO1でオーナーも14人と最多の子。これ、アークライトみたいにこけちゃうと、当然、大勢がいっぺんに沈むので体感ダメージも実は少ないのだが、逆に勝った時はなんだか、当たり前に持ってなきゃいけない上位へのチケットをまだ握りしめてる感じがして妙な安心感が。さあ、このまま実績の方もマシマシにして、順調にクラシックへ名乗りを上げることができるのか？主戦クリストフ・ルメールを背に芝マイル重賞、サウジアラビアRCに挑戦です。

そして実はこの番組にはもう1頭。母方の祖母にローズバドを持つ、そう、あれです、華麗なるバラ一族の子女。しかも母の父はクロフネ、父はキンカメ。どこか芳醇な土臭さも備えた姫は戦う戦士となりて王の首を狙う刺客に。お話では逆にアルゴルンに想いを寄せた人物ですが、その雰囲気は先の指輪物語になぞらえれば、そのまんまエルフ並みの美しさと気品を持ちながら、男装の戦士として凄腕をふるったエオウィンそのもの。ああ、申し遅れました、キャリアは3戦でその経験も強みにしたいスタニングローズ。ヤネはすべて違う人でここは4人目のベテラン戸崎J。こんなのもなんだか恋多き女みたいでカッコいーぜ！（そうか？）さあ、未勝利勝ちから新潟2歳Sで5着。出世の階段を駆け上り重賞の頭を狙えるか？

10/9秋の開幕週の東京メイン11R芝1600。なんと出走は7頭でフルゲート割れどころかゲート割れの少頭数。人気の1番は若き王候補コマンドライン6枠6番。対抗はキレキレのカナロア良血女子ステルナティーアと福永J。そして、スタニングローズはそれに続く堂々3番人気で大内1枠1番からスタートです。

人気3頭（実はすべてサンデー馬。これもすごいね）揃ってきれいに出ると、掛かってハナを行く馬を見ながら、これも揃ったまま3番手以下ゾロっと好位に位置取り。こりゃ鞍上の仕掛けの妙で勝負が決まると、ゾクッときた瞬間、なんと王が動いた！3コーナーからコマンドラインまくっていくと最終角で2番手に。スタニングローズは控えたまま、上り勝負狙い。さあ直線向いてジリジリ伸ばしていき、コマンドライン、先頭に立ち受けて立つ態勢へ。すぐ後ろのステルナティーアにムチが飛び差しをうかがう。スタニングローズも残り200からスパート、グングンと伸びる。
コマンドライン、堂々と押し切っての半馬身差勝利。そして最後の最後．．．スタニングローズはステルナティーアを捉えたか？ああ、差せなかったぁ、クビ差3着まで。
ルメールJ談「ペースが落ち着いたところでポジションを上げたが、最後まで反応してくれた。2着馬も強いが、こっちもずっと集中してた。これでクラシックが楽しみに。」
戸崎J談「内枠で一列下がっての競馬になってしまった。最後は伸びていたし、少しもったいなかった。」

王としての帰還成る。一方、力は存分に示せたが賞金はまたも積めず、何とももどかしいうら若き貴族。それぞれの戦いは続いていく。