西川君よ、永遠に。。。

もっと大騒ぎになって
ボートレースの信用が失墜するかと思ったが
そういった危うさが公営競技の魅力であり
それでいて敢えて呼ぶ「競艇」の本質だと思う。

門外漢にはさっぱり理解できないだろうから
簡単に説明しておこうか

日本の競艇※は６艇でレースを行い
その順位を競う競技である
※韓国にも競艇があり、６艇とは限らない
１着から順に得点が与えられ、予選の間は総得点を走った回数で割って算出される「勝率」の高い順から準優勝戦に進出し、準優勝戦は勝率の高い者から順番に若い枠が与えられる。後述するが競艇において「枠」は最大の予想ファクターであり、ほぼ順位は枠に基づいている。

６艇にはそれぞれ「枠」と呼ばれる艇番がレースごとに付され
それぞれ１号艇、２号艇。。。と呼ばれることになるが
１号艇は２コース、２号艇は２コースと呼ばれる位置からスタートする事が多い。

レーススタート時は
ピットと呼ばれるところから
全艇同時にスタート位置に着くべく発進するのだが
競艇は独自の「フライングスタート」と呼ばれるスタイルを取っている
時計が丁度「０」の位置を指してから１秒以内にスタートラインを越える事が
スタートの条件でスタートラインをどれだけ速く通過しても構わないが
１００分の１秒でも速くスタートラインを切ってしまうと
「フライング失格」となり、その艇に絡む舟券は全て返還扱いになってしまう

僕が眼前で見たレースの中では、
そのレース１つだけで２４億円売れていたレースで
１号艇と２号艇が揃ってフライングを切ってしまい、
２２億円返還した、というケースが最も大型のスタート事故であった。
フライングを切ってしまった選手は罰則として最低でも１か月
３つ切るとほぼ半年間出場停止になる。
野球で言えばドーピング違反級の罰則である。

そして「枠」がポイントである。
競艇では「１号艇」の１着率がとんでもなく高い。
１号艇が「１コース」を取りやすい環境であるのも理由だが
その「１コース」とは、「イン」と呼ばれ
周回の最内を旋回する、最も短い距離で走るポジションであると同時に
その外から旋回する他の艇を内から外に押し出す事が出来る
かなり有利なポジションである、という事に尽きる

もっとも「インが強い」と言われる大村競艇上では
インの勝率は７０％ほどである。
従って、素人であっても無くても
舟券（勝舟投票券）を買う時は、「とりあえずインから」
というのはセオリーになっている、というのはまず知っておきたいところである。

次に舟券の対象であるが
２０００年頃から公営競技界に導入された「三連勝式」が
現在の競艇の主流である。９０％以上が
「三連勝単式（通称　三連単）」という賭け式で舟券を購入している
６艇なので全部で１２０通りである。
全体の賭け式当たりの舟券購入額の７５％を
的中した舟券に均等に分配して払い戻すわけだ
因みに、８車で争うオートレース（小型自動車）なら３３６通り
９車で争う競輪なら５０４通り
１８頭立ての中央競馬なら４８９６通りであるから
比較的的中させやすい競技であるとは言えなくもない。

しかし、予想というのは集中するものであり
１番人気であれば５倍〜１０倍程度というのが
倍率（オッズ）の相場である。
「１着　１番→２着　２番→３着　４番」が一番人気の場合は
２番人気もそれに大きく違わないオッズで
「１→４→２」や「１→４→５」などが続くわけで
１点だけを購入して的中させれば大きく儲かるわけだが
当然同じくらいの信用度となると３点、４点と舟券を購入する事になり
結果的には２０００円で２０点くらい購入して的中しても
払い戻しは２５００円、なんてことはざらにあるのである。

しかしそれは
人気の１号艇が３着までに入った場合。
１番が人気していても、２着になる場合も３着になる場合もあるが
２コースが１コースの内側を突いて１着になる走り方を「差し」と呼び
昨年は佐賀支部の宮地選手が２コースの勝率５０％という数字が
全国ナンバーワンであった
因みに１号艇の勝率ナンバーワンは９６．７％で福岡支部の西山選手であった
インなら１００回走って３回しか負けない計算になる

つまり、それくらい舟券検討の中心になる１号艇において
２着にも３着にも入らないというのは
現実問題としてレアケースであり
この時、「大穴」が開くことが確実になるのである。

西川選手は選手全体の最上位２０％が格付けされる「Ａ１級」というポジションにあり
実力も示されている上に、年間賞金額は２５００〜３０００万円はあったであろう事を考えると
それを越える「経済効果」を生み出さなければ意味は無かった筈である
しかも、自分以外の５艇が格下でインに座ったとなると
オッズは１着は西川に固定されて買われることは間違いが無く
先ほど三連勝単式は６艇だと全部で１２０通りだと言ったが
１が関わらない舟券は半分の６０通りなのである。

そして、一番外の６コースが舟券に絡む確率は
めちゃめちゃ低いのである。
１／２８は全１４レース場で１６８レース行われたのだが
６が１着だった回数はたったの３つで
そのうち一つは「前付けするイン屋」の今村暢孝が６号艇だったためであり
客もそこは理解していて、好配当にはならなかったが
残り２つはかなり大きな数字の万舟券となっている。

５か６を道連れに着順を下げるか
２着か３着にのみ買い目を入れるか
６が１着で、２着と３着に１が含まれない買い目は１２通り。
残りは４８通りである。
加えて、２か３か４が１着になる場合に絞れば
もう１２通り絞る事が出来るので３６通りである。

２　→　３　→　４・５・６
２　→　４　→　３・５・６
２　→　５　→　３・４・６
２　→　６　→　３・４・５

このパターンで３が１着の場合と４が１着の場合に
仮に１万円ずつ買えば
全部で３６万円
最低でも万舟（１００円が１万円になる）という倍率１００倍のオッズはあるだろうから
買う側には絶大なメリットを保証できるわけである

ところが不可避のトラブルが発生したのが
西川の運の尽きだった
転覆などの事故がたまたま、
その、敗退行為を行う予定のレースになってしまった事で
自分より前の着順を走っていた舟が転覆してしまうと
着順が繰り上がってしまい４着の予定が３着になりそうになったのである
西川は更なる敗退行為を試み、
事故艇の近くで大幅に減速を行ったのだが
後続の舟がこれを避けきれず、
本来ならば事故艇の外側を周回しなければならないのに
内側を走行せざるを得なくなって失格
重ねて「八百長失敗」と相成ってしまったのである

これでこれまで「怪しまれていた」レベルから
一気に容疑が深まり証拠探しを行われジ・エンド
騒ぎになるまでには自発的に引退させられていた、というのが
事の顛末というものである

これまで、競艇界の不正と言えば
携帯電話などの持ち込み（西川が既に染めていた悪事）や
整備不良（ボートのモーターを改造してパワーアップさせる）などが
主な手法だったが
いよいよ敗退行為となれば「賭け事」が不成立になってしまう
競技としての敗退行為が許されない上に
自分たちが「賭けの対象」となっている事を重ねて踏み躙る
問題行為である

とまあ、長々と書けばこうなる

もっとも公正さを欠いた番組構成や
競技としての妙味の限界
或いは
番組構成の手法そのものが前時代的な上に
「進入」と呼ばれるスタート前のコース取りが
極めて予定調和的に収まっている点など
何かと突っ込まれたくない脆弱さが
あるのも事実だ

公営競技の中では恐らくは
もっとも公正でギャンブルらしいギャンブルは
競艇であると僕は信じている
人間同士が実際に人力で競争する競輪は
読みにくい事この上ないし
自力選手と番手選手の貸し借りや譲る譲らないが
余分な車券を買わされる羽目になるとか
オートレースに至っては強いものが弱いものをどんどんと追い上げていく仕組みなので
敗退行為については全く判別がつかない事になっている
競馬の場合は動物の事だから
敗退行為も簡単だが必ず勝つ番組を地方競馬などは作っていたりして
実に怪しいところ満載である

それを思えば、競艇はちゃんとしてる
自浄作用も働いている
そこも評価しつつ、本当の闇を報道で暴いて貰いたい
と切に願うばかりである。

■「今日は飛ぶ」隠語でやりとり、スマホに記録　競艇不正
(朝日新聞デジタル - 01月29日 11:56)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5953179
　競艇選手が不正な順位操作の見返りに賄賂を受け取ったとされる贈収賄事件で、２８日に名古屋地検特捜部に再逮捕された元競艇選手の西川昌希容疑者（29）と親族の増川遵容疑者（53）。その不正の手段が明らかになった。

　西川容疑者はレース直前、持ち込みが禁止されているスマートフォンで、「今日は飛ぶ」などの隠語を使って増川容疑者に着順を伝えていたことが関係者の話で分かった。増川容疑者は、これらの情報をもとに3連勝単式舟券を的中させたが、2019年以降のスマホの記録を消去しておらず、不正発覚のきっかけになったという。

　関係者によると、「飛ぶ」の意味は、6艇が順位を競う競艇で4着以下になることを示しているとみられる。西川容疑者は最高位のA1級にも所属した実力者だが、再逮捕容疑となった18レースでは、半分が4着以下だった。同年9月の引退試合のレースでは1号艇1番人気で出走し、最下位になった。ベテランの競艇記者は「技術はあるが、くせ者で、勝っても負けても『高配当を呼ぶ男』と言われていた」と話す。