自己啓発本の元祖カーネギー『道は開ける』の「うつ病を2週間でなおすには」という章の内容を紹介したい。折に触れ繰り返し繰り返し読んでいるが、この章だけでも本書を読む価値は絶対にある。
他人に善をおこなうのは義務ではない、歓喜である。それは行う者の健康と幸福とを増進する――――ゾロアスター
他人に対して善をおこなうとき、人間は自己に対して最善を行っているのである――――ベンジャミン・フランクリン
◆
他人を喜ばせよ、善行をなせといわれても、自分が苦しい時には無理だと思う人が大半だろう。あるいは、時間のムダ、偽善だと切り捨てるかもしれない。しかし、カーネギーはそれは間違いだと指摘する。
他人を喜ばそうとすることによって、自分自身について、つまり悩み・恐怖・憂鬱症の根源となっているものについて考えなくなるからだ。
つまり、注意力を自分自身にではなく、他人のほうへ集中させ、自分のことを考えたり、気遣ったりする時間はすべてなくなるのである。
ある医師の言葉の「私の患者の三分の一は臨床的には本当に神経症ではなく、生きがいのなさと人生のむなしさとに苦悩しているのだ」という引用は、考えさせられるものがある。「いかに他人を困らせよう」「私の苦しみに同情せよ」と日がな一日考える行為ほど、人生の健康と幸福を害するものはないであろう。
他人に興味を持つことによって自分自身を忘れよう。毎日、だれかの顔に喜びの微笑が浮かぶような善行を心がけよう。どうしたら他人を喜ばすことができるか、毎日考えてみよう。
◆
人間が短い一生から喜びを取りだそうと思うのだったら、自分よりも他人のために役立つように考えかつ計画すべきである。なぜなら、自分に対する喜びは自分が彼らに与える喜びと、彼らが自分に与えてくれる喜びによって決まるからである―――セオドア・ドライサー
◆
人間は誰でも、他人に興味を持たれると手放しで喜ぶものだ。人間は皆、ほんの少し、人間として注目されることを望んでいる。しかし、自分のことしか考えない人間は、人生から多くを得られない。
そんな人間は必ずみじめなのである。しかし他人への奉仕で自分自身を忘れる人間は、人生の喜びを見出すにちがいないのだ。
一般的に自己実現と幸福のためには、自己犠牲や訓練が必要であるし、そのためには自分に投資する時間が必要である。だが、自分のためだけに生きようとするほど人生はむなしさに直面する。逆説的であるが、自分自身を幸福にするためにも他の人々を幸福にしなければならない。幸福は伝染するのだから。
ログインしてコメントを確認・投稿する