本当に実りある五輪を開催できるのか

　あきれた話である。東京オリンピックに向けて、ボランティアを募集したほぼ同じ内容の業務が、有償で人員募集されているというのである。日本が世界へ「おもてなし」を発信して誘致した祭典だからこそ、無償でも力になりたいと、万障繰り合わせてボランティアに応募した人もいたことだろう。
　その善意を踏みにじった都の罪は大きい。
　同じ業務を担うのに、報酬に差をつけるのは、政府が主導する「同一労働同一賃金」の趣旨に真っ向から反する。また、もとより一部スタッフを有償で募集することを決定しておきながら、それを秘匿してボランティアスタッフを募集していたのだとしたら、背任もしくは詐欺に該当するのではないか。
　そして有償スタッフが、なぜ都の直接雇用でなく、民間の、それも特定の人材会社による募集なのかも、都は説明する義務があるのではないか。五輪の運営費も、もとを正せば国民の税金である。税金の用途は、税負担者に詳らかにすべきである。
　このような運営方針のもとで、本当に実りある五輪を開催できるのか、甚だ不安である。


https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020012402000152.html