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2019年10月14日15:37

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三笠の懺悔(捷号作戦3)

漸くに瑞鶴に戻った高槻と日高は飛行長に戦果の報告を行った

「そうか、敵空母1を撃沈、巡洋艦1を撃破か・・よくやったな」

「はい、ありがとうございます」

「待て、少尉、君は何故に戻ってきた!?」

「・・(げ、ややこしい奴が出てきたな)」

天海参謀がフィリピンに向かえと言ってたじゃないかと言わんばかりに問い詰める。高槻が反論する

「参謀は『貴様の判断に任せる』とおっしゃったので瑞鶴に戻りました。いけなかったのでしょうか?」

「しかし少尉、一航艦に兵力がないことは君も承知のはず。何故クラークに向かわない」

「そのような命令は受けてませんので戻りました」

「き・貴様・・上官に反抗する気か!?」

ビンタしようとした天海参謀の手を掴む者がいた。貝塚艦長だった

「参謀、こいつらの身柄は俺が預かる」

「しかし・・・・」

「こいつらは前の戦いの件で訴追されて無所属だったはず・・となると軍規に従い所轄長である俺がこいつらの人事権を持つことになる。違うか?」

不承不承に頷いてふて腐った態度で連中のことをお任せしますと捨て台詞を残す天海参謀にあっかんべーをする高槻少尉と日高は貝塚艦長に礼を言う。

「いや、瑞鶴に言われてな・・・貴様らを保護してやろうと一芝居打ったわけよ!」

「はあ、ありがとうございます!ですが・・・どこに居ればいいので?」

「そうだな搭乗員待機室で出番が来るまで待っておけ!明日出番があれば呼びにやる」

「わかりました!」

敬礼し終わった高槻と日高は充てがわれた待機室で横になった。

「明日、もし出番があるとしたら何をしないといけないでしょうか?」

「さぁな・・・消化班か応急操舵員にされて照焼きか土左衛門かもしれないがそれも運だ!」

「また運ですか・・・龍鳳ちゃんともう一度楽しみたかったなぁ・・」

「・・そう言うのはよせって!瑞鶴どうしてそこに!」

瑞鶴が現れたことに気づいた高槻は何があったのか尋ねた。暗い顔の瑞鶴は戦況は不利だと言わんばかりに答える。

「武蔵がやられたわ・・・手近な島に乗り上げて浮き砲台になると言うけど多分無理・・・」

「何だと!武蔵までも失ったのか・・・大和達はどうするんだ?」

「一時態勢を立て直すためにサンベルナルジノ海峡への突撃を見合わせるとの通信が入ったわ。だから私達も北に退避する」

「何だと戦場から逃げるのか・・愛宕達は無駄死にだぞ!」

激怒した高槻は瑞鶴に掴みかかった。ビンタしようとしたところ瑞鶴が泣いてる事に気づいた。

「私だってこの期に及んで逃げ出すのは嫌だよ!でも命令だから仕方がないでしょ!」

「・・・そうだな。命令だったらしょうがないよな!」

怒りのやり場を失い突き放した高槻に瑞鶴が反論する。

「でも、私は信じてるよ。大和達は必ずサンベルナルジノ海峡を突破する。彼女が武蔵達の犠牲や山城さん達が死を覚悟で囮になるのを見捨てないと信じてるからね!」

「お前が信じるのなら俺も大和を信じよう・・となると俺たちも機を見て再度突入すると考えた方がいいわけだな」

ええと頷く瑞鶴、高槻は日高の方を向いて言う

「そういうことだ・・明日が俺たちの命日になるかもしれないぞ、覚悟はいいな、日高?」

高槻が日高を煽る。煽られた日高は答える。

「ええいいですよ。ペアを組んで2年近くになりますし今更離れる気はありません。最期まで付き合いますよ!」

「そういうことだ・・・まあ明日は頼んだぞ!」

「うん、直掩機は20機もないけどね」

「20機か・・・俺たちが割り込む余裕はなさそうだな」

「残念だけど予備機は一機もないわ・・全部組み立てて割も決まっちゃった」

残念だと思った高槻は俺達が乗ってた彩雲はどうなったと尋ねた。瑞鶴は答える。

「あれは飛行甲板に放置してあるわ・・・」

「飛ばすことはできるか?飛ばすことができれば直掩機の誘導はしてやってもいいぞ」

「それは無理、整備も精一杯だしね」

そうかと納得した高槻は日高にこれは明日の本番は良くて露天で機銃を撃つ羽目になりそうだなとコボした。

「真珠湾からずっと攻撃する番だった俺たちだが今度は逃げ場のない機銃撃ちだ。日高、貴様腹を括れるか?」

「自分はろ号とマリアナそして今日も露天で機銃を撃ってますので撃たれることは慣れてます…が、逃げ回ってばかりの高槻さんが心配です・・・古兵がびびって後ろで震えてたらボウヤ達に示しがつきませんよ!」

「そうよ・・・・私達も命をかけるのよ。高槻にも体を張ってもらわないとね!」

瑞鶴に煽られた高槻は観念した表情して言う。

「そうだな・・・戦の最中にここで菓子でも齧ってるわけにはいけないよな…分かったよ。俺も腹を括る!ただな…」

「ただ、何よ・・・」

「俺達の人事権は貝塚艦長が握ってる。勝手に俺達が修羅場に行くわけには行くまい!」

「それはそうだったわね・・まあ、機銃撃ちになることを祈るわよ」

「違いねぇ!」

3人は笑った。これからどうするのだと尋ねた高槻に瑞鶴は答える

「この地点で東に航路を変わってこの地点で伊勢さん達と合流するわよ」

「敵の空母連中は食いついて来るかな・・・・」

明日の夜明け前にこの地点で合流すると指先で示した瑞鶴に高槻が聞く。瑞鶴は答える。

「大丈夫・・大淀からの報告で敵の偵察機が私たちに接触を開始してるみたいだしね・・もう敵も私たちの存在に気づいたはずよ」

「そうか・・明日は何機来るかな・・」

「敵の機動部隊が全力で襲いかかって来るとしたら400機は襲って来ると思った方がいいかね」

「400機?大戦だな・・・後は大和達が上手くやってくれることを望むだけか!」

「ええ・・・大淀にもよろしくやってくれと伝えたわ」

「何と伝えた?」

「私が沈められたり通信をやられたらしょうがないから貴女からも大和達に送信をしてくれとね・・・」

高槻が言う。連合艦隊旗艦を務めた大淀だから万事抜かりはあるまいが問題は大和が上手く受信できるかだなと。瑞鶴は「それは運よ」と答えた。高槻も運だったら俺たちの力では叶わないと納得して24日は過ぎた。

それから70数年後の天界では

「7機目、頂きだ!」

日高が操縦するF35が敵機をロックオンした。敵も回避を試みようとしたがそれを試みる前にアムラームが追尾してきた。

「日高、後ろから敵機が来てるぞ。回避しろ!」

「分かりました!その1機は高槻さんにお任せします!」

「分かった。すぐに始末しやる!」

回避する日高機を撃墜しようとした敵機を死角からやってきたF35が始末した。助けたれた日高機が高槻に今ので何機目ですかと尋ねる。

「ざっと8機目だ。山城さんと扶桑さんで5機落としたから残りは10機だな」

「そうですが・・・残りの連中は逃げ腰です。追いますか?」

一方的に叩かれた敵の攻撃隊が逃げて行くのを見て日高が尋ねる。高槻は深追いは将棋の指し過ぎだからよそうと言う。

「高槻、ありがとう」

護ってもらった山城が言う。高槻が答える。

「いや・・山城さん達から敵の諸元を送信してもらったお陰だよ。感謝するのは俺たちの方だよ」

「そう言ってくれたのなら嬉しいですね。扶桑お姉様」

「はい・・高槻、私達はこれからどうすればいいのかな?」

「そうだな・・もうミサイルと砲弾も空だろうから後は加賀さん達に任せればいいじゃ無いかな?」

はいと頷いた山城は本隊の加賀に指示を仰ぐ。加賀から後は私たちに任せて貴女達は後方に下がるよう指示が来た。

「高槻、自分たちは後ろに下がります。気を付けて」

「そうか・・コロシアムでの勝負の結果が分かったら伝えてくれ」

「わかりました。さあ山城、後は加賀と愛宕に任せて下がりますよ」

「はい、お姉様」

山城達が舞台を去るのを見て相変わらずだなと苦笑する高槻に日高が自分達も弾がありませんので下がりましょうと尋ねる。そうだなと思った高槻は日高に言う。

「日高、加賀さんで補給を済ましたら戦闘機隊の誘導をするぞ!」

「え、自分達は戦わないので?」

通信傍受で次は400機で襲って来ると聞いている日高が意外な回答を聞いて驚く、高槻は言う。

「これは加賀さん達の戦いで俺たちは助っ人だ。彼女達で蹴りを付けないといけないぜ・・それにだ」

「それに・・・」

「数が物を言う正面決戦になった数の多いほうが最終的に押し出すのはマリアナでもレイテで経験済みじゃないか・・数が少ない俺たちが勝つためには戦力を有効に動かさないといけない・・だから斥候を志願する。これでどうだ?」

「それなら納得です」

「分かったら加賀に戻るぞ」

加賀に戻った二人は加賀に斥候をさせてくれと願い出る。いいのかと聞き返す加賀に高槻達は俺達は助っ人だ。本番は加賀さん達に任せると答えた。

「わかったわ・・・斥候はあなた達に任せる」

「そうこなくっちゃ!加賀さん、武装は自衛用でいいから通信機能とアビオニクスをMAXにしてくれ」

「わかった・・修理妖精には言付けするわ!」

「そうこなくちゃ・・日高、少し休憩だ。次は大戦だぞ」

はいと頷いた日高を連れて70数年前と同じ様に搭乗員待機室でしばし横になるペアだった。

24日深夜、艦隊に付いてこれる燃料がないので台湾に離脱せよと命ぜられた杉と桐は本隊より分離、西に向かう。

「杉ちゃん、大丈夫かな?」

本隊に接触を試みた敵の偵察機に対して対空射撃を行った際、反撃してきた偵察機に銃撃された杉を妹の桐が気遣う

「私は大丈夫だよ・・桐ちゃんはどうなの?燃料は台湾に戻るまでギリギリでしょ?」

「うん・・私は大丈夫だよ。でも二人だけで真夜中の戦場にいるのは心細いな・・」

「そうだね・・とにかく西に行こう。もしかしらた伊勢姐さん達と連絡が取れるかもしれない」

「そうだね」

所属の31戦隊旗艦の大淀からの指示により西に進路を取った2隻は艦隊と思われるものに遭遇した。伊勢姐さんだと思って手を振ろうとした杉だったが、通信士官の仁後真人少尉が飛んできてビンタした

「少尉、何をするんですか?」

「杉、お前死にたいのか!あれは敵の前衛隊だぞ!」

大学で英語サークルにいた経験を買われて通信室で敵の無線傍受を任された仁後少尉はこのまま進んだらあっという間に瞬殺だぞと叫ぶ

「わかりました。すぐに桐に知らせます」

「そうか・・俺は艦長に報告してすぐに逃げるよう進言する!」

「頼みます!」

仁後少尉が艦長にあれは敵艦隊だと報告した後と前後して杉は桐にあれは敵艦隊だよと報せた。驚いた桐は慌てて北の方向に逃げ出し、杉も後に続いた。

「ウィチタ司令、レーダーに反応あり。JAPです」

「来たか・・早速に血祭りに上げてやる。戦闘用意!」

昼の戦闘で沈められたプリンストンと重傷を負ったバーミンガムの敵討ちだと戦闘隊形を取ろうとしたウィチタだが敵の部隊は早々にレーダーから消え去った。獲物を逃して舌打ちするウィチタに部下が指示を仰ぐ

「本隊への合流を優先、敵駆逐艦を至近距離にて発見と伝える」

部下が本隊の旗艦であるエセックスに伝える。報告を受けたエセックスは狂喜して全艦隊を終結が終わり次第、JAPを全滅させろと命じた。

「ブラックドラゴン(ニュージャージー)には何と伝えましょうか?エセックス姉様」

ムサシを失ったとはいえ敵の水上部隊(栗田艦隊)がそのまま引き返したとはとても思えないレキシントンが機動部隊の全部をオザワ艦隊にぶつけるのは早計にすぎないかと聞き返す

「アイオワ達がヤマトと雌雄を決したいと思ってるのならそのままレイテに突っ込ませろ。私達は北に向かいズイカク達を皆殺しにする!」

「レイテに集結しているカーゴ部隊と護衛の第7艦隊には何と伝えます?」

別口の部隊(西村艦隊と志摩艦隊)が前後に分かれてスリガオ海峡に向かってると報告を受けたレキシントンが再度意見具申する。エセックスは答える。

「JAPの年増の数隻の主力のあれぐらい、あなた達で何とか処置しろと年増どもに伝える!」

「いいのですか?」

「何かと言うと、年功序列を盾に私達空母機動部隊を新入りと見下す年増どもに手柄をわけてやるんだよ!何を躊躇することがあるものか!」

不承不承ながら頷いたレキシントンは接近してる敵艦隊はあなた達で何とかしてくれと第七艦隊の旗艦のペンシルバニアに伝える

「いいわよ!騙し討ちされたアリゾナとオクラホマの敵討ちだ!JAPどもの首をパーティーの土産物にしてあげる!」

再改造された時に機械化された腕を鳴らしながらペンシルバニアが回答する。ドン引きしたレキシントンは小声で敵機動部隊を撃破次第自分達も参りますと約束する。

「大丈夫だよ・・JAPのムサシは沈んだのだろ。後警戒すべきはヤマトとナガト程度だろ?数で押しつぶしてやるよ!ユー達の支援なぞ必要はない」

「は・・はい、お任せします」

米国艦隊内部で明日の戦闘配置で討論していた時のことだった。一時西方に退避していた大和は部下の艦娘達を呼び出して訓示した

「東に反転してサンベルナジノ海峡に向かいます!武蔵達の敵討ちです!」

長門達から歓声が上がる。武蔵達の敵討ちができると喜んだ艦娘達が戻った後、次席指揮官である金剛が大和に話しかけた

「もしだよ・・・ミー達が敵機動部隊に接触したらどちらを優先するのかな?」

「そうですね・・・敵機動部隊への追撃を優先します!」

「いいのかな・・命令違反ダヨ・・・」

「構いません・・・もはや勝ち目はありません。輸送船を何隻か叩いたところでフィリピンの陥落は免れないでしょう。それなら敵空母を一隻でも多く叩くことを優先したいと思います!」

最後の時はこれで自分自身にケリをつけると言わんばかりに短刀を触る大和を見てその覚悟を受け入れた金剛も答える。

「ユーがそこまでの覚悟ならミーも従うよ。シスターは許さないかもしれないけどサ」

「その時は私達二人が三笠大姉様の前で腹を切れば済む事でしょう!」

「そうダネ・・どうせハラキリするなら内地でやった方がクルーは助かるね。わかったよ」

「ありがとうございます。金剛さん明日は任せますよ!」

「イエス、マアム、コマンダー!」

数々の心配と大戦果を思いながら24日は終わろうとしていた。25日に待つものは何であろうか?

(続く)
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