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2019年08月18日09:31

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決戦1(再会)

先日、戦友と旅してきたのでその都度温めているネタを披露しようと思う。

1945年4月7日・14時10分

「・・・長官、ここまでにございます!矢矧、先に逝かせていただきます!」

最後まで君に付き合ってやるよと頑張っていた池田中尉を、生きろと海に投げ込んだ矢矧は同じく左舷に傾斜をしている大和を眺めながら手榴弾の信管を壁に押し付けた。

「先に逝った武蔵さんに長官は最後まで頑張ったと報告します!御免」

手榴弾を抱えて艦橋から身投げする矢矧、波しぶきとともに血煙が上がった。その死に様を見た大和は傍にいる雪風を呼び出す。

「・・雪風、何人戦えますか?」

深手を負ってる大和を前に雪風は答える

「・・・私、初霜、冬月の3隻にございます。大破した涼月は単独で血路を開くよう命じました!」

「そうですか・・・・雪風、私は先に散った者たちに恥ずかしくない戦いをしたでしょうか?」

雪風の答えを聞いた大和は「もういいのではないか?」と言わんばかりに聞いた。雪風は頷く

「はい見事な戦いぶりでございました。我らはもちろん、三笠大姉様も米内海相も満足なさると思います!・・・もう、この辺りでよろしいかと?」

奇しくも艦橋で戦況を見守っていた伊藤整一提督と同じ遣り取りをした二人。満足した大和はニコリと笑って答えた

「雪風、残存艦隊を率いて内地に血路を開きなさい。私の首を敵に渡してはなりません!」

「はい」と頷く雪風は大和に不満な顔をして言う。

「しかしながら憎むべきは米帝であります。最後は戦艦部隊で決戦だと我らを誘っておきながら空母機動部隊を繰り出すとは裏切りにも程があります!ですので、私はその返礼をしたいと思います」

「長官、最期に当たって敵に怨みをぶつけるのは御法度にございます。何卒、ご再考を!」

『敗北することは責めないが貴女方が怨みを残すのはいけない』三笠の訓示を盾に説得を試みる雪風であったが大和はそれでは私の気持ちは晴れませんと答える

「雪風、大姉様に伝えなさい、『ここまで虚仮にされては是非もありません。修羅道に堕ちようと本望です』・・・わかりましたね」

「は・・・はい、必ず本土に帰り、長官の思い伝えます」

雪風に思いを伝えた装備を外して艦首に連れて行くよう命じた。肩を貸す雪風に助けられて左舷に傾斜しつつある自分自身を進む大和は第一砲塔前の大和坂が始まるところで立ち止まった。

「ヤマトの奴が現れました。撃ち殺しますか?」

空母バンカーヒル格納庫に設けられたスクリーン越しの実況を見てるバンカーヒル達、空母娘達に部下が進言する。

「・・・今、撃ち殺しても面白くない。奴の負け惜しみを聞いてやろうではないか?偵察用のアベンジャーをヤマトの前に出せ!」

散々に飛び回って海上掃射をしていたヘル猫に替わって偵察用のアベンジャーを前に出してきたのを見て雪風が舌打ちする

「長官、連中は生死をかける戦場を映画と勘違いしてるようです・・忌々しい!」

「雪風、連中がそう思うのなら仕方がない。私の・・いや連合艦隊の将帥としての最後を見せてやりましょう・・雪風、介錯の支度を!」

「はい」

雪風は背負っていた太刀を抜いた。偵察機部隊を前にして上着を脱ぎ捨てた大和は腰に付けていた短刀を抜いてスクリーン越しに戦況を眺める米国艦隊に向けて叫んだ。

「帝国海軍戦艦大和、貴様らが約束を違えしことを無念に思う!我が恨み必ず貴様らに取り付き祟りをなさん。我が腹切りが様を良く目に焼き付けろ!」

スクリーン越しに眺めていた空母娘達は「ハラキリ」という単語を聞いて興奮する

「何、ハラキリ・スーサイドだと?JAPのクレイジースーサイドを生で見られるのかぁ!偵察機、もっと近づけ!」

インカム越しに偵察機を近づけようとするバンカーヒルを長姉であるエセックスが後ろから押しのけようとする。

「姉様、何するんですかぁ?」

「こういうのは年上の姉である私にいい席を譲るものだよ!貴様はどけ!」

「そうは行きません!今日という今日は私が一番いい席をもらいます。姉さんは下がって!」

「何を・・私にもハラキリショーを見させろ!」

恐らくは最初で最後になるだろうハラキリショーを生で見ようと空母はもちろん軽空母娘達も巻き込んで、いい席にありつこうと揉み合ってるころ、太刀を構えた雪風は大和に尋ねる。

「長官、連中の攻撃が弱まりました。何かあったのでしょうか?」

「恐らく、私の切腹のありさまを笑ってやろうと争ってるのかもしれませぬ。愚かな・・雪風、私の本体の火薬庫の温度が急上昇して参りました。お願いします!」

「わかりました」

後ろに回った雪風が太刀を構えると同時に短刀を左脇腹に切っ尖を当てる

「介錯は私がいいというまで待ちなさい!」

「はい」

「では、参ります・・・うぐぅ!」

懐紙で巻いた刀身に右手を添えた大和は切っ尖を腹に突き立てた

「う・・・うむぅ・・はあああああ!」

突き立てた刀を一気に右に引き回す大和、疵口から吹き出した鮮血が甲板に飛び散る

「ス、スゴい・・・これがハラキリなのか?」

「何というクレイジーなショーなんだ。JAPの連中、スーサイドをショーにするとは野蛮人にも程があるぞ!」


漸くにして争いをやめて落ち着いたバンカーヒル達は大和の最期を観て興奮する。

「・・・・はあ・・・はあ・・まだだ・・まだ終わっちゃいけないわ・・・」

一文字に切り裂いた大和は俯きながら呻いた。見かねた雪風が尋ねる

「長官、もうこれでよろしいでしょう!早く介錯を・・お願いします!」

今一度、考え直してくれと説得しようとする雪風だったが、大和は首を振って答える

「・・・さ・・最期は私の好きなようにさせれくれ・・これは命令よ!」

「は・・はい・・」

答えながら思わず後退りする雪風、願いを聞いてくれたことを知った大和は抜いた短刀を鳩尾に突き立てて臍ごと切り裂いた。

「まだだ・・我が事は終わってない・・・我らが本心を・・貴様らに示してやる。ぐぬぅ!」

疵口からはみ出ていた腸を摑んだ大和はそれを引き摺り出した。熱く熱して血煙を上げる腸を偵察妖精の前に見せつけた大和は空母連中に向かって叫んだ。

「これが貴様達がJAPと軽蔑している我らが心だ・・どうだ!・・これを見ても我らを下らぬ下等民族だと見下すのか!」

大和の叫びと目の前で行われいるハラキリショーに興奮しているのか、本心を突かれて呆然としているのか無言で見守っている空母娘に対して大和は最後の行動に出た。

「こ・・これを貴様らの裏切りへの返事にしてやる。とくと思い知れ!」

掴み出した腸を投げつけて満足したのだろう膝をついた大和はもういいぞと言わんばかりに首を差し伸べた

「・・・ゆ、雪風・・・待たせたわね。介錯してちょうだい!」

「・・で、では・・ごめんなさい!」

太刀を振り立てた雪風は一太刀で楽にしてやろうと首筋に太刀を打ちおろす

「・・・・・・!!」

ガダルカナルの比叡さんように苦しませてはいけないと撃剣に精進していた雪風の願い通りに刃筋は首に吸いこまれてそのまま首が切断されて大和の生命活動は終えた。

「・・・う・・大和さぁぁぁぁぁぁん!」

残された大和の胴に縋って泣き崩れる雪風に止めをさそうとヘル猫が接近して機銃掃射してきた。

「く・・貴様達に大和さんの首は渡さん!」

正気に戻った雪風は少し前に転がっていた大和の生首を持つと転覆沈没しようとしている中央に戻るのはよして艦首の方に向かって走り出した。

「大和さん、雪風に力をお与えください。やぁぁぁぁ!」

意を決した雪風は大和の首を抱えたまま海に飛び込んだ。

「ヤツを撃ち殺せ!」

「バカな事はするな・・・勝負は着いたんだ。無駄な殺生はするな」

「離してくださいよ。イントレピッド姉様!」

イントレピッド達が揉み合ってるのをチャンスだと思った雪風は立ち泳ぎで、自分自身である駆逐艦雪風に近づいて飛び上がった。漸くにして本体に飛び乗った雪風の顔に爆風の熱気が襲ってきた。雪風がその方向を向くと黒いきのこ雲が破片を撒き散らしながら上がっているのを見た。14時23分頃の時でした

「大和さん、見事な最後にございました!初霜、冬月、大和長官は見事な最後を遂げられた!今より生存者を救出して佐世保へ引き上げる!」

「は、はい」

「わかったぞ!」

海に漂う大和・矢矧・浜風の生存者を救出していた16時39分、連合艦隊司令部より作戦中止命令が届いた

「初霜さん、冬月、今残ってる燃料でどこまでいけるかな?」

「佐世保までならいけるぞ。ただ、まごまごしていたら潜水艦にやられてしまうぞ!」

「霞さんと磯風は連れていけない・・・という事ですね」

「あ、ああ・・・涼月は奴に二度目の幸運があることを祈ろう。わかったな冬月!」

「は、はい」

冬月を警戒用に残した雪風と初霜は行き足が止まってしまった2隻に近づく

「霞、待たせたな。残念だが佐世保に連れて帰ることは無理だよ・・・」

傷口を抑えた霞が呻く

「・・・でしょうね。初霜、生存者と御真影はあんたに任せるから私を早く朝潮や満潮のところに送って頂戴ね!」

「ああ・・わかったよ」

暮れていく夕日を眺めながら南無阿弥陀仏と唱える霞の首筋に太刀を降り下ろす初霜を見て雪風が呟く

「磯風・・霞さんは朝潮さん達のところに逝ったよ・・・・」

「だろうな・・・もうこれまでだ。私を・・早く浦風や浜風のところに送ってくれ!」

「そうね・・磯風、御免!」

どうしたと聞き返す雪風はさっき大和を介錯した時に使った太刀はその場に捨ててきたと答えた。

「全くしょうがないな。いいよ、拳銃で私の留めを刺しても・・」

「御免なさいね、磯風、生存者と御真影は私が責任をもって守るよ」

「そのように願います!」

陛下がいる宮城に向かって一礼した磯風に雪風は拳銃を向ける

「いいかな、磯風?」

「いいぞ、さあ、早く陽炎姉さんのところへ!」

銃声が響いた。愛する妹を撃って嗚咽する雪風に初霜が近づいて指示してくれと尋ねた。我に返った雪風は命令した

「生存者を収容後、私・初霜・冬月は佐世保に転進。涼月は連絡が取れ次第、佐世保に向かうか内地のいずれかに擱座するよう命じる!」

「姉さんには連絡は取らないのですか?」

抗議する涼月に見兼ねた初霜がいい加減にしろと言わんばかりにビンタした

「ここで通信を出したら潜水艦に探知されて奇襲されるぞ、水探が破損した状態の我々では防げないぞ」

「・・・わかりました。司令に従います」

生存者を救出した3隻は残す形になった涼月の無事を祈りながら佐世保に引き上げた。

「涼月、見えました。右弦、大傾斜してます!」

「わかりました。冬月、行ってやりなさい!」

「は、はい!冬月参ります」

8日午後2時、ようやくに引き上げてきた涼月を病室に収容した3人は、佐世保の長である敷島に戦闘の一部始終を報告した。

「・・・・そうか、大和は将としての最後を迎えたということか?」

「はい・・敷島大姉様」

優しい三笠と違い、厳しめな敷島は答えた

「・・・雪風、よくやった。貴様の思いと忠義、我らは勿論、東京に居られる鈴木・米内提督に伝わったと思う。かって帝国を護った者として三笠に替わって貴様に感謝するぞ」

大和首を受け取った敷島は上座より頭を下げて感謝する。彼女は涙を堪えていたが周りにいる隼鷹達佐世保の在泊艦艇は皆涙した。

皆が見守る中、大和の首供養を終えた敷島に隼鷹が提案した。

「大姉様、大和の首を如何するおつもりですか?」

「首か?三笠のところに持っていき埋葬してやろうと思うが、何か?」

敷島に問われて戸惑う隼鷹は提案した。

「このままに葬っては、帝国が敗れた敵の手に首が渡った時に大和の首が辱しめられるかも知れませぬ。それは我らが屈辱…」

「なら…どうする?」

「はい、私に考えがあります。大和の首を砕き我らが腹に納めとうございます!」

「骨酒をしたいというのか?貴様は」

「はい…敷島大姉様是非に!三笠大姉様から責めがありましたら私が腹を切り詫びる覚悟にございます!」


昨年の末の負傷以来、酒に溺れて腑抜けになり果てたと思われていた隼鷹の本気を知った敷島は答えた。

「私の責任で大和の首を我々の腹に行う。三笠には私から伝えよう」

「ありがとうございます。大姉様・・・雪風、早速に用意を!」

「はい」

次の日、病人である冬月を含めた九州付近に退避していた艦艇が佐世保鎮守府に集まった。皆が集まったことを伝えられた敷島は皆に続ける

「只今より大和の供養を行う。飲めないものは遠慮することはないから申し出よ」

誰も顔を上げるものはいなかった。隼鷹が敷島に言う

「大姉様、大和の覚悟は皆が知るところ。誰も飲まないものはいませぬ」

「そうか・・皆も同意してくれるか?雪風、始めてくれ!」

雪風の手で遺灰が大杯に注がれた清酒に注がれた、杯を受け取った敷島は両手で捧げて大和の霊に話しかける


「大和よ、艦隊決戦で最期を遂げられずさぞ無念であろう。せめて我が腹の中で往生するがよい!」

敷島に続き隼鷹、雪風、初霜、冬月、雑役船までもが集まって飲み干した後、雪風が申し出た。

「敷島大姉様、三笠大姉様への申し開きは私が行いとうございます」

「貴様がやるのか?」

「はい!」

雪風の気持ちを受け止めた敷島は貴様に任せると言って万が一の時は私の名を出しても構わんと告げた。

一月後、初霜や酒匂と共に舞鶴に退避と決まった雪風が今度こそ最期かもしれないと思い三笠の隠宅を訪ねた。

三笠と長門に面会した雪風は大和の最期の戦闘の始末を語った。

「・・そうか、大和は恨みを撒き散らして果てたのか?」

「はい・・・・」

「雪風、貴様も開戦より第一線で命を張り続けた古兵、何故、大和に綺麗に死なせてやらなかったのだ?」

長門に責められた雪風は頭を下げて謝ったがこう言い返した

「長門姉様の言う事はもっともですが。最後の望みを踏みにじられた大和長官の無念は我らが無念でもありますので敢えて止めませんでした!」

「しかしだな!」

「いえ、姉様のお言葉でもこれだけは聞けませぬ!」

「き、貴様ぁ!」

反抗する雪風に思い知らせてやると腕を振り上げる長門を三笠が一喝する

「おやめなさい!長門!」

「大姉様・・なぜに!」

「おやめなさい!先ずは彼女の言い分を聞いてやるのが先決でございます。雪風、米国艦隊は戦艦で正面対決を望んだのは間違い無いのですね」

「はい、これをご覧ください」

雪風は懐から短信を取り出す。そこには英語でこう記してあった

「ほお、敵はニューメキシコ・コロラド以下7隻の戦艦で勝負を挑むと誓ったのですか?」

「はい、私達も大和長官に最後の働きをさせてやりたいと全滅を覚悟してたのですが、連中・・・いや空母部隊はそれを違えてきた上に、我らが死に行く様を偵察機にて撮影してきたのです!」

「・・・撮影とな!?」

驚く三笠。雪風は悔し涙を浮かべながらこの折のことを話す。

「・・・雪風、それが全てでしょうか?」

上座で話を聞く三笠が尋ねる。雪風は、はいと答えた。

「・・・大和の思いは理解しました。しかし恨みを残して果てたという行為を許すわけには参りませぬ!」

「何と・・大姉様、葬いはしないと申すのですか?・・それはあんまりです!」

激昂した雪風が三笠に殴りかかろうとする。長門が止めた

「雪風止めろ!御前であるぞ!」

「しかし・・・」

「長門、雪風を離しなさい!」

長門に下がらせた三笠は雪風の前に座って言った」

「あなた・・いえ先の戦いで死んだ磯風や朝霜たちの気が私を殴ることで済むのなら構うことはありませぬ。私を殴りなさい!」

三笠の気迫に圧倒されたのか後ずさりする雪風、それを見た雪風は殴らないのかと挑発するように尋ねる。圧倒された雪風は申し訳ありませぬと叫んで泣き伏した。

「そうですか・・雪風、気が済むまで泣くがいいです」

「はい、大姉様・・・・」

三笠の胸で泣き腫らした雪風に三笠が訪ねる

「・・・佐世保に持ち帰りました大和の首はどうなさいましたか?」

「・・敵の手に渡ってはどうしようもないと思い・・・敷島大姉様の命令で骨酒にいたしました・・・」

「さようですか・・・敷島姉様の指示がありましたか?」

「申し訳ありません、大姉様」

三笠に断らなかったこと、敷島に恥をかかせたことを詫びる雪風に三笠が答えた。

「妥当な措置にございます。大和は貴方達の中で往生したのでございますね」

「はい・・・」

「そうですか・・・大和の供養は貴方達に任せます」

「ありがとうございます。大姉様」

雪風が佐世保は戻った。三笠は長門に尋ねる

「長門、私の措置は間違ってますでしょうか?」

「いえ、妥当な線かと思います。大和が我々と帝国に恨みを残すことはあるまいでしょう。ただ・・・」

「ただ・・・何でしょうか?」

「艦隊決戦の約を違えた米国海軍での恨みは残るかもしれません・・・・」

「そうかもしれませんが・・・それは我々の知るところではございまぬ。せめて彼らが謙虚に約を違えたことを謝るのなら事は済むかもしれません」

「はい、そう願いたいですね」

それから4ヶ月後の8月15日正午、三笠は横須賀鎮守府の居所で終戦のお言葉を聞いた。陛下の意思を受け取った三笠は長門達に
即時戦闘行為を中止するようにと伝えた後、大和の霊に話しかける

「大和、貴女を許さない私を非常だとお怒りのことだと思ってる私の繰り言をお聞きください。

『貴方の一生は決して無駄だったわけではない。貴方と武蔵が死ぬ事で海軍は終戦に向けての意思統一ができた。貴女達でなくてはできないことを貴女はした。偉大なことです。私達が40年前対馬沖で戦った以上のことを貴女はやったのだ』

その気持ちだけは受け取ってください」

頭を下げる三笠の前に大和と武蔵の霊体が現れた。驚く三笠に大和が話しかける

「只今の言葉で帝国に対する恨みは捨てました・・・が、約を違えた米国への怨みはまだ終わってません」

「何と・・・その私の顔でその怨みを捨てていただけませんでしょうか?」

「言え、それはできません。ただある事をしていただけたら、怨みを捨ててもよろしゅうございます」

その事はと尋ねる三笠に大和が答える

「はい、私達二人相手に米国のアイオワ型が勝負を挑む事、それだけです!」

「武蔵、貴女も同じ考えですか?」

長門達の報告で武蔵は全てを受け入れて死んだと教えられた三笠が尋ねる。武蔵が答える

「はい、陛下と国民の期待に応えられなかったことについては言い訳は申しませぬ。ただ私達が最強の戦艦だということを艦娘達に証明したいのです。私達の望みはただそれだけです」

「そうですか・・・その言葉、米国艦隊に伝えてもよろしいでしょうか?」

「よろしくお願いします!」

「ヴァルハラで貴様達の挑戦を受けて立つとお伝えください!」

二人は消えた。それから5年が経った。生き残りの者達の死をかけた折檻で生きながらえる事はできたが、仲間を失い一人ぼっちで細々と廃屋に生きる三笠の元に2隻の米国艦娘が訪ねてきた

「ミカサはおられますでしょうか?」

「私が三笠にございます。貴方方はどなたでしょうか?」

「米国海軍軍艦・ミズーリにございます」

「同じくミッドウェイにございます」

自己紹介を終えた二人を客間に案内する二人に三笠が茶菓子を用意した

「手元不如意ですので、このような物しか用意できませぬがお召し上がりください」

「いえ、お構いなく・・・・」

「これがJAPANのグリーンティーとスイーツでございますか・・・」

見慣れぬ茶菓子より正座で居ることが難儀でたまらない二人に三笠が尋ねる

「あの・・その姿勢が苦しいのなら体操座りでも構いませぬよ」

「よろしいのですか・・・」

ミニスカで来たことを恥ずかしがる二人は三笠に尋ねる

「心配なさる事はありません。見なかったことにしますので・・」

体育座りして少し楽になった二人は三笠にやってほしいことがあると頼んだ。

「何と!大和の亡霊が現れたとな・・・」

朝鮮半島に展開する国連軍を支援するために南シナ海を夜間航行する艦船の前に大和の亡霊が現れて色々と恨み言を言って士気が下がって困ると訴えるミズーリに三笠が答える

「・・・なるほど、5年前大兵力と最新技術を持って我々『思い上がったジャップ』を完全に破壊した最強海軍でも一隻の亡霊には叶わぬと言う訳ですか?これは愉快!」

ほほほと笑う三笠に恥ずかしさの余りに殴りかかろうとするミッドウェイを制止したミズーリが懐より信書を出して再度願い出た

「・・・コンスティテューション様の願いとあらば大和のレクエイムを引き受けないわけにはありません。ですが、貴女方も少しは己の行いを反省して謙虚になさった方がよろしいかと思います・・・・400年前にキリスト教の布教にやってきたフランシスコ・ザビエル師でも日本の民を理解しようとなさったものですよ・・・」

と申し出を受けると約束したものの『あんた達は民主主義だの自由だのと抜かすがその実は400年前の人間にも劣る野蛮人だよ』と茶化す三笠の言葉に恥ずかしくなり体を震わせながら話を聞く二人に三笠は言う。

「ここでおじゃべりをしてもキリがございません。やぐらに参りましょう?」

「ヤグラ?」

「はい、霊の住処にございます。鎮魂をするのはそこまで行かなくてはなりませぬ」

裏山にある「やぐら」に入る3人、蝋燭に火をつけて進む三笠にミッドウェイが話しかける。

「ミカサ、ライトは使わないのですか?」

「ここは霊の領域にございます。そのようなモノを使うのは霊への無礼となります。辛抱されるように・・・」

「ミッドウェイ、ミカサの言う通りにしなさい!」

暗くてジメジメするケイブに不平不満なミッドウェイを言い聞かせるミズーリと三笠は最深部に辿り着いた。

「ここが大和達の墓所にございます」

墓石を指差しながら三笠は二人に説明した。説明を終えた三笠は今から霊を呼び出しますので正座してお迎えするようにと告げた。

「ミカサ、正座ですか?」

「・・・ミッドウェイ、ミカサの言う通りしなさい!」

正座して霊を待つ3人の前に、それは現れた。

「ワレをヨビダシタモノは誰ダ?」

生首を抱えた大和であったモノが現れた。思わず後ずさりする二人に対して三笠は毅然とした態度で答える。

「私でございますよ。大和さん・・・・」

「ダイネエサマなのか?ワレをヨビダシタものは?ナニがタメに?」

大和であったモノの生首が飛んで来て三笠に話しかけた。三笠は答えた

「米海軍の連中があなたの悪さに懲りて私にあなたを説き伏せるように依頼してきたのです。米国も我々を絶滅させる意思は捨てたようです。何とか悪さをしないようにしていただけませんか?」

「ナルホド・・・ココでオビえているバカモノのノゾミならキクみみハモタぬガ、ホカならぬダイネエサマのタノミならキキいれヌわけにはイカヌな・・・」

「そうですか・・・ありがとう!でも只では貴女もやりたくないでしょう?貴女の望みは何ですか?」

大和であったモノは答える

「ワガノゾミは・・・アイオワヨンシマイのイノチ!ワレとムサシはあのヨンシマイとカッセンしてショウリをオサめてワレラこそがサイキョウのセンカンであることをショウメイしたい!」

「なるほど左様ですか・・だそうですよ。アイオワさん如何なさいますか?」

三笠がニヤニヤしながら問いかける。すっかり腰が抜けてアイオワは頭を擦り付けてそれだけは勘弁と言わんばかりに土下座した。

(続く)

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