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2019年01月16日23:36

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宝塚宙組公園「異人たちのルネサンス」を見てきました。

【感想】ルネサンスが出てきてないような?

年末、ばたばたしていてすっかり感想を書かずにいたのですが、公演は見ております!
なかなか楽しく観劇して参りました。

主人公はレオナルド・ダ・ヴィンチです。天才レオナルドの青年期が描かれます。
彼は両親の愛を知らずに育ったのですが、小さい頃、隣の修道院にいた少女カテリーナのことが忘れられません。ある日突然、神父グイドと共に消えてしまった彼女は、白い鳥は神の使いだと信じていました。空を自由に飛ぶ鳥に憧れるレオナルドは、密かに飛ぶ技術の研究をしながら、それがいつかカテリーナに繋がるものと夢見ているようです。
 一方、フィレンツェではメディチ家の台頭をよく思わないパッツィ家が、バチカンに取り入って勢力を広げようと画策しています。両家の権力争いに巻き込まれ、レオナルドの師匠である画家ヴェロッキオが逮捕されます。パッツィ家に画を納入したことで、メディチ家に恨まれたのです。メディチ家の若き当主ロレンツォは、ヴェロッキオ工房にいたレオナルドの才能を見抜いており、師匠の釈放を交換条件に、レオナルドに自邸で画を描かせる約束を取り付けるつもりでした。そのことを分かった上でメディチ家に乗り込んだレオナルドは、今はロレンツォの愛人として廷内にいるカテリーナに再会します。
 美術品を愛好するロレンツォは美しいカテリーナを溺愛しており、レオナルドがカテリーナに惹かれているのを面白そうに見つめながら、カテリーナをモデルにして最高の画を描くよう指示するのでした。

 メディチ家の当主の弟ジュリアーノは、権力をほしいままにしている兄に反感を募らせていました。彼はカテリーナに惹かれていたのです。カテリーナは、今はパッツィ家のために動いている神父グイドに操られており、ジュリアーノの気を引くよう言われ、苦しみます。神父の言うことを聞かなければ神の罰が下ると言われ、いつも悲しい顔をしているカテリーナを、レオナルドは祭りの日に連れ出して自分の研究室(?)に案内します。そこには飛ぶための羽の試作品がありました。メディチ家から逃げ出し、自由になることを夢見てもいいのだと力づけられたカテリーナは、初めて生きる望みをかすかに見いだすのでした。
 カテリーナとレオナルドの関わりに気づいていながら、ロレンツォはレオナルドに早く画を仕上げるよう催促します。画の主題を尋ねられたレオナルドは、「聖女ではない、生身の女性としてのマリア像」だと答えます。
 ジュリアーノはパッツィ家から唆され、兄に反旗を翻せばカテリーナをも手に入れられると夢見るのですが、レオナルドとカテリーナの駆け落ちの日に、自分のために彼女が抜け出して来たと思い込まされ、追ってきた兄と正面衝突します。パッツィ家の陰謀を見抜いている兄は弟と剣を交えた結果勝利し、弟とカテリーナはその戦いの中で死亡します。彼女を助けるために駆けつけたレオナルドの腕の中で、カテリーナは彼への愛と感謝を口にして死んで行きました。
 カテリーナを失ったレオナルドは、ロレンツォに約束の画を残し、邸を出て行くというのがラストです。彼の残した画というのが、現在のモナリザということになっています。

 まず、見ていて関心したのは、レオナルドのビジュアルです。鬘のフィッティングと完成度がすごい。立体的なウエーブが不自然でなく、きれいに頭に載っていて、本当に少女漫画の中の美青年という風情でした。

 内容としては、ずっとカテリーナがオドオドしていて、あまりにも萎縮しているのが気になりました。小さい頃から神父にされていた「罰」というのは性的虐待か?という雰囲気が少しあります。修道女として昼間は神の教えを聞いているのに、夜に神父から性的虐待を受けて、その後権力者に妾奉公させられるのが神のご意志だと言い含められているというのなら本当に気の毒だし、オドオドしていて道理なのですが、彼女の心の傷が大きすぎて、レオナルドと恋愛するまでにリハビリが必要というか、ちょっとこの話の中では無理なんじゃないか、という感じがありました。二人の気持ちが高まっていくことに説得力を持たせるのが難しいくらい、カテリーナの受けている重圧が大きすぎる気がします。
 加えて、彼女のパトロン(?)であるメディチ家のロレンツォですが。脚本上、勿体ないなあと思ったのは、この人、ちょっと器が小さい人に見えます。ヨーロッパの経済を握って、何でも手に入れられる男が、超一流の美術品を収集するというのは悪くない発想です。自身のための「生きる美術品」としてカテリーナを、美術品製造者としてレオナルドを手元に置き、カテリーナをモデルにしてもいいよ、と言っているのに、「手を出したら許さない」みたいなことを言うシーンがあるんです。え〜、それでいい画が描けるなら、手を出してみろよと言ってみるくらいの大きさがあった方が、絶対かっこよかったし、説得力もあったと思うのですが。役者さんは貴公子の風情のある人で、よく合っていたと思うので、なおさら残念でした。

 天才画家のレオナルドが、繊細で、内向的な変わり者として出てくるのが少し不思議でした。レオナルドという画だけではなく世界全体に対しての探究心にとりつかれている人間というには、傷つきやすくて、脆さを抱えた青年に見えました。

 ラストにモナリザを持ってくるため仕方ないことだったのだと思いますが、カテリーナがレオナルドと駆け落ちしようとした日に着ている服が、それまでと打って変わって喪服なんです。というか、つまり、あのモナリザの黒衣で、髪型も服装もそれまでの装飾的なものと全く違うのが違和感でした。そこまでしていても、カテリーナ役の人がとても初々しくかわいらしいので、モナリザとは外見が、特に年齢が合いません。
 そもそも、駆け落ちの日になぜ急に黒衣?とか、変わりすぎて疑われるだろう!とか、色々突っ込みたくなってしまいますが。

 モナリザが「聖女ではない、生身の女性としてのマリア」であるという解釈は、実際にレオナルドが無神論者であったことを考えれば、それなりの説得力はあると思います。ただ、この話のように幼なじみの恋人とようやく再会して、それなのに失って…という一連の流れから、あのモナリザ像に行き着くのは苦しいような気がしました。あの謎めいた、老成した感すらある女性の微笑みが、失った恋人の本質だったというのはどうなんでしょうか。
それならば嫋やかで美しい、「岩窟の聖母」のマリアの姿の方が、まだ恋人の面影を重ねるにはふさわしいような気がします。

そんなこんなで、見終わってみると…え?ルネサンスってどこへ?って感じです。画家はレオナルドしか出てこないですからね!でも、なかなか楽しかったです。

史実のレオナルドは、若いとき非常に美青年だったとも言われているので、そういう意味ではOKだったと思います!

サライという少年(これも一応史実)の扱いがちょっと乱暴だったなあと思うのですが(二人の駆け落ち場所をあっさりパッツィ家に教えてしまい、しかもそれをすぐレオナルドに言いに行くって…変わり身早すぎです)、全体的には豪華なコスチュームと、イタリアの歴史を背景にした大きな舞台が楽しめました。機会がありましたら皆様もDVDでご覧下さい(もう公演が終わっているので)。



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