ありがとう！ヴェルトライゼンデ！

今日も日記を書いてみる。
いや、書かざるを得ない。

昨夜の今頃は、私がダービーに出る訳でもないのに不安と緊張でなかなか寝付けなかった。

そして、当日。いざレースのファンファーレが鳴ると私の手の中にはじんわりと汗が滲んでいた。その汗を何度も拭き取っても、汗は止まらない。

枠入れが終わり、ゲートが開いた。
コントレイルより先着するには、コントレイルの前に付けなければいけない。私の浅い競馬知識ではそう思っていた。しかし、ヴェルトライゼンデの鞍上池添ジョッキーはコントレイルの真横。いや、やや後ろか。ポジションを取ったその位置はコントレイルをマークする位置だった。

『その位置で大丈夫なのか？』

私の胸の内に潜めていた不安は更に膨れ上がる。

逃げたウインカーネリアンが刻んだ1000ｍのラップは61.7秒。そこにマイラプソディを駆る横山典弘が痺れを切らしたのか、それともコントレイルの脚を封じ込めに来たのか、外から捲り上げてウインカーネリアンの前に立つ。マイラプソディは隊列を引き連れたまま、3コーナーに入った。

ヴェルトライゼンデは相変わらずコントレイルをマークしたまま。隊列は道中のラップを上げながら4コーナーから最後の直線525.9ｍへと突入した。

『瞬発力勝負ならコントレイルには負ける』

それはレース前からわかっていた事。しかし、直線に入るまでヴェルトライゼンデはコントレイルのやや後ろだった。

そして、ヴェルトライゼンデは最後の直線でほんの少し外に膨らんでしまう。その間にマークしていたコントレイルはエンジンを一段階上げていた。

他馬がスパートをかける中、ヴェルトライゼンデが後退していくように見えた。
私はその姿を見て『やはり、府中の硬い高速馬場は合わなかったのか・・・』諦めとデビューから今日までたくさん夢を見させてくれたこの馬に、感謝と労いの気持ちで一杯だった。私はいつの間にかコントレイルに目を向けていた。

颯爽にターフを駆けるその姿はすでにダービー馬の風格を醸し出していた。2番手にはサリオス。『ああ、今年は2強だったか・・・』私はレースが始まる前はサリオスの馬体重536ｋｇがどうしても2400ｍの距離を熟せるとは思えず、評価を下げていた。自分の馬を見る目の無さに呆れてしまう。さて、3番手は・・・。後方で繰り広げられている3着争いに目を向けた。そこには後退していくであろうと思っていたサンデーレーシングの勝負服があった。

ヴェルトライゼンデだ。

『他にサンデーレーシングの馬は出走していただろうか？』

見間違いではないかと思い、頭の中では今日の出走馬にサンデーレーシングの馬がいなかったかをフル回転で確認する作業をしていた。

『間違いない、ヴェルトライゼンデだ』

そう確信した私は、汗でびっしょりと濡れていた手にいつの間にか力が入りヴェルトライゼンデを食い入るように視線を集中させた。

もがいているようには見えない。地面を蹴る脚は、馬体をグイグイと前へ押し出していた。その推進力は、自分より前にいた馬を抜き去り、後方から来る馬を寄せ付けなかった。

中継をしているテレビからは、アナウンサーはもうすぐ無敗の二冠馬が誕生する実況をしている。それよりも私はグイグイと伸びるヴェルトライゼンデに釘付けになっていた。コントレイルがゴール板を過ぎる実況が聞こえた。そのあとすぐに、2強のうちの1頭、サリオスが2番手に入線。そして長くいい脚を使ったヴェルトライゼンデは3番手に入線した。


少し際どい3着で心臓が脈を打つのが分かった。しかし、その心配は杞憂に終わる。

アナウンサー、競馬番組に出ていたタレント達はコントレイルの無敗の二冠の偉業に酔いしれていた。

それよりも私はヴェルトライゼンデが3着に入ってくれた事が何よりも嬉しかった。一変して巻き返してくれた。力を証明してくれた。デビュー前からこの舞台で活躍してくれる夢を叶えてくれた。それだけで十分だった。

これからの事を考えると、楽しみで仕方なかった。

同世代に無敗の二冠馬という強力なライバルが誕生してしまったが、次こそはＧ１というビッグタイトルを掴みとってほしい。そんな事を考えると、私はますます競馬がやめられなくなった。

そして、今日までヴェルトライゼンデやその他の３歳馬、厩舎スタッフの方々、お疲れさまでした。デビューするまで大変だっただろうし、デビューしてからも大変だったはず。これからは秋のクラッシックへと続いていくが、競馬ファンにとってはまた夢が見られる。

競走馬達が競馬場で走り続ける限り、競馬ファンはずっと夢を見続ける事ができる。競馬はギャンブルだけではない。競馬場やその裏で起こるドラマもある。私は競馬のその部分を伝えていきたい。










・・・そんな私はヴェルトライゼンデの複勝でウハウハでした！

わっはっはｗｗ