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2020年02月20日02:17

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「パラサイト半地下の家族」見ました−ネタバレあります−

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「パラサイト半地下の家族」を2月18日に見てきました。アカデミー賞を軒並み受賞したのをTVで見ていて韓国映画にはあまり興味がなかったのですがその独特の文化である「半地下」というのがおもしろそうだったので週末の席取りに劇場へ行ったら優待で見れたので急遽見ることにしました。
半地下というのはビルの地上ギリギリに窓があるような地下室に住む貧困層の住む場所のことを指しているのです。なぜこんなものがあちこちにあるのかというと朝鮮戦争の時期にビルを作る時には防空壕の地下室を作らなければならなかったそうです。その後高度成長でソウルなど大都会に人が集中し住宅が足りず地下室を安い家賃で貸すようになり貧困層がそこに住むようになり政府もそれを黙認してきたんだそうです。
そして今の超格差社会の韓国において貧困層の半地下の家族を主役にした映画がこの「パラサイト」なのです。

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見た感想はおもしろかったです。いろいろ思うところはありますが。
格差社会と貧困層という切り口の映画では日本では「万引家族」が有名ですがこの映画は「万引家族」のような日本映画のこの手の作品にありがちな独特の暗さはなくエンターテイメント作品に徹しているところが良いです。
貧困層の青年ギウが友人のつてで自らを大学生と偽って高台に住むIT企業の経営者の大富豪の娘の家庭教師のバイトを始めるところから始まります。ここから次々と妹、父、母と家族をうまく大富豪の家の使用人として潜り込ませるところはすごくテンポがよくおもしろいです。
そして、富豪一家が旅行に行ってる時に彼らが自分の家のように大邸宅で贅沢三昧をしている夜に事件が起こるのです。
とんとん拍子で大富豪一家を騙していく彼らがその正体がバレることによってドラマが展開することは予想がついていましたが、ここからの超展開は予想を上回るものでした。

−−−−ここからはネタばれありますので−−−−


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彼らが追い出した家政婦がやってきて地下の食糧庫に忘れ物があると。食糧庫の中には大きな地下室がありそこには彼女の夫がいたのです。実はこの家には朝鮮戦争時代に作られた地下防空壕があってその存在は今の持ち主の大富豪は知らなかったのです。前の持ち主の時代から働いている彼女はそれを知っていてこの地下で夫婦で生活していたのです。半地下の主人公一家も大富豪を欺いてそのお金で暮らしている寄生(パラサイト)なのですが、この地下室の夫婦こそまさにパラサイトだったというわけなのです。
主人公一家が自分を追い出したことを知った夫婦は反撃に出て大乱闘が始まります。そこへ急遽旅行から富豪一家が帰ってきて大慌てで主人公一家は夫婦を地下室に閉じ込め家政婦の母親が取り繕いなんとか事なきを得て3人は脱出します。このあたりのばれないように取り繕うコメディタッチの描写は実にエンターテイメントになっていました。
そして、脱出した3人が雨の中に半地下の家に帰ると豪雨のためそこは水没しかかっていたのです。
アカデミー賞関連の番組で実際の韓国の半地下の家を紹介していましたが見てまず思ったのは昨今の台風の豪雨の時にここってどうなるんだろうということでした。それがそのまま映像化されていたというわけです。まさに貧富の格差を表すかのように。
そして晴れた翌日悲劇は起こりました。大富豪は息子のために庭で盛大なパーティを行い、そこに家政婦、運転手、家庭教師として参加する家族。地下に残した夫婦のことが気になるけどなかなか地下に行く機会がありません。そんな中地下室で女が死に狂乱した夫が地下室から出てきます。家庭教師の息子を殴り倒し、包丁を持って娘を刺し、大富豪を殺し、母親に襲い掛かります。父親はその包丁を奪いとって男を殺して逃げていきます。
悲劇的なラストは想像していましたがここまで死人が出るとは思いませんでした。ただ全体的にはエンターテイメントになっていて日本映画の「万引家族」の端々に漂うけだるい暗さとは違って明るいテイストになっていると思います。
エピローグとして殺人を犯した父親は行方不明、妹は死に息子は半地下での生活を続けています。そして時々あの大富豪の家を見に行くのですがその電灯のモールス信号を解明します。それは逃亡したと思われていた父からのサインで父はあの大邸宅の地下室で悲劇があったことを知らずに買った新しい家主にパラサイトして生き続けていたのです。これが防空壕という韓国の特殊事情で現実にできそうだと思わせてしまうところがこの映画の素晴らしいところだと思いました。そして息子はいろいろ考えるのはやめて金持ちになってこの家を買って父を迎えに行くと決意するのです。その場面は少し描かれますがやがて夢オチであることがわかり現実は甘くないというのが作品のテーマになっているような気がするのです。

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映画のパンフレットです。監督のコメント以外はスタッフやキャストのインタビューはほとんど載っておらず映画評論家の文章で埋められています。



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