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2022年06月21日23:42

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ウクライナ

今年3月13日に書いた記事です。
ウクライナ戦争はドイツ・EUの再エネ拡大を加速する
ウクライナ戦争をめぐり、ロシアが報復として「西欧へのガス輸出を停止する可能性」を初めて示唆した。EUには、米国同様ロシアの最も重要な外貨収入源であるガスや原油の輸入を禁止するべきだという意見もある。輸入ガスの55%をロシアに依存するドイツは、禁輸措置ではなく再エネ促進とLNG拡大、輸入先の多角化で対抗する方針だ。
 3月7日、ドイツの市民たちはガソリンスタンドの前を通り過ぎる時に、目をみはった。この日ガソリンと軽油の値段が初めて、リッターあたり2ユーロ(260円・1ユーロ=130円換算)を超えたのだ。ロシアのウクライナ侵攻の影響で、エネルギー供給が滞るという懸念が強まり、原油価格が上昇しているからだ。米国政府は3月8日にロシアからのガスや原油などの輸入禁止を発表した。ロシアは世界有数の化石燃料の輸出国である。英国政府も、今年末までにロシアからのガスの輸入を停止する方針だ。ウクライナ戦争は、世界中のエネルギー市場に大きな影響を与えようとしている。
 最も深刻な打撃が懸念されているのは、私が住んでいるドイツだ。同国のショルツ政権は、「ロシアのガスなどの輸入禁止は、経済活動と市民生活に深刻な影響を与える。ロシアからの輸入量を短期的に代替することは不可能だ」として、米国の禁輸に歩調を合わせなかった。
*ロシアに毎日1300億円のエネルギー代金を払うEU
 ウクライナ政府は、EUに対してロシアからのエネルギーの輸入を停止するよう求めている。EU諸国はロシアと戦争になることを避けるために、ウクライナに戦闘部隊を送ることはできない。「それならば、ロシア経済にとって最も大きな打撃を与えるエネルギー禁輸に踏み切ってくれ」というのが、ウクライナの要求だ。
 東欧の多くの国々が、ウクライナの呼びかけに応じて、ロシアからのガスの輸入をやめている。ラトビアのクリシュヤーニス・カリンシュ首相は3月10日、「我々EU加盟国は、プーチン大統領を和平交渉のテーブルに引き出し、戦争をやめさせるために、ロシアからのエネルギーの輸入停止を決めるべきだ」と訴えている。
 ドイツなどEU加盟国は、毎日ロシアに対して莫大な額のエネルギー代金を支払っている。
 ベルギーのシンクタンク・ブリューゲル研究所のジョバンニ・スグラバッティ研究員は、「ドイツのガス企業はガス代金として、ロシアに1日あたり2億ユーロ(260億円・1ユーロ=130円換算)を払っている。同国は今年2月にロシアに56億ユーロ(7280億円)払った」と主張する。
 同研究所によると、EU加盟国が3月3日にロシアの国営ガス企業ガスプロムに払ったガス代金は、6億6000万ユーロ(858億円)に達する。欧州委員会によると、EU加盟国の企業がガス、原油、石炭などのエネルギー源に対して支払っている代金は、1日あたり約10億ユーロ(1300億円)にのぼる。この資金は、ロシア政府の国庫に入る。
 EUは、ウクライナ政府から、「プーチン大統領の侵略戦争に、間接的に資金を提供している」と批判されても仕方がない。
 一方ウクライナで侵略戦争を続けるロシア政府は、エネルギーを武器として使う可能性をちらつかせた。ドイツのショルツ政権は、2月22日に、ロシアからのガスパイプライン・ノルドストリーム2(NS2)の稼働許可申請に関する手続きを停止した。これを受けて、ロシア政府のアレクサンダー・ノバク副首相は3月8日に、「我々は、すでに稼働しているパイプラインノルドストリーム1(NS1)による西欧へのガス供給を停止する権利を持っている。もっとも、我々はそうした措置を取ると決定したわけではない」と述べた。ロシアが西欧へのガス輸出を止めることにより、制裁措置に報復する可能性を示唆したのは、初めてだ。こうした不穏な発言は、東西冷戦がたけなわだった1970年〜1980年代にも行われたことがない。ソビエト連邦は、冷戦の時代にも忠実に西欧に対してガスを送り続けた。
*EU、ロシアからのガス輸入量を3分の2削減へ
 EUでは、「ガス停止をちらつかせて脅す国から天然資源を買うわけにはいかない」という意見が強まっている。このためEU加盟国は、今年末までにロシアからのガス輸入量を3分の2減らすという方針を打ち出した。EUが輸入するガスの内、約40%はロシア産である。BPの報告書によると、2020年に欧州諸国がロシアからのパイプラインで輸入したガスの量は1677億立方メートルにのぼる。
 EUは、今後米国、カタール、エジプトなどからの液化天然ガス(LNG)の輸入量を増やす他、再生可能エネルギー拡大に拍車をかけること、建物の暖房効率の改善でガス需要を減らすことで、ロシアからのガス輸入量を現在の3分の1に減らすことを目指しているのだ。
 この中でガス輸入量を最も多く削減しなくてはならないのはドイツだ。同国は2020年にロシアから563億立方メートルのガスを買った。これは欧州諸国がロシアから買った量の33.5%にあたり、一国の購入量としては最も多い。二番目に多い国イタリア(197億立方メートル)の約2.9倍だ。
 その理由は、ドイツが物づくり大国であるからだ。ドイツのエネルギー関連研究機関Econtributeによると、2020年のドイツのガス消費量の内、37%が化学、製鉄、セメント、製紙など製造業界で消費されている。これは家庭(31%)、商業・サービス業(13%)、発電(13%)などを大きく上回る。
 ドイツ政府はロシアからの輸入量を減らすための努力を始めてはいるが、その道は険しい。連邦経済気候保護省は3月2日、15億ユーロ(1950億円)を投じて、LNGを買う注文をガス取引企業Trading Hub Europeに出した」と発表した。しかし具体的な調達先はまだ決まっていない。
 ドイツは、先進工業国の中でLNGの陸揚げターミナルを持っていない唯一の国だ。パイプラインで送られてくるロシアのガスの方が、LNGよりも割安だったので、ターミナルを建設する必要に迫られなかったのだ。
ドイツの大手エネ企業RWEとユニパーは、ドイツ政府の資金援助を得て、北海に面したヴィルヘルムスハーフェンとブルンスビュッテルにLNGの陸揚げターミナルを建設することを決めたが、完成するには少なくとも3年はかかる見通しだ。
 ロベルト・ハーベック連邦経済気候保護大臣は、「万一ロシアからのガスが止まっても、今年の冬は乗り切れる。しかし2022〜2023年の冬については、ロシアからのガス輸入量を完全に代替する目途は立っていない」と語っている。
*エネルギー安全保障のために再エネ拡大を加速
 このため、ドイツ政府はロシアからのガス輸入量を減らすために、再生可能エネルギーの拡大などに拍車をかける。クリスティアン・リントナー連邦財務大臣は、3月7日、ドイツの公共放送連盟(ARD)とのインタビューで、2026年までにエネルギー転換に投じる予算を約82%増やして約2000億ユーロ(約26兆円)にすることを明らかにした。連邦政府は、これまで予定されていた気候保護・エネルギー転換基金の予算額1100億ユーロ(14兆3000億円)を、900億ユーロ増やす。
 大臣によると、この予算はEV充電器の増設、グリーン水素製造のための水電解施設の建設、再生可能エネルギー促進賦課金の廃止による市民の負担の軽減などのために使われる。また化学、鉄鋼、セメント業界などが製造工程で必要とするエネルギー源を化石燃料から水素や再エネ電力に切り替えるための費用も、この基金から捻出される。製造工程の非炭素化は、連邦政府と製造業界がCCfD(炭素差額調整契約)を締結し、メーカーの非炭素化費用とCO2取引量市場でのCO2の価格の差額を、政府が助成することで行われる見通しだ。
 これまでドイツは、地球温暖化と気候変動に歯止めをかけるために再生可能エネルギーの拡大を急いできた。ロシアのウクライナ侵攻によって、この目標にエネルギーの安定供給を確保するという課題も加わった。グリーンエネルギーの比率を増やせば、ロシアからの化石燃料を買う必要性が減るからだ。
 「ドイツは、ロシアからのガスの輸入を禁止に対応できる」という意見もある。同国のエネルギー関連研究機関Econtributeは、3月8日に公表した報告書の中で、「ドイツがロシアからのガス、原油、石炭の輸入を完全にやめた場合、経済への影響は大きい。しかし他国からの輸入量を増やし、産業界が脱化石燃料の努力を強めれば、乗り切ることは可能だ。その場合、今年の国内総生産(GDP)の減少率は前年比で0.5%〜3%に留まる。国民一人あたりのGDPは100〜1000ユーロ減る。これは2020年のコロナ・パンデミックによるGDP減少率(4.5%)よりも少ない」と主張している。
 いずれにせよ、ウクライナ戦争がドイツとEUの脱化石燃料の動きを飛躍的に加速することだけは間違いないようだ。

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