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2021年07月27日02:20

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さらば、役員専用フロア


 欧州最大の金融センター・ロンドンの銀行本店では、最高経営責任者(CEO)らが40階以上のフロアに広いオフィスを与えられ、毎日テムズ川やシティーの雑踏を見下ろしながら働いている。摩天楼からの絶景は、毎年数億円にのぼる給料とともに、彼らの地位を誇示するステータス・シンボルだ。
 だが2020年春以降のパンデミックのために多くの銀行が大半の行員を自宅で働かせた結果、業務に支障は出なかった。このため多くの銀行が「オフィス」についての考え方を見直し始めた。そうした中、今年4月に大手銀行HSBCは、ロンドンのカナリー・ウォーフ地区の高層ビルの42階にある、取締役専用フロアを廃止することを決めた。取締役たちは、2階下の大部屋に引っ越す。この部屋には決まったデスクはない。彼らは他の行員たちと同じく、空いているデスクにノートブックPCをつないで、仕事をする。HSBCでは、この制度を、「ホット・デスク」と呼んでいる。
 HSBCは、今後数年間をかけて23万5000人の行員数を15%減らす他、オフィスの賃貸料など不動産にかかる費用を40%カットする方針を明らかにしている。
 去年3月以来、多くの行員が自宅で働いているため、オフィスの空席が多いことも、今回の決定の一因となった。
 また英国の不動産融資金庫ネーションワイドは、1万3000人の行員に、週の内数日間はテレワークを許可するハイブリッド型勤務制度を導入した。またレボリューションというネット銀行は、2000人の行員の内テレワーク希望者には、原則として自宅で働くことを許可している他、1年あたり60日間まで外国で働くことも許可している。正に「革命的」な勤務モデルだ。
 ドイツでも似たような動きがある。ドイツのDeka銀行の取締役会は、2020年春のロックダウンの経験から、「将来は社員の内約30%にテレワークを行わせる」という方針を打ち出した。このため同行は、2022年からフランクフルトの新しい本社ビルで賃貸するオフィス・スペースの面積を、コロナ前の計画に比べて25%減らした。
 米国の投資銀行ゴールドマン・サックスも、ニューヨークの本社ビルの42階にあった取締役専用フロアを廃止し、役員に12階に引っ越すよう命じた。同社では、取締役とそれ以外の行員たちの間のコミュニケーションが改善されたという声が聞かれる。
 欧米の銀行業界では、取締役が「雲の上の人」だった時代が過去の物になりつつある。
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)
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