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2021年02月28日15:56

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イスラム教過激派の脅威

2015年に発表した記事です。


 イスラム教寺院の尖塔に取り付けられたスピーカーから、市民に祈りの時間が来たことを知らせる声が、響き渡る。私は2015年の元日を、トルコのイスタンブールで迎えた。大晦日から元日にかけて、同市は激しい嵐に見舞われた。車のドアを開けると、ひとりでに閉まるほどの強風だった。普段は静かなボスポラス海峡では、白い波頭が荒れ狂い、今にも海水が岸壁を乗り越えそうだった。トルコには木造建築が多いが、吹きすさぶ風のために建物全体がミシミシと揺れた。「元日からこの天気では、今年の世界は荒れ模様になるのではないか」と思った。
 いやな予感は的中した。1月7日にはイスラム過激派のテロリストがパリ市内の風刺新聞「シャルリ・エブド」の編集部に乗り込んで、イラストレーターやジャーナリストら8人を射殺。彼らと連携したテロリストは、スーパーマーケットでユダヤ人の買い物客ら4人を撃ち殺した。この事件は、欧州の言論機関に対する攻撃としては最悪のテロであり、多くの市民を不安に陥れた。ベルギーでもテロリスト2人が警官隊との銃撃戦で死亡した。
 イスラム過激派の刃は、我が国にも向けられた。テロ組織「イスラム国(IS)」は、2人の日本人を人質に取り、日本政府やヨルダン政府に対し2億ドルの身代金支払いや、ヨルダンが拘束していたテロリストの釈放を要求した。ISは、要求が聞き入れないと判断すると、2人を殺害した。いたましい、最悪の結果である。犠牲者のご冥福をお祈りする。
 イスラム過激派の伸張は、中東やアフリカでの国家崩壊と密接な関係がある。米軍のイラク侵攻、シリアやリビアの内戦、エジプトの混乱によって、第二次世界大戦後のアラブ諸国の秩序が崩れたことが、国境を越えたテロリズムを助長している。今後、イスラム過激派は中東情勢の台風の目となるだろう。英独仏などで生まれた移民二世の中には、過激派の思想にかぶれてシリアに渡り、内戦に参加する者が増えている。その数は約3000人にのぼる。彼らがISの命令で西欧に戻り、無差別テロに走る危険もある。
 ISは、日本を「米国の対テロ戦争を支援する有志国連合の一員」と見なしている。日本政府や企業は、中東やアフリカ、欧州に駐在する日本人の安全確保へ向けて、対策を強化する必要があるだろう。
 


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