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2020年10月28日01:56

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サイレン

サイレン訓練・不発

 9月に入ってからドイツ連邦政府はネットや新聞などで「9月10日・午前11時に全国一斉にサイレンを鳴らす訓練を行います」と広報を始めた。これは自然災害、化学工場の事故、大規模テロ、広域停電、外国軍による侵略などの際に、市民に異変を伝えるためのもので、一斉訓練は約30年ぶりである。市民はサイレンを聞いたら、テレビやラジオ、インターネットで情報収集をするように求められた。
 さて9月10日の11時。私はサイレンを聞くために窓を開けていたのだが、何も聞こえない。テレビをつけても、特別な放送は行われていなかった。私の知人の間にも、マンハイムなど一部の町を除くと、サイレンを聞いた人はほとんどいなかった。
 連邦政府・内務省の「市民防護局」は技術的な問題のために、サイレンが大半の地域で鳴らなかったことを明らかにし、「訓練は失敗だった」と認めた。また政府は11時に特定のアプリをダウンロードしているスマートフォンに警報を送る予定だったが、信号が送られたのは予定の時刻を20分経過してからだった。
 政府は今回の失敗の教訓を生かし、今後年に1度はサイレンを使った訓練を実施する方針だ。
 ドイツ人の友人によると、1960年代つまり東西冷戦がたけなわの時代の西ドイツでは、このような訓練が毎月行われていた。訓練は学校での授業中に行われた。サイレンの音色は3種類あり、「空襲警報」、「警報解除」などの音を覚えさせられた。当時はワルシャワ条約機構軍と北大西洋条約機構(NATO)が軍事衝突する危険が常にあった。万一戦端が開かれた場合、東と西に分割されたドイツは、最初の激戦場になるはずだった。核兵器や化学兵器が使われる可能性もあった。
 それにしてもドイツ政府は、なぜこのような訓練を30年ぶりに復活させるのだろうか。2016年に市民防護局は、全ての家庭に対し「最低限10日分の食料と水を備蓄するように」と勧告した。その理由は、外国のサイバー攻撃などにより電力と水の供給が停止した場合、連邦軍が全国で水や食料を配給できるまでには10日間かかるからだ。
 2014年にロシアのプーチン政権は戦闘部隊をクリミア半島に送り、強制的に併合したほか、ウクライナ内戦にも介入している。つまりロシアが強権的な性格を強めていることから、ドイツ政府は国民に「有事のための備え」をするように要請しているのだ。「新冷戦」の時代がやってきた。きな臭い世の中である。

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