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2020年08月09日19:11

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Corona

ドイツ人たちは8年前にコロナ危機を想定していた(1)

 ドイツでは、なぜ他の欧州諸国よりもコロナ・パンデミックに対する備えが比較的整っていたのか。それは、ドイツ連邦政府とウイルス学者たちが、2012年つまり新型コロナウイルスによるパンデミックが起きる8年前に、ある研究報告書の中で、未知のコロナウイルスにより多数の死者が出る事態を想定していたからだ。彼らは、最悪のシナリオの被害想定を文書として公表し、地方自治体や医療界に準備を整えるよう要請していた。
 この文書は、ドイツの国立感染症研究機関ロベルト・コッホ研究所(RKI)や、連邦市民保護防災局などが2012年12月10日に共同で作成し、翌年1月3日に連邦議会に提出したもので、「2012年防災計画のためのリスク分析報告書」という題名が付けられている。
 このリスク分析は、連邦内務省が科学者など専門家に依頼して定期的に実施している。自然災害や無差別テロなどの非常事態が起きた場合に、人命や社会のインフラなどにどれだけ被害が出るかを想定し、損害を最小限にするために事前に対策を取ることを目的としている。シナリオの作成の際には、様々な悪条件が重なって被害が極端に大きくなる、最悪の事態(ワーストケース・シナリオ)が使われる。
 連邦政府はこの報告書の中で、ドイツに大きな被害をもたらす架空のシナリオとして、大規模な洪水と並んで、「変種SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスによるパンデミック」を取り上げている。
 私はこの文書を読んで、驚いた。8年前に想定されたシナリオとは思えないほど、今年世界を襲ったパンデミックに似た部分があるからだ。勿論、当時の想定が現実と異なる部分は多い。たとえば今年前半のドイツでは、シナリオの想定ほど事態が悪化しなかった。
 だがRKIの文書には、イタリアやフランス、スペインですでに現実化した状況を想起させる部分もある。「8年前に執筆者たちがタイムマシーンに乗って2020年の世界を訪れ、イタリアやスペインで起きた悲劇を観察して描写したのではないか」という錯覚を持つほど、現実に似たシナリオを想定している。
 RKIがシナリオに使ったのは、2002年に香港、中国、カナダで広がったSARSウイルスに似た、架空のウイルスだ。(続く)
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de


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