欧州コロナ通信 第262回 2020年6月2日
米国では死者数が10万人を超え、新型コロナウイルスによる被害が世界で最も深刻化している。
失業者数は約4000万人にのぼる。
それに加えてジョージ・フロイド問題。
この大統領には、荷が重すぎるだろう。
もしも11月に大統領選が行われるならば、トランプが敗北する可能性が強いと思う。
彼の失策の結果は、日一日と重大になりつつある。
私は米国に住んでいた時から、「社会保障制度をおろそかにする国は、あえて所得格差の拡大を許容している」として批判的だった。
1980年代のニューヨークやワシントンの富裕層と低所得層の住む地域の格差は、ドイツの町とは比較的ないほど大きかった。
米国では、格差をあえて許容することがこの国を強くしてきた。世界中のベスト・アンド・ブライテストがこの国に集まってきた。成功者には、ドイツでは想像もできないような富が約束された。
だが私は1980年代に米国で取材を繰り返す中で、国家と社会の大半の人々がこの格差を「許容」もしくは「黙認」していたことに、一抹のasozialさ(社会的な不公正さ)をすでに感じていた。
ドイツの社会保障制度は日本以上に充実しているが、それは国富を再配分することで、所得格差の拡大を防ごうとする試みの一環だ。
特にコロナ危機のような100年に一度の異常事態には、社会保障制度の存在は重要である。
ただし米国が、今後ドイツのように社会保障制度を充実させるとも思えない。その場合、米国が米国でなくなってしまう可能性すらあるかもしれない。
コロナ危機は、ことほどさように「国のかたち」について考えさせる機会だ。
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