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2019年12月10日04:26

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Poverty

2016年4月に発表した記事です。
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日本の所得格差とドイツの格差

 最近日本から聞く情報の中には、驚くような話が時々ある。日本の厚生労働省の「国民生活基礎調査」には、子どもの貧困率に関する統計が載っている。貧困率とは、平均可処分所得の半分(2014年は年収122万円)未満の世帯で暮らす、18歳未満の子どもの比率だ。厚生労働省によると、この比率は1985年には10.9%だったが、2012年には16.3%に増えている。子どもの6人に1人が貧困家庭で暮らしていることになる。低所得層の家庭に、義務教育にかかる費用を補てんする就学援助制度の利用者も、1995年には77万人だったが、2013年には2倍近く増加し、151万人となった。日本の新聞で、そうした家庭の子どもが空腹のためにティッシュペーパーにサラダ油を含ませて食べるという、悲惨な話を読んだことがある。日本の母子家庭の90%は、厚生労働省の調査に対して「生活が苦しい」と答えている。
 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本の2009年の貧困率は16.0%で、OECD平均(11.3%)を上回っている。ドイツの貧困率は8.4%(2012年)で日本よりもはるかに低い。所得の不平等を表す指標に、ジニ係数と呼ばれる物差しがある。数字が高いほど、所得格差が大きいことを示す。日本のジニ係数は0.34で、OECD平均(0.32)やドイツ(0.29)を上回っている。ちなみに所得格差が大きいことで知られる米国のジニ係数は、0.4である。
 ドイツでも21世紀に入ってから所得格差が拡大し、中間層が縮小している。それでも貧困率やジニ係数が低いのは社会保障制度によって、所得の再配分が行われているからだ。私は26年間ドイツに住んでいるが、この国の社会保障制度は、日本よりもはるかに手厚い。シュレーダー政権は、2003年に「アゲンダ2010」という改革プログラムを断行し、人件費を減らすために雇用市場と社会保障制度にメスを入れた。長期失業者への給付金は、生活保護と同じレベルに引き下げられた。それでも、失業者の家賃や光熱費、社会保険の保険料などは、国が負担する。社宅という制度はないので、失業した途端にホームレスになる危険は日本よりも低い。
 「一億総活躍社会」も結構だが、社会の弱者を切り捨てるべきではない。私は、社会保障制度を減らすことには賛成できない。元々日本の社会保障制度はドイツを手本に作られたのだが、最近では日本社会がドイツよりも米国に似てきているように思えて仕方がない。それは、国民が望んでいることなのだろうか?


 

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