mixiユーザー(id:6002189)

2019年12月05日15:10

101 view

Nuclear power plant

2007年に発表した記事です。この4年後に、西側世界で最悪の原子炉事故が日本で起きるとは、誰も想像していませんでした。ある因縁のために、忘れがたい原稿。これくらいの内容で!
ーーーーーーー
原発火災の「情報隠し」で、大手電力会社に批判集中(ドイツ)
 今年6月28日、午後3時2分。ドイツ北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州にあるクリュンメル原子力発電所で、変圧器のショートによる火災が発生した。発電所は一時黒煙に覆われ、送電は停止されたが、火は数時間後に消し止められ、けが人も放射能漏れもなかった。IAEA(国際エネルギー機関)は、INES(国際核事故評価)という基準に基づき、原子炉での事故・トラブルの重大性を7段階に分けて評価しているが、この火災の危険度は、最低レベル(ゼロ)だった。その意味で、柏崎刈羽原子力発電所で発生した被害に比べると、はるかに小さいトラブルである。しかし、原子炉を管理していた、ドイツ第三位の電力会社バッテンフォール・ヨーロッパには、世論の厳しい批判が集中した。
 その理由は、同社が積極的な情報公開を拒んだことである。火災の発生時、原子炉に直接の危険はなかった。ところが運転員が、班長の指示を誤って理解したために、炉の圧力を急激に下げ、緊急停止させた。同社は、コントロール室で意思の疎通がうまくいかずに、本来ならば不必要な緊急停止措置が取られたことを、隠していた。ところが、事故から1週間経って、環境団体グリーンピースが、この作業ミスを公表。バッテンフォール・ヨーロッパは、しぶしぶ事実を認めた。
 さらに、「コントロール室に煙が入り込んだ」という情報が流れたことから、監督官庁は、健康被害の有無を確認するために、コントロール室にいた運転員から事情聴取をしようとした。ところが同社は、「プライバシー保護」を理由に運転員の名前の報告を拒否。このため検察庁が、発電所に捜査官を派遣して事情を聴くという異例の事態となった。
 またドイツ北部のブルンスビュッテルにある原子力発電所でも、6月28日にトラブルが発生し、原子炉を緊急停止したが、その際にタービンが過熱して、ボヤが起きていた。バッテンフォール・ヨーロッパは、このボヤについても、当局に1日遅れて報告していた。
 同社の消極的な情報公開姿勢を、メルケル首相は「受け入れがたい態度だ」と厳しく批判。緑の党や環境団体からは、同社の原子炉運転許可を取り消すよう、州政府に要求した。このため、同社のクラウス・ラウシャー社長は「ずさんな広報体制によって、企業イメージを損なった」として、7月18日に引責辞任。原子力担当部長も、更迭された。
 同社は、スウェーデンで最大の電力会社バッテンフォールの、ドイツにおける子会社である。親会社のゲラン・ヨゼフソン社長は、「ドイツでは原発に対する批判が強いため、そこで働く人々は、トラブルが起きた時、外部に情報を出すことをためらう傾向がある」と述べ、広報姿勢に大きな欠陥があったことを認めた。
 1986年のチェルノブイリ事故による放射能汚染を経験したドイツ国民の間では、原子力に対する不信感が根強い。彼らは、世界で最も環境意識が強い国民としても知られる。連立政権の中で、メルケル首相が率いるCDU(キリスト教民主党)は、前のシュレーダー政権が実施した脱原子力政策を見直し、原子炉の稼動年数を延長したいと考えている。電力業界も、地球温暖化に歯止めをかけるためのCO2削減策の一環として、原子力の使用継続を求めてきた。だが、今回の不祥事で、原発の運営者に対する、国民の不信感は再び強まった。原子力推進派にとっては、思わぬ逆風であり、原子炉稼動年数の延長は、一段と難しくなったと言うべきだろう。
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する