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2019年10月19日16:35

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Wage difference

ドイツ企業の男女賃金格差は平均21%。でも賃金に関する社員の情報開示を、経営者に義務付ける法律が施行されています。去年書いた原稿です。
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(男女賃金格差問題)
ドイツ政府、企業に対し給与水準開示を義務付け

サマリー
ドイツ企業の労務担当者には今年1月から頭痛の種が増えた。社員たちは新しい法律に基づき、自分と似たような仕事をしている同僚がどの程度の給料を稼いでいるかを開示するように企業に対して求めることができるようになったからだ。ドイツでは女性の給与水準が男性に比べて約21%低いとされていることから、今後女性からの賃上げ要求や訴訟が増える可能性がある。

本文
この法律は、去年7月に施行された「給与の透明性に関する法律(Entgelttransparenzgesetz)」で、社員の性別によって給与に差を付けることを禁止している。従業員数が200人を超える企業に勤める社員は、同法に基づき、自分と似た仕事をしている同僚の給与水準を匿名で開示するよう求めることができる。
 社員は基本給だけではなく、残業代や成果に基づく給料の上乗せ分も尋ねることができるほか、給与の算定基準も開示するよう要求できる。ただし、その企業には似た仕事をしている社員が少なくとも6人いることが前提だ。
 さらに従業員数が500人を超える企業は、社員の要求がなくても、定期的に社員全体の給与構成を公開するよう求められる。
 ドイツでは大企業を中心に、このデータの提出を要求する女性社員が増えている。社員はメールを人事部に送るだけで、情報の開示を請求できる。

*女性社員に具体的なデータを与える

 この法律が制定された背景は、この国の女性社員の給料が男性よりも約21%低いため。ドイツ連邦統計庁によると、2016年の男性社員の平均時給は20.71ユーロ(2692円・1ユーロ=130円換算)だったが、女性は16.26ユーロ(2114円)だった。連邦政府はこの格差の是正をめざしている。政府は、「女性社員が賃上げを要求する時に具体的なデータがあった方が交渉しやすい」と考えて、この法律を施行したのだ。
 ドイツ労働組合連合(DGB)、ドイツ法律家協会、緑の党などは、情報開示請求の権利が従業員が200人を超える企業にしか認められていないことを批判している。さらに、DGBは、「賃金に関する男女差別が判明した場合に、事業所評議会(Betriebsrat=企業ごとの組合)などが企業を訴える権利が認められていないことも不当だ」と主張している。その理由は、女性社員が賃金格差の是正を求めて企業を訴えた場合、社内で不利な立場に置かれる危険が高いからだ。このためDGBは、個々の社員を守るために事業所評議会が訴訟を起こす権利を認めるべきだと主張しているのだ。
 欧州連合は去年11月に「性別に基づく賃金格差を減らすための行動計画」を公表しており、各国の賃金格差の動向を厳しく監視する方針を明らかにしている。欧州委員会によると、2014年のEU域内の男女の賃金格差は約16%だった。つまりドイツの格差は欧州でも大きい部類に属する。(ちなみに日本の厚生労働省の発表によると、2016年の男女間の賃金格差は27%でドイツを上回っている)

*パートタイムに関する法律改正も準備

 ドイツで男女間の賃金格差が大きい理由の一つは、パートタイム(Teilzeit=所定労働時間よりも少ない労働時間)で働く女性の比率が年々高まっていることだ。これまでドイツでは一度パートタイムになると、労働時間をフルタイムに戻すことが禁止されていた。しかしドイツ政府は、法律を改正することによって、社員が親の介護や育児のために数年間にわたって短い労働時間で働いた後、再びフルタイムに戻すことを可能にする方針。その背景には、男女間の賃金格差を減らす目的もある。
 ドイツで活動する日本企業の子会社も、今後は女性社員から同僚の給与水準について情報開示を求められ、そのデータに基づいて格差是正を要求されたり、労働裁判所で訴訟を起こされたりする可能性がある。労務担当者の業務が増加することは避けられない。
 
 
 
 



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