mixiユーザー(id:6002189)

2019年10月15日03:54

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Social media

去年発表した記事です。
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ソーシャルメディアが政治を変える時代

 ソーシャルメディアの利用者は増える一方だ。フェースブックを全世界で使っている人の数は、約20億人。ツイッターの使用者数も約3億3000万人に達する。ソーシャルメディアのために、新聞やテレビなどのメディアを通さずに、誰でも意見を世界中に発表できるようになった。しかしソーシャルメディアは、偽ニュースをフィルターなしに拡散させて、民心をコントロールできるという危険も持っている。政治学者や報道関係者の間では、「ソーシャルメディアが政治に大きな影響を与えつつある」という見方が強まっている。

*データマイニングによる世論誘導?

 ミュンヘン工科大学で政治とソーシャルメディアの関連について研究しているS・へーゲリヒ教授は、「フェースブックがなかったら、トランプが大統領になることはあり得なかった」と断言する。米国では市民の3分の2がフェースブックを使っており、この媒体は政治的メッセージを拡散する上で、新聞やテレビよりも重要な場となっている。
 その際に重要や役割を演じたのは、データ分析企業C社だ。同社は、米国市民がフェースブック上のどの記事に「いいね」ボタンを押すかなどを分析し、約2億人の有権者の趣味や嗜好、支持党派について、膨大なプロファイルを作成した。
 トランプの選挙対策本部は、C社のビッグデータを基にして、有権者にフェースブック上で個別の政治コマーシャルを送り付けた。例えばヒラリー候補と接戦になっている選挙区では、「ヒラリーが大統領になると、黒人による犯罪が増えて治安が悪化する」という内容の政治コマーシャルをフェースブック上に掲載し、ヒラリーに投票する市民の数を減らした。(この手法はマイクロターゲティングと呼ばれる)へーゲリヒ教授は、「トランプは、フェースブックを通じて有権者の心をハッキングし、米国社会を分断することによって、勝利した」と述べている。
 興味深いことに、2016年に英国で行われた国民投票で勝利したEU離脱派も、トランプ陣営と同じくC社に有権者に関するデータ分析を依頼していた。つまりトランプ勝利とBREXITという右派ポピュリストの成功の陰には、ソーシャルメディアを使った世論誘導があったのだ。

*ソーシャルメディアに積極的なAfD

 ドイツでは米国に比べると個人情報の利用に関する規制が厳しい。このため2017年の連邦議会選挙では、米国のようなソーシャルメディアを使った世論誘導は行われなかった。しかし、反イスラム・反EUを掲げて第3党に躍進した「ドイツのための選択肢(AfD)」は、ドイツの政党の中でソーシャルメディアを最も積極的に使っている。2018年1月4日の時点で、39万5862人がフェースブックのAfDのページをフォローしている。これはCDUのページのフォロワーの数(19万7219人)、SPDのページのフォロワーの数(19万7059人)を大幅に上回る。
 AfDはボットと呼ばれる、自動的なニュース送信プログラムを使って、イスラム教徒や難民に対する敵意を煽る内容の書き込みを、ツイッターに大量に流している。新聞やテレビではなくネットでニュースを読む若者たちが、こうした書き込みに洗脳される危険がある。

*メディア・リテラシーの重要性

 ソーシャルメディア上の誹謗中傷に対する国家の規制は、始まったばかりだ。ドイツ連邦政府は去年10月に「ソーシャルネットワークの適法性の改善のための法律」という法律を施行させ、フェイスブックやツイッターの運営者に対し、差別を助長する偽ニュースなどについて通報された場合、原則的に24時間以内に削除することを義務付けている。またフランスのマクロン大統領も、選挙期間中にソーシャルメディアによる世論操作を行う者について、監督官庁に厳しく対処させる法案を準備している。こうした法律を「言論の自由の制限だ」と批判する声もあるが、米国・英国で起きた政治的な大変動のコストを考えれば、偽ニュースを野放しにすることは許されない。
 ドイツでは、情報の真偽を見抜く能力、つまり「メディア・リテラシー」の習得を、学校で義務化するべきだという意見も出ている。政治が偽ニュースによって左右される危険が増加しつつある今、市民・企業も情報分析能力を研ぎ澄ませる必要があるのではないか。


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