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2019年07月14日15:36

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Income difference

ミュンヘンはドイツで最も裕福な町の一つですが、ここでも所得格差は広がっています。昨日も、ゴミ箱をあさって換金できるペットボトルを探すお年寄りを見ました。こういう光景は毎日のように見られます。公的年金が足りないので、ゴミ漁りをして小銭を稼ごうとしているのです。一方ではジーメンス、マイクロソフトやアップルなどが外国から優秀なITスペシャリストに高給を払って、この町にどんどん呼び寄せています。デジタル化は所得格差を拡大していきます。
2016年に書いた原稿です。
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ドイツでも拡大する所得格差

 最近日本から聞く情報の中には、ときどき悲しくなるような話がある。日本の厚生労働省の「国民生活基礎調査」には、子どもの貧困率に関する統計が載っている。これは、平均可処分所得の半分(2014年は年収122万円)未満の世帯で暮らす、18歳未満の子どもの比率だ。厚生労働省によると、この比率は1985年には10.9%だったが、2012年には16.3%に増えている。子どもの6人に1人が貧困家庭で暮らしていることになる。低所得層の家庭に、義務教育にかかる費用を補てんする就学援助制度の利用者も、1995年には77万人だったが、2013年には2倍近く増加し、151万人となった。日本の新聞で、そうした家庭の子どもが空腹のためにティッシュペーパーにサラダ油を含ませて食べるという、悲惨な話を読んだことがある。日本の母子家庭の90%は、厚生労働省の調査に対して「生活が苦しい」と答えている。
 所得の不平等を表す指標に、ジニ係数と呼ばれる物差しがある。数字が高いほど、所得格差が大きいことを示す。日本のジニ係数は0.34で、OECD平均(0.32)やドイツ(0.29)を上回っている。ちなみに所得格差が大きいことで知られる米国のジニ係数は、0.4である。
 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本の2009年の貧困率は16.0%で、OECD平均(11.3%)を上回っている。ドイツの貧困率は8.4%(2012年)で日本よりもはるかに低い。(OECDの貧困世帯の定義は、全世帯の所得を並べた中間値の半分よりも低い所得の世帯である)
 なぜドイツの貧困率は、日本よりも低いのだろうか。OECDの統計によって、日本とドイツの国民1人あたりの社会保障支出を比べると、大きな違いが浮かび上がる。ドイツでは2011年の国民1人あたりの社会保障支出は、1万471ドルだった。これは日本(7981ドル)より31%も多い。特に差が大きいのが失業者などへの住宅補助。ドイツでは259ドルで、日本(40ドル)の約6倍である。また失業者に対する援助金も、ドイツは480ドルで、日本(103ドル)の4.6倍だ。失業者の職業訓練のための費用も、ドイツでは326ドルで、日本(67ドル)に大きく水を開けている。また病気やけがで働けなくなった時の補償額も、ドイツでは828ドルで、日本(352ドル)よりも多い。
 ドイツ労働社会省の貧困世帯の定義はOECDと異なり、全世帯の所得を並べた中間値の60%よりも低い所得の世帯。この定義によると、2013年にはドイツでは6世帯の内1世帯が貧困世帯だったが、もしも社会保障が全くなかったら、この比率は4世帯につき1世帯に増加する。
 つまりドイツでは国民1人あたりの社会保障サービスの額が日本よりも多い。このことが、両国の貧困率の違いの原因の一つとなっていると言えそうだ。
 ただしドイツでも、所得格差は拡大している。シュレーダー政権は、2003年に「アゲンダ2010」という改革プログラムを断行し、人件費を減らすために雇用市場と社会保障制度にメスを入れた。長期失業者への給付金は、生活保護と同じレベルに引き下げられた。この改革はドイツ企業の国際競争力を高めたものの、「勝ち組」と「負け組」の格差を拡大した。1990年にはドイツのジニ係数は0.2559だったが、今では0.29に上昇している。富の偏在化も進んだ。1998年には市民の内最も裕福な10%の人々が、社会全体の個人資産の合計の45%を所有していた。2014年には、その比率が59.8%に拡大している。今後経済のデジタル化が進んで、古いビジネスモデルが衰退し、ドイツが知識集約型社会に移行するにつれて、流れに乗り遅れる市民も増えるだろう。したがって、今後もドイツでは貧富の差が拡大する可能性が強い。
 日本では「下流老人」という言葉がメディアにしばしば取り上げられるが、ドイツでも老後の生活に不安を抱く人は多い。連邦統計庁によると、2006年には貧困層に属する年金生活者の比率は10.6%だったが、2015年には15.6%に増加している。このため来年の連邦議会選挙では、年金制度の改革によって老後の貧困をどのように防ぐかが、大きな争点となる。ドイツ経済の大原則である「社会的市場経済」を維持するためにも、ドイツ政府は所得格差問題に本格的に取り組まなくてはならない。

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