mixiユーザー(id:6002189)

2019年07月10日12:53

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Bank data

2010年に書いた原稿です。
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盗まれた銀行データ

 ふつう誰かが盗んだ物を盗品と知りつつ買った場合、買った人も「盗品故買」という罪に問われる。だが時と場合によっては、別の国の政府が盗品を喜んで買ってくれる場合もある・・・。そんな事件がヨーロッパで発生した。
「250万ユーロ(約3億750万円・1ユーロ=123円換算)を払えば、スイスの銀行口座に資産を隠し、脱税しているドイツ人1500人に関するデータを提供します」。ドイツの連邦財務省は、今年匿名の人物からこんな連絡を受けた。
 謎の人物は「商品見本」として、5人の顧客についてのデータをドイツ政府に提供した。国税当局が調べたところこの5人は実際に多額の資産をドイツに申告せずに、スイスの口座に隠していたことがわかり、データの信憑性(しんぴょうせい)が確認された。
 政府はこのCD―ROMを購入して1500人の脱税者について調査すれば、およそ4億ユーロ(492億円)の税金と追徴金が国庫に入るとしている。記録的な財政赤字に苦しむドイツ政府にとっては、喉から手が出るほど欲しい。
ドイツ政府は2年前にも、リヒテンシュタインの銀行から顧客データを盗んだ男に500万ユーロ(6億1500万円)を払って購入し、ドイツの脱税者を摘発した。中にはドイツ・ポストの社長だったクラウス・ツムヴィンケルのような著名人も含まれていた。
メルケル首相は「脱税は絶対に摘発されなくてはならない。そのためには、このデータを入手するべきだ」と述べ、データの購入を示唆している。だがこの顧客データは、銀行から盗まれた物である。データを盗んだ者に政府が何億円ものお金を払うとすれば、将来似たような犯罪を誘発する可能性が強い。スイス政府は、問題のCD―ROMをドイツ政府に提供しようとしている人物を盗みの疑いで捜査しているが、その行方はつかめない。
ドイツの税金は日本や米国とは比較にならないほど高い。独身のサラリーマンの場合、税金と社会保険料で手取りが60%くらいになることもある。庶民は毎月税金をしっかり取られ、銀行口座の資金の出入りを国税当局に監視されているのに、富裕層の脱税が見逃されるのでは、人々は激怒するだろう。脱税の事実を自分から当局に報告すれば、追徴金は取られるものの起訴は免れるので、前科者にはならないですむ。このため、今ドイツの税務当局には「実はスイスの銀行に資産を隠していた」というドイツの富裕層が続々と「自首」している。謎の人物がCD―ROMの購入を持ちかけたことは、ドイツ政府にとっては大きな福音となったのだ。今後は、一攫千金を夢見て銀行データを盗もうとする者が増えるだろう。銀行はこれまで以上に、顧客データをしっかりと管理し盗難から守ることを迫られる。



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