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2019年05月19日14:33

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Berlin

2012年に書いた原稿です。コストをかけずに生きる方法としては超絶。
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イベントこそわが命

 以前この欄で、ドイツの株主総会の後に企業がビュッフェ形式の昼食を出すと、年金生活者たちがどっと押し寄せ,中にはタッパーウエアに食べ物を詰めて持ち帰る人もいると、書いた。首都ベルリンには、もっと凄い人々がいた。三度の食事をするためだけに、講演会などのイベントに参加している人たちがいるのだ。彼らはドイツ語で「イベンティスト」と呼ばれており、主に年金生活者や失業者である。
 ベルリンには様々な財団、研究機関、ロビー団体がある。これらの団体や省庁、議会、企業などが開く講演会やシンポジウム、レセプション、会議の数は、毎日およそ2000件にのぼる。こうした催しには、たいてい立食形式の食事がついている。イベンティストたちは前もってインターネットや新聞で催し物の日取りを調べ、参加を申し込む。一応講演や朗読会を聞くふりをしているが、彼らに関心のあるのは食事だけだ。このため、なるべく食事のビュッフェに近い後ろの方の席に座る。
 ある女性は、原則として朝食、昼食、夕食をこうした催し物で済ませる。特に食事の質が高いのは、バイエルン州政府やバーデン・ヴュルテンベルク州政府が首都ベルリンに持っている代表部でのレセプションだという。
 ベルリンのイベント担当者の間では、「ただ飯」を目当てにこうした催し物に参加する人々がいることは、よく知られている。しかし主催者としては、参加者の数が多いに越したことはない。毎日2000件も催し物があるため、イベント主催者間の競争も激しい。100人が座れる会場に20人しか聴衆が来ないのでは、講演をする側もがっかりする。このため、主催者もイベンティストの参加を完全に禁止できない。「枯れ木も山の賑わい」というわけだ。
 ベルリンは、役人、議員、ジャーナリスト、外交官の町であり企業の数が少ない。今年3月のベルリンの失業率は13%。これはバイエルン州の失業率(4%)の3倍を超える。ある統計によると、自分の収入で生活している人は市民の60%にすぎない。残りは年金生活者、学生、失業者である。イベンティストたちは、今日もベルリンのどこかでせっせとレセプションに参加しているに違いない。
(ミュンヘン在住 熊谷 徹)
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