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2019年03月17日16:29

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nuclear power

 福島事故は、チェルノブイリ事故と同等の「レベル7」の重大事故だった。日本は、西側の先進工業国としては最悪の原子炉事故を体験しても、原発を使い続ける。これに対しドイツは、自国で事故が起きたわけではないのに、福島事故を教訓として、原発全廃を決断した。
 私は、原子力について日独の態度が大きく異なる理由は、リスク意識の違いだと考えている。概して、ドイツ人のリスク意識は日本人よりも鋭敏だ。
キリスト教社会同盟(CSU)の元党首エルヴィン・フーバーは、福島事故発生の4日後にドイツの公共放送局が放映したトークショーで「ドイツほどリスク意識が高い国は、世界のどこにもない」と述べた。心配性、リスク意識の高さ、そしてリスクから身を守るために猛然と努力する態度は、ドイツ人の国民性の一つである。
 福島事故直後に設置された倫理委員会は、「原子力の残余のリスクをゼロにするために、原子力発電を廃止して他のエネルギー源で代替するべきだ」と政府に提言し、首相は提言を実行した。そこには「原子力のリスクは安全に制御できない」という、ドイツ人独特の悲観主義がある。この悲観的な性格が、リスクをゼロにするには廃止以外にないという結論につながった。究極のリスク管理である。
 リスクを推定するときに使われる数式がある。リスクマネジメントの世界では、事故や災害のリスクを次のように数量化しようとすることがある。

リスク(損害の年間期待値)=(事故による損害の規模)X 事故が1年間に起こる確率

 たとえばある事故が起きた場合の損害額を百万円と想定する。その事故は、10年に1回の頻度で起きるとする。その事故が1年間に起こる確率は、10%となり、損害の年間期待値は100万円の10%で10万円になる。
 この数式は、毎年どの程度の損害が予想されるかを表わす。
 倫理委員会のメンバーたちは、「福島事故は、リスクの概念について考えを改め、定義し直すことを我々に迫っている」と述べ、これまでのリスク評価の手法に疑問を呈した。彼らは、「前述の数式は、原子力リスクの分析には適していない。むしろリスクの矮小化につながるので、原子力リスクの推定のために使うべきではない」と考える。原子炉事故のリスクを分析するには、交通事故や飛行機事故などの経験に基づく分析手法を使ってはならないというのだ。

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